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特集:患者情報の取り扱い、再チェック!
情報管理編 これだけは注意しておきたい患者情報取り扱いのポイント
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

 患者の氏名や連絡先、薬歴といった情報は、薬局ごとのルールで管理されていることが多いが、果たして十分といえるだろうか。

ファクスの誤送信を防ぐため、入力したファクス番号は複数の人でチェックする。

POINT1

他人の目に触れないように、患者名と薬剤名は隠す

 薬局内での情報管理の基本は、情報が、他の患者の目に触れないようにすること。患者がカウンターで立つ位置に立ったり、薬局内の動線をたどったりして、見せてはいけないものが見えないか、確認しよう。

 特にカウンター内に貼ってある、患者に関する情報を含む連絡事項の紙が見えたりしないよう注意したい。後で取りに来る患者や配達を希望した患者の薬剤には、スタッフ間で分かりやすくするために、付箋に患者名や薬剤名などを大きく書いて貼ってあるケースは少なくない。

 健ナビ薬局鹿島田(川崎市幸区)では、こうした“交付待ち”の薬剤をカウンターの後ろの棚に置いているが、数年前から患者の目に触れないように、棚を板で隠すようにした(写真1)。

写真1 交付待ちの薬剤は、患者の目に触れないように隠す

健ナビ薬局鹿島田では、患者に渡す前の薬剤は、カウンターの後ろにある棚に置いている。氏名や薬剤名などが患者から見えないように、板で隠している。

 同店ストアマネジャーの中村広樹氏は「見えないように注意して置けばよいが、忙しい時間帯などは、注意が行き届かないこともあり得る。そこで、どう置いても見えないように隠すようにした」と話す。

 一方、レモン薬局せんげん台店(埼玉県越谷市)では、薬袋を入れるポリ袋を、中身が透けて見えるものから、中身が見えない灰色のものに変えた(写真2)。

写真2 薬袋を入れるポリ袋の工夫

 同店は、パーキンソン病などの慢性疾患や精神疾患の患者を多く診療する順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院の門前にある。「電車に乗って、遠方から通院する患者も多いので、ポリ袋の中身が見えないようにした」と同店店長の長崎正晃氏は話す。

「中身が透けて見えるポリ袋を好まない患者は多いため、透けない灰色のものに変更した」と話す、レモン薬局せんげん台店の長崎正晃氏。

 自分が服用している薬剤を、他人に知られたくない患者は多い。こうした観点から配慮できているか、いま一度、見直してみることが重要だ。

POINT2

別の患者に情報を渡さない、お薬手帳の“混入”は要注意

 調剤業務の中では、患者の個人情報を別の患者に渡さないように注意することも重要だ。

 健ナビ薬局鹿島田では、処方箋とお薬手帳を、「手帳」と書かれた専用のクリップで留めた状態(写真3-a)で調剤に回している。お薬手帳は患者名や住所をはじめとした個人情報を書く欄があるため、調剤時に“行方不明”にならないように、注意しているというわけだ。

写真3-a 他の患者に個人情報が渡らないようにする工夫

「預かったお薬手帳が行方不明にならないように、専用のクリップを使っている」と話す健ナビ薬局鹿島田の中村広樹氏。

 一方、レモン薬局せんげん台店では、処方箋の受付時にはお薬手帳を預からず、薬を渡すときに受け取って、患者の前で内容を確認し、シールを貼っている。「預かったお薬手帳を他の患者に渡してしまいそうになったことがあり、検討して、交付時に見せてもらうことにした」と長崎氏は話す。

 お薬手帳だけでなく、氏名と薬剤名が書かれた薬袋や薬剤情報提供文書も、違う患者に渡さないよう注意すべきだ。レモン薬局伊奈店(埼玉県伊奈町)では、処方箋受付時に患者に番号札を渡し、その番号と同じ数字のクリップを調剤トレーに付けて調剤している。薬情やお薬手帳用のシールなどにも同じ番号が印字されるようにしてあり、薬剤交付時に番号を照合する(写真3-b)。同店店長の矢作智彦氏は「番号で管理するようにしたことで、違う患者に手渡してしまうリスクが格段に減った」と、そのメリットを話す。

写真3-b 他の患者に個人情報が渡らないようにする工夫

処方箋の受付時に、患者にB6判の番号札(上)を渡し、調剤用のトレーには同じ番号のクリップを付けて調剤する(下)。外出する患者には、外出用の番号札を渡す。この整理番号は、薬剤情報提供文書やお薬手帳用のシール、調剤録にも印字し、薬を渡す時には患者の番号札とこれらの番号が一致しているかを確認する。

POINT3

書類の破棄を徹底し、裏紙は使わない

 薬局においては、調剤時に使用した処方箋のコピーや薬包紙の切れ端など、患者名や薬剤名が記載された紙が、毎日大量に発生してしまうものだ。

 これらをシュレッダーにかけることは常識。ただ、特に量が多い薬局では、シュレッダーにかける労力が大きい。そんな薬局の1つ、レモン薬局せんげん台店では、専門業者に委託し、文書を溶解処理してもらっている(写真4)。

写真4 患者情報が記載された紙などは溶解処理専用のボックスに入れて破棄する

ヤマト運輸の「クロネコヤマトの機密文書リサイクルサービス」は、専用ボックスに文書などを入れて封印すると、回収して溶解処理してくれる。

 患者の個人情報をきちんと管理するという点においては、医療機関での取り組みも参考になる。恵寿総合病院(石川県七尾市)では、紙の切れ端や付箋に患者の情報をメモするのを禁止し、ノートや手帳などとじられたものを利用するように徹底している。メモだと落としたり、他の書類に紛れ込んだりして紛失するリスクが高いためだ。

