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健康被害を起こさないためにもOTC薬ネット販売に規制を設けよ

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

 最高裁判所は2013年1月、ケンコーコムとウェルネットが厚生労働省を訴えていた裁判で、国の上告を棄却する判決を下した。最高裁は、一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売を一律に禁止する規制が違法であるとの判断を下し、第1類・第2類などのOTC薬のネット販売は事実上解禁された。裁判を起こしたケンコーコムは早速、OTC薬のネット販売を再開している。

 誤解のないように注釈すると、判決はOTC薬のネット販売自由化を認めたわけではない。今までネット販売を規制していたのは、薬事法ではなく厚労省が発した省令だった。省令は、法律の委任がなければ罰則を設けたり、国民の権利を制限したりできないとされている。だが、現時点の薬事法には、ネット販売を規制する旨の記述はなく、また、省令に法律の委任があるとはいえない。よって、ネット販売を一律に規制する省令は無効と、最高裁は判断したわけだ。もしネット販売を行政が規制したいのであれば、省令ではなく法律で定めよという司法からのメッセージとも取れる。

 ネット販売の是非について筆者は論じない。だが現場の薬局薬剤師の立場からこれだけは言わせてほしい。ネット販売に何らかの規制を設けなければ、いつか必ず健康被害が起きる、と。

 薬局薬剤師は、医療用医薬品にしろOTC薬にしろ、販売時には服薬指導を行う。それは印字された指導文をただ読み上げるといった単純なものではない。限られた時間の中で患者から情報を聞き取り、個々への指導を考える。時には医薬品の変更や中止を検討する必要がある場合もあり、経験不足な薬剤師にはとても務まらない。

 ネット販売でも、OTC薬を適切に使用するための情報をパソコンの画面に表示することはできるだろう。だが本当の服薬指導をするためには、最低限、電話などの相談窓口を設けなければ患者の状況は分からない。ケンコーコムを例に挙げると、電話相談窓口はあるものの24時間対応ではない。せめて、電話相談窓口が閉鎖している時間帯は、OTC薬の販売も自粛するのが筋ではないか。現に薬事法でも、第1類のOTC薬の販売は薬剤師が行うと定めており、店舗販売では薬剤師などの専門家の不在時にはOTC薬の売り場を閉鎖している。

 さらにネット販売では、販売業者の顔も仕事ぶりも見えないという問題もある。第1類のOTC薬の販売を実際に薬剤師が行っているのかどうかも分からないし、そもそも販売業者に薬剤師などの専門家が本当にいるかすらも分からないのだ。

 ネット販売推進派の中には、「店舗販売でも患者にまともな服薬指導をしないどころか、薬事法を守らない不正店があるじゃないか」という人もいるだろう。しかし、だからといって、ネット販売には何の規制もなくてよいという話にはならない。

 不正な薬局店舗があるのなら、ネット販売においても不正な販売業者が出てくることは容易に想像できる。それでなくてもネットの世界では、ニセ薬の販売やフィッシング詐欺などの犯罪行為が横行し、取り締まる側が腐心しているのが実態だ。ネット販売を認めるのであれば、不正業者が出てこないように薬事法に基づいて厳しい規制を設け、監視の目を強めることが絶対に必要である。

 裁判には終止符が打たれたが、ネット販売を巡る問題はまだ終わっていない。厚労省は2月、関係業者や消費者団体、日本薬剤師会などからなる検討会を立ち上げて、ネット販売のルール作りに乗り出した。恐らく今年中には何らかの規制が設けられることだろう。

 筆者としてはそれまでの間、OTC薬のネット販売による健康被害が起きないことを祈るばかりである。 (みち)

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