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トクホの説明書
連載終了に当たって
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

 特定保健用食品(トクホ)をテーマに、2010年6月号から丸3年間続けてきたこの連載も、最終回を迎えることになった。

 この間、トクホをめぐっては色々なことがあった。トクホの登録件数が1000件を超えた一方で、人知れず販売を終了したトクホも少なくない。トクホを牽引していた食用油に発癌性の疑いが掛かり、販売が中止されたことは衝撃的だった。

 民主党政権下で消費者庁が誕生し、トクホを含む食品の表示を一元管理することになった。その結果、新規の関与成分や保健の用途を持つトクホの表示許可が失速した。実は、新規のトクホがなかなか誕生しないことが、本連載を終了する最大の理由である。

トクホはあくまで食品

 連載を終了するに当たり、一つの反省がある。本誌の読者である薬剤師の皆さんがなじみやすいようにと考え、トクホの関与成分を薬効成分のように捉え、保健の用途を効能・効果のように説明してきた。それがかえって「トクホはあくまで食品」という認識を薄くしてしまったのではないかと心配している。

 トクホは、今食べている食品を同種のトクホに置き換えることで食生活の問題を是正、あるいは改善するという使い方が基本である。いつも飲んでいた普通のコーラをトクホのコーラに置き換えれば、中性脂肪の低下が期待できることに加え、エネルギー摂取量も低下する。前者に比べて、後者の説明が十分ではなかったと思う。

 そもそもトクホを有効に利用するためには、食生活のあるべき姿が正しくイメージできていること、すなわち食と健康全般にわたって正しい知識を持っていることが大前提となる。薬剤師の皆さんは、医薬品でもあるビタミンやミネラルについての知識はお持ちだと思うが、三大栄養素(蛋白質、炭水化物、脂質)やそのエネルギー量について、あるいは栄養素間相互の関わり、さらには運動習慣に関しては、意外と知らないことがあるのではないだろうか。

患者の生活習慣をフォローしよう

 特定健康診査(メタボ健診)の結果、“積極的支援”で指導を受けた人は、その時点ではただの「人」だ。だが、高血圧や糖尿病といった生活習慣病と診断された瞬間から「患者」となり、何らかの薬が処方される。患者はいつしか薬頼みとなり、生活習慣改善への取り組みがおろそかになるようだ。

 確かに最近の高血圧や糖尿病の薬は実に良く効く。しかし、悪い生活習慣を放置したままでは、薬を飲む意味が半減する。生活習慣を改めれば、病態の悪化に伴う投薬量の増加を遅らせることは十分に可能なはずだ。

 医療費抑制の観点からも、生活習慣病患者のフォローは極めて重要といえる。そしてその役割を担える可能性がある唯一の医療関係者は薬剤師の皆さんであろうと、勝手に大きな期待を寄せている。薬剤師でもない私が薬学部で教壇に立っている理由も、実はそこにある。

 そんな思いが実り、来月号から新たな連載コラムを始めることになった。タイトルは「いまさら聞けない栄養の話」。薬剤師の皆さんが、忙しい日常業務の中で、短時間で説得力のある食を中心とした生活習慣指導を行うための一助となるような内容にしていきたいと考えている。今後とも引き続き、ご愛読をお願いいたします!

食事と並んで大切なのが運動だ。私は脳卒中のリハビリ目的でジョギングを始め、それが高じて今ではフルマラソンにはまっている。2月の「東京マラソン2013」では3時間49分10秒で完走しました!

講師
太田 篤胤
Atsutane Ohta
東京農工大学卒。テルモ、明治製菓を経て、2004年から城西国際大学薬学部教授。「オリゴ糖のミネラル吸収促進作用」の研究で、トクホを商品化した経歴を持つ。趣味はフルマラソン。

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