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薬局なんでも相談室1
相談室1:院内処方に戻す診療所を訴えたい
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

 医薬分業は、医師と薬剤師がそれぞれ独立することにより、薬物療法の安全性と有効性を確保するという目的などから広く普及しました。

 「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」「保険医療機関及び保険医療養担当規則」並びに「薬局業務運営ガイドライン」によると、医薬分業の体制を維持するため、調剤薬局はその構造上はもちろん経営上も、医療機関から独立することを規定しています。また、医療機関は特定の薬局で調剤をしてもらうように指示したり、誘導してはならないとされています。

 これは、薬物療法を必要とする患者に医師が処方箋を発行した場合、薬物の専門家である調剤薬局の薬剤師が、独立した立場からその安全性をチェックすることで、良質な薬物療法を提供できると考えられているからです。

 逆に、医療機関と調剤薬局が経営的に一体であった場合、調剤薬局は処方された薬が安全かどうかを本当にきちんとチェックできるのか、保証できない可能性があるということでしょう。

裁判例では薬局の訴えを棄却

 医療機関は、院外処方にするか院内処方にするかを、任意に決めることができます。たとえ、診療所の近隣にある“門前”薬局でも、経営上は互いに独立した存在なのですから、診療所が院内処方に変えて、その結果、それまで院外処方箋を応需してきた門前薬局が経営上のダメージを受けても、損害賠償を請求することはできません。

 裁判例を調べてみると、福岡高等裁判所の2002年11月21日判決では、処方箋発行に関し合意があったとしても、薬局は院内処方箋に変更した医院に対し、損害賠償請求できないと判示しています(事件番号:平成14年(ネ)第25号)。

 このケースで、診療所が開業した1カ月後にその隣に開局した薬局は、診療所とマン・ツー・マンの分業契約と院外処方箋を発行するという契約があると主張していました。しかし、診療所は開業の2カ月後から院外処方箋を発行せず、その1カ月後に薬局は閉鎖に追い込まれてしまいました。

 裁判所は、開業に当たって診療所と薬局が綿密な打ち合わせなどを行っており、処方箋発行に関して相応の合意があったと認めました。ですがそれは、単なる事実上の約束・協力・協同関係の確認にとどまり、損害賠償請求の根拠とはならないことから、薬局の訴えを棄却しています。

 また、やや時期が遡りますが、大阪高裁も1989年4月14日、同じ趣旨の判決を言い渡しています。ただし、この判決で裁判所は、調剤薬局が開設に際して診療所と緊密に準備してきた経過から、開設費用(工事費用、家賃、従業員の給与)については損害を認めています(事件番号:昭和63年(ネ)第374号)。

 ご質問のケースでは、質問者の勤務する門前薬局が内科診療所とどのような関係にあったか分かりませんが、経営の独立性という医薬分業制度の趣旨から考えると、内科診療所が院外処方箋から院内処方箋に変更しても、それによる損害の賠償を請求するのは難しいと思われます。

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