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Report
専門医に聞いた 新薬 ここがポイント
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

 アピキサバン(商品名エリキュース)は、心房細動患者の脳梗塞予防薬として今年2月に発売された。ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)に続く第3の新規抗凝固薬だ。

 アピキサバンは、新規抗凝固薬として初めて、安全性(出血)と有効性(脳卒中・全身性塞栓症予防)の両面で、ワルファリンカリウムに対する優越性が、臨床試験(ARISTOTLE試験)で証明された。アピキサバンの脳梗塞・全身性塞栓症の年間発症リスクは1.27%で、ワルファリン群(1.60%)に比べて有意(P=0.01)に抑制され、大出血も有意(2.13%対3.09%、P<0.001)に少なかった。

 国立病院機構大阪医療センター(大阪市中央区)臨床研究センター長の是恒之宏氏は「アピキサバンは、腎機能が低下した患者で使われるケースが多くなりそうだ」と語る。

「アピキサバンは腎機能が悪い患者に使われる可能性が高く、低用量の処方も多そうだ」と語る、大阪医療センターの是恒之宏氏。

 腎機能が低下した患者では、抗凝固薬の血中濃度が増加し、出血リスクが高まる懸念がある。この点アピキサバンは、推算糸球体濾過量(eGFR)が50mL/分以下の最も腎機能が低下した患者群で、ワルファリンに比べて大出血が少ない(3.2%対6.4%、ハザード比0.50、95%信頼区間0.38-0.66)ことが、臨床試験のサブ解析で判明した。是恒氏は、「アピキサバンの腎排泄率が25%で、他の抗凝固薬と比べて低い(表1)ことが影響している可能性が考えられる」と解説する。

表1 新規抗凝固薬の薬物特性

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 なお、ダビガトラン(RE-LY試験)やリバーロキサバン(ROCKET-AF試験)の臨床試験のサブ解析では、クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分未満の患者で、大出血や重大または臨床的に問題となる出血の発生率はワルファリンと同等だった。

 このほか、アピキサバンが処方されやすい患者として是恒氏は(1)ダビガトランによる消化器症状が強い患者、(2)高齢の患者、(3)アスピリンから切り替える患者─を挙げる。

 (1)について、ダビガトランは嘔吐や胃痛といった副作用が出やすく、その服用が困難な患者がいる。(2)は、(a)ダビガトランはRE-LY試験で、年齢依存的に大出血の頻度が上昇した、(b)リバーロキサバンは日本人を対象に行われた第3相試験(J-ROCKET AF試験)で、重大または臨床的に問題となる出血が、ワルファリンに比べて75歳以上において有意に多かった、(c)アピキサバンはARISTOTLE試験で、75歳以上の患者でワルファリンと比べて大出血が有意に少なかった─などの理由による。

 (3)については、アスピリンを対照薬とした臨床試験(AVERROES試験)が行われており、アピキサバンがアスピリンよりも有効性・安全性ともに優れていたことが挙げられる。

 「これらはあくまでデータ上ではあるが、アピキサバンを選ぶポイントになるだろう。ただアピキサバンは来年の3月まで長期処方ができない点で、処方しづらい部分もある」と是恒氏は話す。

低用量が頻用される可能性

 この他に注意したいのが、低用量(2.5mg錠を1日2回)の処方が多くなりそうなこと。ダビガトランは処方された患者の約7割、リバーロキサバンは55%が低用量を処方されていることが、各メーカーの調査で判明している。アピキサバンでも出血リスクを恐れた医師が低用量を処方する可能性がある。

 アピキサバンの低用量が適応となるのは、「年齢80歳以上」「体重60kg以下」「血清クレアチニン1.5mg/dL以上」の3つのうち2つが該当する場合で(表1)、心房細動患者の1割前後と推測されている。