 また同院は、患者情報が書かれているかどうかにかかわらず、印刷物の裏紙をメモに使うことを一切禁止している。同院本部事務局総務部情報管理課長で、個人情報保護に関するスタッフ教育などに携わる直江幸範氏は、「『個人情報が書いてあるものだけ使用禁止』とすると、個人の判断ミスで個人情報が書いてある紙を使ってしまうリスクがあるので、全て禁止している」と話す。病院の取り組みではあるが、薬局でも同様の配慮が必要だろう。

POINT4

ファクスの誤送信に気を付けて、個人情報部分は隠す

 ファクスやメールの誤送信にも注意したい。特にファクスは、送信先の番号を押した後、別のスタッフに番号を確認してもらう。頻繁に送る相手であれば、番号をファクス機に登録しておくとよい。

 神奈川県藤沢市でこじか薬局を経営する初鹿野美貴子氏は、在宅業務で連携する医師やケアマネジャーにファクスする際、患者氏名などの一部分を修正液で隠している。万が一、送信先を間違っても、患者を特定できないようにするためだ。また、送信前と後には、先方に「これから送ります」「届きましたか」と確認の電話を入れているという。

POINT5

電子薬歴などのパスワードは、頻繁に変える

 患者情報が記録された電子薬歴は、漏洩すると、一度に大量のデータが流出して被害が大きくなるリスクが高いため、厳重な管理が求められる。

 データの保管先は、店舗内や社内共通のサーバーなど薬局によって様々で、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」でも、統一した基準はない。

 ただし、東大大学院の山本隆一氏は「患者の薬歴データが大量に保存されているパソコンは、ウイルス対策の面からもインターネットに接続しない方がよい」と話す。また、先述のガイドラインでは「(薬歴画面を開くための)パスワードは最長でも2カ月に1回は変えるべき」とされている。

 最近では、患者情報を保存したノートパソコンやiPadなどのタブレット型多機能端末を、在宅業務で使用する薬局が多いが、「置き忘れや盗難のリスクを考えると、本体には患者情報を保存しないで、パスワードでアクセス制限したサーバーから情報を得る仕組みにしておくべき」と山本氏は話す。

 そうごう薬局などを経営する総合メディカル(福岡市中央区)常務取締役DtoD薬局本部長の中島孝生氏は、「患者情報が記載された書類やデータを薬局外に持ち出す必要がある場合は、必ず上長に報告し、『誰が』『いつ』『どんな情報』を持ち出したかが分かるようにしておくことが大切」と話す。同社では、個人情報を薬局外に持ち出す際は記録を残し、きちんと返却したかどうかの確認も徹底しているという。

「個人情報やプライバシーに対する意識を全てのスタッフが持つことが大切」と話す総合メディカルの中島孝生氏。

POINT6

第三者への提供は、患者の同意を取る

 個人情報保護法では、第三者に情報提供する場合、利用目的や提供する項目に関して、本人の同意を取ることが必須とされる。家族への提供も例外ではない。

 例えば、患者の状態などについて、家族などから電話で問い合わせを受けたら、原則として折り返す旨を伝えていったん電話を切り、患者に確認した上で情報を提供することが求められる。

 とはいっても、たびたび折り返すのは現実的ではない。そこで、薬局キッズファーマシー(東京都西東京市)のように、初回来局時に書いてもらう質問票に、薬の説明をしてよい対象を回答してもらう欄を設け、あらかじめ聞き取っておく方法もある(表2)。

表2 情報を開示する範囲について聞き取るための質問票

薬局キッズファーマシーでは、薬に関して説明してもよい対象を、質問票を使って初回来局時に聞き取っている。

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 最近では同じチェーンの薬局間で、薬歴などを共有する例が増えているが、これについても「その目的を患者に示して同意を取るべき」と弁護士の小林郁夫氏は話す。在宅業務などで他職種と患者情報をやりとりする際も同様だ。

POINT7

点検やテストで、スタッフの意識を高める

 患者情報を漏洩させないためには、事務スタッフも含めた全従業員の意識を高めることがカギとなる。そのための方策の1つに「プライバシーマーク」の取得がある。プライバシーマークは、一般財団法人日本情報経済社会推進協会の認定資格で、取得するために事業者は法律への適合性に加えて、厳しい管理体制を徹底することが求められる。

 総合メディカルもプライバシーマークを取得しており、従業員全員に対する研修に加えて、本部のスタッフが抜き打ちで各薬局の個人情報の管理体制をチェックしている。「個人情報が書かれた紙が机の上に置いてあったり、パソコンの画面が開きっぱなしでスクリーンセーバーが設定されてなかったりした場合には厳しく指導している」と中島氏。第三者が確認することで、情報の管理体制を高いレベルで維持できるという。

 恵寿総合病院もプライバシーマークを取得している。同院は年に1度、全スタッフが参加する個人情報保護に関する講習を行っているほか、「個人情報保護についての理解度テスト」を実施している(表3)。患者の情報の取り扱いについて、定期的に確認することは、薬局が個人情報を取り扱う場であるという緊張感を保つためにも、必要といえそうだ。

表3 恵寿総合病院が全職員に行っている「個人情報保護についての理解度テスト」(抜粋)

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第三者からの問い合わせには慎重に対応することが求められる。家族であっても、患者の同意なく病状などを伝えてはいけない。

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