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特集:患者情報の取り扱い、再チェック!
コミュニケーション編 プライバシーに関わる会話で気を付けたい5つのポイント
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

 プライバシーに関わる話をするときには、周りに聞かれない配慮とともに、患者を嫌な気持ちにさせない対応が必要だ。

デリケートな話をするときや耳の不自由な患者に大きな声で話をするときには、場所を移すなど周りに聞こえない配慮が必要だ。

 「薬剤師は、病気や生活、家族のことなどを聞く機会が多く、プライバシーに関する話題を避けていては、薬剤師としての仕事ができない」─。神戸学院大学薬学部講師で医療コミュニケーションに詳しい上町亜希子氏は、薬剤師の仕事と患者のプライバシーについて、こう語る。「『プライバシーに関わるから聞かない、聞けない』ではなく、『プライバシーに踏み込む必要がある職業』と認識し、十分に配慮して対応してほしい」と強調する。

「プライバシーに関わることだからこそ、十分に配慮しながら聞いてあげてほしい」と話す神戸学院大学薬学部の上町亜希子氏。

 他の人に知られたくないと思うことを聞く上で、配慮すべきポイントをまとめてみよう。

POINT1

薬剤師が聞く理由を、より意識して説明する

 婦人科や泌尿器科、皮膚科などを受診する患者は、疾患名を話したがらないことが多いが、確認が必要な場合もある。そんなときは、「興味本位で聞いているわけではなく理由があって聞いていることを、通常の疾患よりも意識して伝えるようにしてほしい」と上町氏。

「今日はどのようなことで受診されたのですか」「先生からはどのように聞いていらっしゃいますか」と聞く前に、例えば「このお薬は病気によって飲み方が違うので、安全に飲んでいただくために、お伺いしますが」など、質問する理由を伝えるようにしたい。

 また、「安全にお薬を飲んでもらうために、ご病気に関して質問させていただきます」といったポスターやチラシを用いて、日ごろから周知させることも必要だろう。

POINT2

話すか話さないかは、患者に選択してもらう

 そもそもあまり話をしたがらない患者はいるし、よく話す患者であっても「これだけは話したくない」ということもある。そこで、上町氏は「話したくないことは、無理に話さなくていいと伝えて、話すか話さないかを、患者さんが選択できるようにしてほしい」と訴える。「お話になりたくないときはおっしゃってください」「言いにくい内容はお答えいただかなくても構いませんので」などの言葉を、質問する前に添えるといい。

 薬剤師が「話すのが当然」という雰囲気をつくってしまうと、患者に嫌な思いを抱かせかねない。話しにくそうなことを聞くときこそ、患者が選択できるような配慮が必要だ。

POINT3

聞こえない場所で話す、混まない時間に来てもらう

 服薬指導の場所にも配慮が必要だ。「待合で薬の説明をする薬局があるが、あれではプライバシーが全く保てていない」とCOMLの山口育子氏は指摘する。近くに座っている患者に、会話が筒抜けになるからだ。

 健ナビ薬局鹿島田は、以前はサービスや時間短縮の観点から、多くの患者に待合で薬を交付していた。その後、カウンターで電子薬歴の画面を患者と見ながら指導するように変えたところ、患者から「実は(以前の待合での説明は)プライバシーが気になっていた」と打ち明けられたという。現在は、子ども連れや移動が困難な高齢患者などに限って、了解を得た場合のみ待合で薬を渡すようにしている。

 パーティションがあっても、カウンター越しの会話ではほかの患者に聞こえがちだ。特に、じっくり話す必要があるときや、他人に聞かれたくないような話をするときには、別の場所を用意することも大切だ。「もっとお話をお聞きしたいのですが、ここではプライバシーが保てないので、よろしければ別の場所でお話ししていただけませんか」などと患者に説明し、場所を移すとよい。

 個室になるスペースがない薬局では、「スタッフの休憩室を使って話をしてもいい」と上町氏。患者が少ない時間帯に改めて来てもらったり、後で電話を掛けて話をするという方法もある。

 耳が不自由な患者などには大きな声で話すことがあるが、内容が周りに聞こえてしまう。そんなときのために、簡易補聴器や集音器を用意しておきたい。耳に当てると相手の声がはっきり聞こえるため、薬剤師は通常の声で服薬指導できる。こじか薬局片瀬店(神奈川県藤沢市)は、医療機関などで使われている集音器の「ヒアリングヘルプ」(販売:兼松ウェルネス)を用意し、患者に使ってもらっている。

 こうしたプライバシーに関する要望は、最初に患者に確認しておくといいだろう。薬局キッズファーマシーでは、初回質問票に「配慮してほしいこと」の欄を設けて、丸を付けてもらうようにしている。そこには、「筆談にしてほしい」「他の人には聞こえないように気を付けてほしい」といった項目を挙げ、患者が希望を伝えやすいようにしている。

POINT4

疾患名は初回質問票で確認、声に出さずに指して説明

 別室で話をするほどではないが、疾患名や服用薬名を他の患者に聞かれたくない患者もいる。そのため、疾患名などを声に出さなくても話ができる工夫も必要となる。埼玉県立がんセンターの門前にあるレモン薬局伊奈店では、同センターの患者専用の初回質問票を作っている。癌の種類や治療内容を列記しておき、患者は丸を付けるだけで済むようにしている(写真8)。

写真8 レモン薬局伊奈店の初回質問票「お薬の記録」

癌患者が多く来局する同店では、初回質問票に「現在・過去にかかった病気」の欄を設け、癌の種類を列記している。患者に丸を付けてもらい、指で示すことで言葉にせずに会話ができる。

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 質問票を指しながら会話をすることで、「『癌』という言葉を使わずに話ができ、原発巣を聞き出すなど、デリケートな話もしやすい」と同店の矢作智彦氏は、患者の心情にも配慮できるメリットを語る。

 同様に、疾患名や薬剤名を言わずに「水虫の薬」を「真菌を抑える薬」、「糖尿病の薬」を「血糖値を下げる薬」というような言い換えをするのも、患者のプライバシーを守ったり、嫌な思いをさせずに話をすることにつながる。

POINT5

最後まで傾聴し、話してくれたことに謝意を

 「プライバシーに踏み込んで話をすると、非常に重たい話が出てくることがある。そんなときは、逃げずにしっかり最後まで患者さんの話を傾聴してほしい」と上町氏。自身も、低用量ピルが処方されている患者に、「今日はどういうことで受診されたか、良かったらお聞かせいただけますか」と聞いたところ、患者は中絶したばかりで、そのときのつらかった経験を涙ながらに訴えられたことがあったという。「話を聞いても『おつらかったですね』と受け止めることしかできない」(上町氏)が、話をそらそうとせず最後まで聞くことが肝心だ。

 さらに、上町氏は「患者さんがプライバシーに関わることを話してくれたときには、『言いにくいことを話してくださってありがとうございます』と、感謝の意を伝えることが大切」と付け加える。「話して良かった」と、患者に思ってもらえる配慮が求められる。

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