 福井大学医学部附属病院副薬剤部長の中村敏明氏は、「条件に適合しない患者に低用量を使用すると、脳梗塞予防の効果が十分に得られない可能性がある。低用量が出された場合、疑義照会しないまでも、医師への連絡票などを使って、理由を確認しておく必要があるだろう」と指摘する。

 併用薬については、禁忌の薬剤はないが、他の抗凝固薬と同様の薬剤(アゾール系抗真菌薬などのP糖蛋白阻害薬)が併用注意薬として挙げられている。中村氏は「ベラパミルやジルチアゼムなどを服用中の患者では、2.5mgへの減量を考慮する医師が多いかもしれない。それが正しいかはまだ分かっておらず、根拠に基づいた処方設計が求められる」と話す。

 インスリンデグルデク(商品名トレシーバ)は、患者の基礎インスリン補充を目的とした持続型インスリン製剤。基礎インスリン補充療法は開業医の間でも広まっており、経口薬治療と並んで糖尿病治療の基本となりつつある。用法は1日1回で、患者の血糖コントロールを保つのに使われる。

 デグルデクは、皮下に注射すると多数の6量体からなる集合体を形成し、そこからインスリン単量体が徐々に分離して血中に移る。また、インスリン本体に脂肪酸の側鎖が付加しており、それが血中のアルブミンと結合することで、作用が持続する仕組みになっている。

 デグルデクの特徴は、持続時間がかなり長いこと。添付文書上、持続時間は42時間を超えると記載されており、患者が24時間後に注射する際には前回のデグルデクが血中に残っていることになる。3日前後で血中濃度が一定になり、従来の持続型製剤よりも平坦な血中濃度が維持できる。

 インスリンの持続型製剤としては既にインスリングラルギン(ランタス)とインスリンデテミル(レベミル)が市販されている。糖尿病治療に詳しいクリニックみらい国立(東京都国立市)院長の宮川高一氏は、「グラルギンとデテミルはいずれも血中濃度に多少のピークがあり、持続時間も24時間に満たないケースが多い。このため1日2回注射に設定する患者が、グラルギンで3割程度、デテミルでは7割程度あった。こうした患者が、デグルデクの良い適応となる」という。同様の理由で、グラルギンなどを使っていて、夜間低血糖あるいは朝食後高血糖の傾向にあるなどコントロールが十分でない患者も、デグルデクが適する患者タイプだ。

「デグルデクは今までの持続型インスリンの中で血中濃度が最も平坦になるのは確かだ」と語る、クリニックみらい国立の宮川高一氏。

 また、デグルデクは打つ時間がバラバラでも効果があることが確かめられている。デグルデクを1日置きに朝夕交互に打った場合と、定時に打った場合を比較した臨床試験では、HbA1c値は朝夕交互に打っても定時に打った場合と比べて劣らず、夜間低血糖の発現にも大きな違いは見られなかった。このため、「高齢者や要介護者などで、定時に打てない可能性がある患者では有用だろう」と宮川氏は解説する。

 なお、1型および2型糖尿病患者を対象に行われたデグルデクの第3相試験では、全ての低血糖の累積発生率が、対照薬のグラルギンと比べて有意に少ないとの結果が出ている(図1)。

図1 インスリンデグルデクの低血糖発生率

デグルデク群はグラルギン群と比べて全ての低血糖発作および夜間低血糖発作が、ともに有意に少ない結果となった。(Lancet. 2012;379:1498-507)

 もっとも、インスリンの血中濃度が常時一定していることが、必ずしも患者にとって有用とはいえない場合もある。宮川氏は「糖尿病患者の中には、インスリン必要量の日内変動が大きく、明け方に急にインスリン必要量が増える患者が少なくない。その場合、基礎インスリン量が平坦であるよりも、むしろそのタイミングに血中インスリン濃度のピークが来るようグラルギンやデテミルを使う方が、コントロールが良くなるといった可能性も考えられる」と指摘する。

