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CaseStudy
ホロン(すずらん薬局グループ)(広島市中区)
日経DI2013年5月号

2013/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年5月号 No.187

 広島市を中心に、すずらん薬局など13店舗を展開するホロン(広島市中区)では、2005年から在宅医療に取り組み、現在、3店舗で訪問服薬指導を行っている。同社のすずらん薬局大手町店には、無菌調剤室を配備し、無菌調製も実施(写真1)。これまでに担当した在宅患者は延べで1300人を超えるという(表1)。

写真1 すずらん薬局大手町店の無菌調剤室

輸液の調製や麻薬のポンプへの充填などは、同薬局大手町店にある無菌調剤室で行う。高カロリー輸液のキット製剤が普及し、無菌調製が必要な患者は限られてきているが、小児患者の輸液の調製などでは無菌調剤室が必須だ。
写真:橋本 真宏

表1 すずらん薬局グループの在宅活動の実績
(2005年3月~13年2月末日までの延べ人数)

※Home Parenteral Nutrition:在宅中心静脈栄養法
すずらん薬局全店で、在宅訪問服薬指導を担当した患者の実績。施設は、特別養護老人ホームやグループホームの入居者に対するもの。そのうち、緩和ケアを実施した患者数、無菌調剤を行った患者数を示している。シリンジポンプ充填やインフューザーポンプ充填は、ポンプに医療用麻薬の充填を行った患者の数。

 同社代表取締役の古屋憲次氏は、「薬剤師の在宅訪問に関するパンフレットを作成して、病院の地域医療連携室や訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどを訪問し、薬剤師が在宅で何ができるかを伝えてきた。また、多職種が集まる会合や勉強会などにこまめに顔を出すようにしてきた」と、これまでの歩みを振り返る。

「社会に必要とされる薬局になるには、たとえもうからなくても地域が困っていることに積極的に取り組むべき」とホロンの古屋憲次氏。

 そうした取り組みによって、地域の在宅医療・介護スタッフとの連携が進み、徐々に担当する在宅患者が増えてきた。その中で、古屋氏は「医療材料の供給について、困っている医療機関が多いことに気づかされた」と話す。すずらん薬局川内店で訪問服薬指導を担当する松谷優司氏も「薬局で医療材料も供給してくれないかと頼まれることが多かった」と言う。

「在宅の現場では、制度が追いついていないことが多い。声を上げて解決していきたい」と話す、すずらん薬局川内店の松谷優司氏。

 これらの医療機関のニーズに応える形で、同社は10年8月に医療材料の小分け販売を始めた。さらに、その数カ月後に医療用麻薬の持続皮下注射用の自己調節鎮痛法(PCA)機能付きシリンジポンプのレンタルを開始。麻薬の注入ポンプさえあれば、自宅に帰れるという癌患者がきっかけとなった。

医療材料が在宅医療の障壁に

 在宅における、チューブや針などの医療材料は、訪問診療を行う医療機関が患者に提供するのが原則だ。というのは、医療材料のコストは、診療報酬の医科の「在宅療養指導管理料」に付随する「在宅療養指導管理材料加算」に含まれるからだ。

 例えば、中心静脈栄養法を行う場合、中心静脈カテーテルに接続するチューブや針、滅菌ドレッシング材などの医療材料が必要となる(写真2)。医療機関では、「在宅中心静脈栄養法指導管理料」(3000点)と「在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算」(2000点)を算定し、必要な医療材料の費用を賄い、患者に提供する。

写真2 中心静脈栄養法に必要な主な医療材料

静脈から栄養を補給する中心静脈栄養法や輸液関連の医療材料は、急に必要となることもあるため、薬局で在庫を用意している。(1)輸液ポンプにつなげるチューブセット、(2)エクステンションチューブ、(3)体外式カテーテルにつなぐフーバー針、(4)消毒液付き滅菌綿棒、(5)滅菌ドレッシング材。

 これらの医療材料は、個々の患者には月に1~2本程度しか使用しないものがほとんどだが、20本や50本という包装単位で販売されているものが多く、一度、購入すると在庫を抱えることになってしまう。在宅患者を多く担当する診療所であれば、別の患者に使用できるが、外来診療を行いながら少人数の在宅患者を診ているような診療所では不良在庫となる。その結果、加算よりも医療材料にかかる費用が高くなってしまう事態も生じかねない。

 松谷氏は「医療材料の問題は、医師が在宅医療を始める上での一つの障壁になっている」と指摘する。松谷氏によると、実際に、医療材料のことがネックとなって、在宅医療を断念した医師もいるという。その医師は、外来でずっと通っていた患者が癌になり、中心静脈栄養法が必要な状態で退院して自宅に戻ってきたため、必要な医療材料をそろえて訪問診療を始めた。しかし、短期間で患者が亡くなってしまい、多くの医療材料が使われないまま残された。医師は「これではとても続けられない」と、その後、在宅医療に取り組むのをやめてしまった。

セットで供給して医師をサポート

 制度上は医療機関が患者に提供することになっている医療材料だが、古屋氏は「薬局が薬とともに供給を担うべき」と主張する。

 そもそも物品の販売管理は、薬局が得意とするところだ。個々の診療所が行えば不良在庫となってしまう医療材料だが、より多くの在宅患者を担当している薬局なら、不良在庫にせずに済む。

