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DI BOX/過誤防止ノート
「テンジ」を「テンビ」と聞き間違え誤投薬
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

 発音や聞こえ方が似ている2つ以上の語を類音語という。医療現場には類音語が氾濫している(表1)。

表1 医療関係用語の類音語の例

 今回は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システム「アイフィス」に寄せられた事例の中から、類音語が関係したトラブル事例を紹介する。

 なお、筆者らが収集した服薬指導におけるヒヤリハット・ミス事例などは、無料で閲覧が可能である。入会申し込みは、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターのウェブサイト「アイフィス(薬剤師)」コーナーから。

感冒薬と漢方薬を混乱

 患者は高齢であり、カンボウヤクという言葉が聞き取りづらかった可能性がある。また、患者が理解しづらい、感冒薬という言葉を使用したのも悪かったと考えられる。

 今回のケースでは、薬剤師は次のように説明すればよかった。「今日はいつもの処方薬以外にかぜ薬が出ています」。

降圧薬が抗うつ薬と聞こえた

 本ケースは、受付の事務職員が、「アツ」を「ウツ」と聞き間違えたことが原因で生じたトラブルである。

 再発防止のため、間違いを起こしやすい言葉を薬局全体で共有するなどの対策が必要だ。また、間違いやすい言葉には、「○○のことでお尋ねですね」と復唱して、患者の質問を正確に聞き取るべきである。

疑義照会で点耳を点鼻と誤解

 本ケースの原因は、次の通りである。

(1)医師がカルテに手書きで記載した薬剤名が省略されていた。

(2)リンデロンには多くの規格があることを、診療所の事務員が認識しておらず、誤ってレセコンに入力した。

(3)診療所が院外処方箋を発行する際には、診療所の薬剤師が内容をチェックしているが、今回はチェックしていなかった。

(4)薬局薬剤師は薬剤の間違いであることに思い至らず、単なる用法の確認と考え事務的に疑義照会をした。

(5)電話では、「テンジ」と「テンビ」は聞き間違えやすい。

(6)点眼・点鼻用リンデロンA液は耳に使用しないことと、疑義照会で「点鼻」との回答を得たことから、薬局薬剤師は間違いないと思い込んだ。

 こうしたトラブルは、薬歴などを確認して疑義照会を行うことで予防できる。また、リンデロンの規格は複数あるので、誤った薬が処方されやすいことを念頭に、調剤業務を行うべきである。

 聞き間違いによるトラブルを回避するためには、聞き間違いを起こしやすい単語を別の言葉に置き換えて話すなどの工夫も必要である。

「心臓の薬」と「腎臓の薬」
 心臓の薬は「脈を整えるお薬」「血管を広げるお薬」と言い換えたり、腎臓の薬は「尿を作っている腎臓の薬のことですね」と言葉を添える。

「胃薬」と「目薬」
 胃の薬、目の薬など「の」を入れる。

「鼻炎の薬」と「胃炎の薬」
 「鼻の炎症を抑えるお薬」「胃の炎症を抑えるお薬」と言い換える。

「胃の薬」と「痔の薬」
 痔の薬は「おしりの痔のくすり」と患部を詳しく説明する言葉を加える。

「院外」と「院内」
 病院の外(そと)、病院の中(なか)と、明確に区別する。

(東京大学大学院教授 薬学系研究科
医薬品情報学講座・澤田康文)

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