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特集:
腎機能&処方チェックを始めるべき3つの理由
日経DI2013年5月号

2013/05/10
戸頃美紀子

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

 抗凝固薬のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサ)の市販後調査で、2011年3月の発売から半年の間に、重篤な出血例が139例報告された。このうち、腎障害があったのは76例(55%)に上り、22例(16%)は本来、ダビガトランが禁忌のはずの高度腎障害だった。

 「薬剤師が患者の腎機能をチェックし、適正用量への変更を提案していれば、副作用は防ぎ得たはず。薬剤師の責任は重い」。日本腎臓病薬物療法学会理事長で、熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター長の平田純生氏は、自戒を込めてこう指摘する。

 腎機能が低下した患者に、ダビガトランのような腎排泄型の薬剤を投与すると、腎からの排泄が遅延して薬物の血中濃度が上昇し、中毒性の副作用が起こりやすくなる。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や一部の抗菌薬は、腎血流や尿細管機能に影響を与えて、薬剤性腎障害を引き起こすこともある。そのため、加齢などで腎機能が低下した患者にこれらの薬剤を使用する際には、腎機能に応じて用量を減らしたり、投与間隔を空けたり、代替薬に変更したりする必要がある。

広がる検査値開示の動き

 腎機能に着目して副作用を防ぐ薬剤師の役割は、近年、ますます重要になっている。その理由は3つある。

 1つ目は、生活習慣病患者の増加や人口の高齢化に伴って、腎機能が低下した患者が増えていること。厚生労働省の推計によると、現在、日本の慢性腎臓病(CKD)患者は1330万人に上る。70歳以上の高齢者に至っては、約3割がCKDといわれるほど。腎疾患を専門としない医師が、CKD患者に薬を処方する機会も増えている。

 2つ目は、薬局薬剤師のチーム医療への参画が求められていること。従来、薬局には処方箋しか受け渡されず、患者の腎機能に関する臨床検査値を入手しにくい面もあるが、「医師が患者に渡した検査結果を見せてもらえるよう、薬剤師の方から働きかける姿勢が必要。『検査値の読み方が分からない』というのは論外だ」。腎臓内科を専門とする上田医院(千葉市中央区)院長で、薬学教育に携わってきた上田志朗氏はこう指摘する。

 日本薬剤師会が11年に策定した「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」においても、「薬学的管理における用法・用量の評価のために、処方箋上からは得ることのできない体重、身長、腎機能検査値、肝機能検査値といった情報を患者などから収集する」「記録に基づいた薬力学的および薬物動態学的視点からの見解および情報を、主治医などに必要に応じて適切に提供する」といったことが求められている。

 そして3つ目は、患者の検査データを病院と薬局で共有する試みが始まっていること。福井大学医学部附属病院では11年3月末から、院外処方箋に検査値を印字する取り組みを始めた。「腎機能に対する医師の認識は必ずしも高くない。検査値を開示すれば、薬局薬剤師が二重チェックしやすくなると考えた」と、同病院副薬剤部長の中村敏明氏は話す。今後、このような動きは全国に広がっていくだろう。

 次から、腎機能や処方のチェックに必要な知識を整理するとともに、実践に移すための工夫を見ていこう。

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