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DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)キネダックが食前服用である理由
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

出題と解答 : 飯嶋 久志
(千葉県薬剤師会薬事情報センター)

A1

(2)最高血中濃度到達時間(Tmax)が遅延する。

 薬剤の服用タイミングは食後とされていることが多いが、これは消化器系への負担を軽減する、あるいは飲み忘れを防止することなどが主な目的である。

 しかし薬剤によっては、薬物動態学、薬理学、製剤学といった様々な側面から、それぞれ服用タイミングが決められているものもある。

 このうち薬物動態学的な特性について言うと、薬剤は一般的に食後投与の方が吸収率は低下するが、食事によって吸収率が上昇する薬剤もある。例えば、ビタミンB2であるリボフラビン(商品名強力ビスラーゼ)は、小腸からの吸収速度に飽和が見られるので、胃内容物排出速度(GER)が低下する食後の方が、食前よりも吸収率は高くなる。このように薬物の吸収過程は個々の薬剤によって異なることから、食事による影響は添付文書やインタビューフォームなどで確認する必要がある。

 エパルレスタット(キネダック)は、食前と食後で薬物動態が変化することが判明している。健康成人を対象に行われた投与試験では、エパルレスタット50mgを食前30分に単回経口投与した場合、最高血中濃度到達時間(Tmax)は1.05±0.16時間(Mean±SD)で、最高血中濃度(Cmax)は3896±1132ng/mL、血中濃度曲線下面積(AUC)は6435±1018ng・時間/mL、血中濃度半減期(T1/2)は1.844±0.387時間である(参考文献1)。

 一方、食後30分に単回経口投与すると、Tmaxが1.45±0.44時間に遅延し、Cmaxは2714±801ng/mLと約30%低下、AUCも5893±968ng・時間/mLに低下したと報告されている(参考文献1)。

 また、エパルレスタットの作用機序から見ても、食前投与が適切である。

 エパルレスタットの適応である糖尿病性末梢神経障害は、左右対称性の痺れ、痛み、感覚異常、こむら返りなどが認められるのが特徴である。その発症メカニズムは以下のように考えられている。

 高血糖の状態が持続すると、神経細胞内のグルコースが増加して、アルドース還元酵素による代謝が亢進する。このため、グルコース代謝物であるソルビトールが過剰に生成され、神経細胞に蓄積される。その結果、神経細胞内の浸透圧上昇、ミオイノシトール低下、Na/K-ATPase活性低下、蛋白糖化反応の亢進、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の減少による一酸化窒素産生低下、プロテインキナーゼC活性の異常などと関連し、神経機能低下、神経内血流低下が引き起こされる。

 エパルレスタットは、アルドース還元酵素を特異的に阻害することで、神経内ソルビトールの蓄積を抑制し、末梢神経障害の症状を改善する。この作用は血糖値が高い時に強く発揮されることが試験で報告されており、本剤は食前投与とされている(参考文献1)。

 以上の理由から、エパルレスタットは食後に投与すると、吸収率が低下するだけでなく、薬理効果にも影響する可能性がある。従って、まずは食前服用の習慣を付けるよう患者に指導することが重要である。

 しかし、それでも服薬コンプライアンスが維持できない場合は、メトホルミン塩酸塩(メトグルコ)が食後だけでなく食直前の服用が可能な薬剤であることを踏まえ、メトホルミン塩酸塩を食直前服用にすることも検討する。

参考文献
1)町井浩司ら、現代医療1996;28:1273-80.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 このお薬は食後に服用すると、体内に取り込まれる成分が少なくなってしまいます。また、血糖値が高い時に最も効果が高くなるお薬なのですが、服用してから十分に吸収されるのには時間が掛かります。つまり、お食事前にあらかじめ服用した方が、治療効果を上げることができるのです。

 飲み忘れをご心配なのであれば、食卓の上にお薬の袋を置いておいたり、ご家族に声を掛けてもらうようにしてみてはいかがでしょうか。それでも飲み忘れが多くなる場合は、ご相談下さい。

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