 また、同社取締役薬局運営本部部長で自らも訪問服薬指導を行う原田芳徳氏は「輸液や経管栄養剤は供給するのに、『投与するための医療材料については知りません』では、薬局としてあまりにも無責任」と主張する。在宅医療に慣れていない医師の場合、いざ経管栄養法や中心静脈栄養法などが必要となったときに、どういった医療材料が必要かが分からないことも少なくない。そんなときに、「例えば、『胃瘻患者の経管栄養法を』と言われて、栄養剤とともに、それを投与するために必要な医療材料一式を持っていくことで、薬局が関わるメリットをより感じてもらえる」と原田氏は言う(写真3)。

写真3 経管栄養法に必要な主な医療材料

経口摂取が長時間できない場合や、栄養が不十分な場合に実施する、経鼻栄養法や胃瘻栄養法に使う。(1)栄養剤を充填する栄養ボトル、(2)ボトルと胃瘻の接続に使う栄養チューブ、(3)経鼻チューブ、(4)(5)胃瘻に薬剤を投与するためのカテーテルチップシリンジ

「輸液とそれを投与するための医療材料を一緒に供給すれば、医師も助かる。薬局が医療材料を提供する意義は大きい」と話すホロンの原田芳徳氏。

 薬剤と医療材料の両方を扱っていれば、迅速な対応も可能だ。ある在宅患者が脱水状態となり「できるだけ早く輸液を開始したい」と医師から緊急連絡が入ったときに、必要な医療材料を輸液とセットで届けたことで、連絡から2時間後には輸液を開始できて医師から感謝された。松谷氏は「週末の夕方だったこともあり、卸に連絡してそろえようとしたら、間に合わなかっただろう」と説明する。

物品は最寄りの店舗で受け渡し

 同社の医療材料小分け販売のフローは次の通りだ。まず、同社が用意した「医療材料小分け発注書」(表2)に必要事項を記載してもらい、すずらん薬局川内店宛てにファクスで送信してもらう。

表2 すずらん薬局グループが作成した医療材料小分け発注書

小分け単価とともに箱単位で購入した場合の値段も明示している。
掲載していない品目の発注があった場合は、ケース・バイケースで対応している。

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 発注書が届くと、担当の松谷氏が発注者に電話を掛けて、どのような患者に使用するのかなどを聞き、必要な物品を確認し、全ての注文品がそろう日程のめどを伝える。「輸液に必要な物品は、緊急の場合があるため薬局で在庫を持っているが、それ以外のものは受注してから発注する場合もある」(松谷氏)からだ。

 注文された物品がそろえば、同社で訪問服薬指導をしている患者の場合は、患者宅へ届ける。そうでない場合は、同社の薬局のうち、発注者が指定した店舗に社内便を使って物品を届けておき、取りに来てもらう。「物品の発注や受け取りは訪問看護師が行うことが多いが、その代金は訪問診療を行う医療機関に支払ってもらう」(松谷氏)。

 PCA機能付きシリンジポンプは、同社が購入した上で、医療機関と賃貸契約を結び、貸し出している。賃貸料は月1万500円で、医療機関が算定する「注入ポンプ加算」(1250点)から支払ってもらう。最初は3台を用意したが、貸し出しが増えてさらに2台を購入。5台のうち2台はバックアップ機で、3台が常に稼働している状態だ。

薬局が社会に求められる機能の一つ

 同社では、小分け品の価格は箱単位で購入する場合よりも高くなるように設定している。それでも、不良在庫を多く出すと損失がかさんでしまう。「損失を抑えるには、取扱品目を絞る必要がある」(原田氏)。

 医療材料は、同じ用途で使用するものでも病院によって採用品が違う。従って、入院中と全く同じ製品を在宅でも使おうとすると、患者ごとに製品を取りそろえておく必要が生じるが、これは薬局にとって負担が大きい。そこで、同社では、別の製品を指定された場合には、発注書リストにあるもので代用できる旨を発注者に説明して理解を求めるようにしている。

 そのために「取扱品目は、できるだけ汎用性のあるものにしておく」(原田氏)。例えば、注射針は最も細いものを用意しておく。また、注射針とチューブが一体となったものは採用せず、連結できるものを組み合わせて使うといった具合だ。

 取扱品目の選択や代用品を説明する上では、治療法や医療材料に関する知識が必要となる。「知り合いの訪問看護師などに教えてもらいながら、取扱品目の見直しなどを重ねてきた」と松谷氏は説明する。

 こうした工夫を凝らしても、「医療材料の小分け販売や注入ポンプのレンタルは、決してもうかるものではない。人件費まで含めると赤字」と古屋氏は言う。しかし、「現場での問題点を解決することができれば、薬局の存在価値が示せる。薬局が多職種と連携して、地域医療に貢献しようとするならば、医療材料の供給を薬局がやる意義は大きい」と、目先の利益だけが目的ではないことを強調する。

 利用する医療機関は、少しずつだが増えているという。また、医療材料の供給がきっかけで、訪問服薬指導を依頼されることも少なくないという。

 2012年の調剤報酬改定では、在宅業務を実施する薬局に対して、調剤料への加算として「在宅患者調剤加算」(15点)が新設され、その施設基準に「医療材料及び衛生材料を供給できる体制」が盛り込まれた。古屋氏は「小規模薬局では難しいかもしれないが、ある程度の規模の薬局で在宅医療に力を入れているところが、地域の拠点薬局として医療材料を供給する体制をつくるべき。薬局が社会に求められる存在になる一つの手段になり得る」と語っている。 (坂井 恵)

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