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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)BP製剤服用から朝食までの時間
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

出題と解答 : 伊藤 雅之
(コスモファーマ東京[福島県郡山市])

A1

(4)服用120分後に食事

 ビスホスホネート製剤(BP製剤)は、極性が高く負に帯電した分子であるため、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの多価陽イオンとキレートを形成することが分かっている。このキレートは胃腸粘膜から吸収されにくいため、キレートを形成すると生物学的利用率(バイオアベイラビリティー)が低下し、十分な治療効果を得られなくなる。そのため、最も空腹な状態である起床時に、水約180mLとともに服用するよう添付文書に書かれている。

 では、服用してから食事を取るまで、どれくらい時間を空ければよいのだろうか。海外において、アレンドロン酸錠10mgを服用した後の食事までの時間と、尿中排泄率の変化について検討した試験がある。その結果、服用120分後に食事を取った群が最も尿中排泄率が高く、飲食物の影響を受けないことが示された(表)。

表 食事の時間と尿中排泄率の関係

 この結果より、食事の影響をできる限り取り除くためには、服用後120分以上飲食を控えることが望ましい。しかし、現実的には難しい患者もいるため、最低限、効果が認められる服用後30分は水以外の飲食を控えるとしている。ただし、服用120分後に食事を取った群の尿中排泄率は、服用30分後に取った群の約1.87倍、60分後に取った群の約1.42倍と、服用してから飲食するまでの時間に比例して増加していることから、30分空ければ大丈夫なのではなく、できるだけ間隔を空けるように服薬指導すべきである。

 今回、Mさんは、医師から「朝起きてすぐ飲んで、それから30分たったら朝食を食べるように」と指示されたと話している。このように説明を誤解している患者は少なくない。一般に耳からの情報は、聴覚情報として一時的に感覚器官に保持された後、必要と思われる情報だけが短期記憶として脳に転送される。この容量は小さく、多くの情報は記憶として残らず棄却されてしまうといわれている。従って、「少なくとも30分は飲食を控える」と説明したとしても、Mさんの記憶には「30分」という言葉だけが残り、「30分たったら…食べるだったかしら?」と誤解したと考えられる。

 このような誤解を防ぐために、BP製剤が初めて処方された患者には、服薬に関する説明をする前に、起床後から朝食までの生活サイクルを確認すべきである。

 Mさんのように、起床後に散歩や体操、畑仕事などを日課としていて、朝食までの時間が十分に空いている人も多い。そのような患者には、あえて30分と強調する必要はなく、それぞれの患者の生活サイクルにおいて、どの時点で服用するかを示せば、飲食の影響を十分回避できる。

 なお、尿中排泄率が上がると過量投与と同じ状態になるのではないかという懸念があるが、BP製剤の特性として、血中には長くとどまらずに速やかに骨に移行するため、血中濃度の上昇はごくわずかである。そのため、飲食までの時間が長くなったことで、副作用の発現頻度が上昇することは考えにくいといえる。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 今回、Mさんに出されたお薬は、おなかの中に飲べ物があると、身体への吸収が極端に悪くなってしまう性質があります。そのため、最もおなかの空いている起床後に飲み、その後少なくとも30分は飲食を控える必要があるのです。ですから先生は、「起きてすぐに薬を飲んで、少なくとも30分は水以外の飲食を控えるように」と説明されたのだと思います。薬の性質を考えると、30分と言わず、より間隔を空けた方がよいと思います。

 Mさんのように散歩が日課であれば、薬を飲んで散歩に出掛けると、その間、空腹状態を保てるので、しっかりお薬が吸収されます。ですから、食べ物を持たずに出掛けて、帰宅されてから朝食を取ってください。水はお薬の吸収に影響しないので、散歩中の水分補給はこまめにしてください。ただ、カルシウムやマグネシウムなどを多く含むミネラルウオーターは避けてくださいね。

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