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後発品を推進するなら国は参照価格制度を導入すべし
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

 厚生労働省が発表した「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向」によると、昨年11月時点で院外処方箋の後発医薬品調剤率(数量ベース)は約29%だったそうだ。診療報酬改正前の昨年3月時点の調査では約23.7%だったので、後発品の使用はもう一段の上昇を示したといえる。

 厚労省は今後も、後発品に置き換えられる先発品と後発品とを分母にした置き換え率という新指標を用いて、さらなる後発品の使用を推し進めるつもりだ。しかし、日々患者に後発品を薦めている立場としては、従来と同じやり方ではそろそろ頭打ちではいかと実感する。厚労省が後発品の使用を大幅に推し進めたいと望むなら、大胆な制度改正、例えば参照価格制度の導入を検討する必要があるだろう。

 参照価格制度とは、同じ薬効成分の医薬品について一律の固定償還額(=参照価格)を設定し、償還額を超える部分については患者が保険外で自己負担する制度だ。要は、患者が安い後発品を選択すれば保険の範囲内で投薬を受けられるが、高い先発品をあえて選ぶというのなら、超えた分は自己負担してもらうということだ。

 実際にヨーロッパなどで採用されているこの参照価格制度を日本でも導入すれば、後発品の使用は大幅に進むだろう。患者目線で考えれば、先発品と後発品の違いなんてよく分からないし、保険外で余計なお金など払いたくないものだ。これまで様々な理由で後発品への変更を拒否してきた患者も、こぞって後発品を選択するようになるだろう。

 ただしこの制度には、反対意見もある。まず、患者に後発品の使用を半ば強制的に迫り、選択の自由を侵害すること。また、既存薬の後発品で十分となれば、国内での新薬の開発を停滞させるという意見もある。そもそも、既に参照価格制度を導入した国で、期待したような医療費抑制効果が出ていないという調査結果もあるらしい。

 このように様々な反対意見があり、参照価格制度は過去にも検討されては見送られてきた。だが、薬局薬剤師の立場として筆者は思う。いっそ参照価格制度を導入してくれたら、どんなに気が楽かと。

 薬局では毎日、後発品を患者に薦めるのに四苦八苦している。生活保護受給者のように医療費の自己負担がない患者や、1割負担の高齢者など後発品に変更しても自己負担額がほぼ変わらない者に、後発品に変更するメリットをどう説明したらよいというのか。

 後発品を患者に薦めるのは薬局薬剤師の義務だが、あくまでも患者の同意が必要であり、患者が先発品を希望したならその通りにしなければならない。実際、「何の得にもならないし、変更しなくていい」と患者に冷たくあしらわれることもしばしばである。

 その点、参照価格制度が導入されれば、自己負担の増加を避けるためにおのずと後発品が選択されるだろう。薬局薬剤師の説明の手間や心理的負担はかなり軽減されると思われる。

 現実問題として、参照価格制度を導入しようとすれば「富裕層以外は後発品を選ばざるを得なくなる不公平な制度だ」といった批判の声が噴出するだろうから、厚労省も簡単にはこの制度の導入には踏み切れまい。従って、われわれ現場の薬局薬剤師は引き続き、患者に後発品を薦めては断られる日々を過ごすほかなさそうだ。例えるなら、不条理なノルマに追われる営業マンのように。(みち)

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