次の注射まで8時間以上空ける

 服薬指導のポイントも幾つかある。「注射器が従来使われてきたものから新しくなったので注意が必要」と語るのは、恵比寿ファーマシー(東京都渋谷区)代表取締役の佐竹正子氏。「注入ボタンを押すとバネの力で薬剤が注入されるので、シリンジを押し込む操作が不要になった。ただし、注射前に誤ってボタンに触れると薬剤が体外で出てしまうので、その旨を説明する必要がある」と続ける。

 デグルデクの患者指導用資料では「注入ボタンを押した状態で6秒以上針を刺したままにしてください」と書かれている。これはインスリンを完全に体内に注入するためだが、佐竹氏は「インスリン製剤によって秒数が異なる場合があるので、10秒などに統一した方が患者にとって分かりやすい」と話す。

 また、デグルデクは、注射を忘れた場合、「翌日の通常投与タイミングまで8時間以上ある場合はすぐに打ってよい」と明記された。「患者から相談を受けた場合に対応できるようにしておきたい」と佐竹氏は話している。

 イグラチモド(商品名ケアラム、コルベット)は、昨年9月に発売された免疫調整薬と呼ばれるタイプの抗リウマチ薬だ。炎症性サイトカインの産生を抑制し、骨破壊病変の進行を遅らせる。

 臨床試験でサラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN)と同程度に効くことが証明され、2003年に承認申請された。もっともその後、リウマチ治療は急激に進歩し、メトトレキサート(リウマトレックスなど)が第一選択薬として位置付けられている。さらに、生物学的製剤を含めると合計で約20種類もの抗リウマチ薬が存在する。そのため「サラゾスルファピリジンと同等の薬が今さら必要なのか」といった声もある。

 これに対して、東邦大学医療センター大森病院リウマチ膠原病センター教授の川合眞一氏は、「イグラチモドは専門医が普段使用する経口薬として残るのではないか」と語る。というのも、「経済的な理由で生物学的製剤を使わない患者は相当数いるので、経口薬の選択肢が増えることはありがたい。また、当院の患者のうち副作用のためにメトトレキサートを使えない患者が約4割いるが、そうした患者には他の経口抗リウマチ薬を使わざるを得ず、今回のイグラチモドは有望な選択肢になる」(川合氏)と考えるからだ。

「イグラチモドは、メトトレキサートとの併用や切り替えの選択肢になる」と語る東邦大学医療センター大森病院の川合眞一氏。

 川合氏は、メトトレキサートの併用薬として追加あるいは他の薬剤から変更する場合などにイグラチモドを処方している。「イグラチモドの臨床試験では、メトトレキサートとの併用でプラセボに比べて有意に優れた結果が得られており、その使用法がまず浸透するだろう」(川合氏)という。このほか、インフリキシマブ(レミケード)などの生物学的製剤の効果を増強する目的で投与されるケースもある。

 なお、注意を要する併用薬の種類は多い。昨年12月には、ワルファリンと併用することで出血リスクが高まるとして、メーカーから「ワルファリン併用時の注意のお願い」が公表された。「ワルファリンを服用中の患者には処方しない」と川合氏は語る。

汎血球減少症・間質性肺炎に注意

 主な副作用としては、肝障害や胃腸障害がある。抗リウマチ薬を多数調剤している深井薬局(北海道旭川市)代表取締役の深井理知夫氏は、「胃腸障害が多いためか、イグラチモドにはプロトンポンプ阻害薬が同時に処方されることが多い」と語る。

 また、頻度はさほど高くないが、汎血球減少症が起こることがある。深井氏は「めまいや息切れ、青あざ、出血などが気になったら医療機関を受診するよう患者に指導する」という。

 他の抗リウマチ薬と同様に間質性肺炎のリスクもある。深井氏は「メトトレキサートを使用していて肺炎の既往がある場合は特に要注意。また微熱や息切れ、だるさなどが出た場合は、なるべく早く主治医に相談するようアドバイスすべきだ」と話している。

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