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OTCセレクトガイド
切り傷・擦り傷
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 傷は、その原因によって様々な種類に分けられる。比較的よく見られる傷には、切創(切り傷)、擦過創(擦り傷)、裂創(裂け傷)、刺創(刺し傷)、咬創(咬まれた傷)、熱傷創(やけど)がある。

 切り傷は、鋭利なもので皮膚が切れた状態である。

 擦り傷は、転倒などによって膝や肘などの皮膚の表面を擦りむいた状態を指す。

 これらの傷で皮下組織まで到達せず、範囲が狭く軽度であれば、セルフケアの対象で一般用医薬品(OTC薬)の適応となる。

 一方、裂け傷は、ひどく打ち付けた衝撃などで皮膚が裂けた傷。傷が深く、出血が多いことが少なくないため、医療機関の受診を勧めた方がよい。

 近年では、傷の手当てとして、患部を消毒しないで、まず表面の汚れを水できれいに洗い流し、専用のハイドロコロイドを基剤とした絆創膏やラップなどで患部を覆って、患部の滲出液を生かして好中球や線維芽細胞、上皮細胞などの増殖を促し、治癒を早める湿潤療法(モイストヒーリング)が主流になっている。

 こうした絆創膏は、OTC薬ではなく、医療機器に該当するものだが、薬局で取り扱うことが多い製品なので、本稿で解説する。

 ハイドロコロイドは、滲出液を吸収するので、貼った後パッドの表面は白く変色したように見えるが、治癒とともに白色部分が小さくなっていく。少なくとも2~3日に1回は、剥がして患部を観察して水でよく洗い流し、新しいものに貼り替える。滲出液が多く漏れてしまった場合も同様である。

 糖尿病、血行障害の治療を受けている人、異物の除去が困難な傷、刺創、咬創、にきびなど感染の可能性がある場合は湿潤療法には適さない。

 また、患部が既に乾燥してかさぶたができている状態では、ハイドロコロイドの絆創膏を貼ると、剥がしたときに傷付ける可能性があるため、使用しない。

 なお、消毒液を使うと、細菌だけでなく、皮膚の新しい細胞も殺してしまい、治りが遅くなるとされ、傷への積極的な使用は避けた方が望ましいと考えられるようになってきた。また、一度の消毒でその効果が持続するわけではないので頻繁な消毒が必要となることにも注意したい。

 ただし、ピアスを開ける際や、とげを抜く際の器具の消毒、化膿を伴う部位などに使う場合もあるので、患者が消毒液を求めてきたら、その用途を聞いて、薦めるとよいだろう。

この成分に注目

殺菌・消毒成分

 細菌などを死滅させる。アクリノール水和物、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、過酸化水素、クレゾール、クロルヘキシジングルコン酸塩、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、ポビドンヨード、マーキュロクロムなど。

収れん・保護成分

 酸化亜鉛など。皮膚の蛋白質と結合し、収れん・消炎して皮膚を保護し、傷の治りを助ける。

組織修復成分

 アラントインなど。新しい表皮の形成を促進し、粘膜組織を修復する。

局所麻酔成分

 ジブカイン塩酸塩、リドカインなど。局所麻酔作用により、痛みや痒みを抑える。

血管収縮成分

 ナファゾリン塩酸塩は、交感神経刺激作用により、局所の血管を収縮させ出血を抑える。

抗ヒスタミン成分

 クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩など。血管透過性の亢進した炎症を抑え、腫れや局所の痒みを抑える。

製品セレクト

 切り傷や擦り傷の患者にまずお薦めしたいのが、バンドエイドブランドの湿潤療法用パッドである。パッケージには分かりやすく「キズパワーパッド」と書かれているので、この商品名で買い求めに来る患者も少なくない。

 素材は、外側が水や菌の侵入を防ぐポリウレタンフィルムで、内側がハイドロコロイドとなっている。ハイドロコロイド部分は、皮膚に貼り付けるための粘着剤と、水分を吸収・保護するハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)からなる。

 ハイドロコロイド部分は小さな六角形で凹凸になっており、滲出液が隙間を流れやすく、伸縮性が高い。

 キズパワーパッドのシリーズは6種類あり、傷の部位や大きさにより使い分ける。靴ずれ用や水仕事用は、女性の患者から人気が高い。

 お薦め1は、指用の商品であるバンドエイド ah(ジョンソン・エンド・ジョンソン)である。

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 同製品は、指の関節部分に巻きやすい形状になっている「指関節用」2枚と、そのほかの部位で指に巻きやすい「指巻用」が4枚入っている。

 指関節用は、関節の動きを妨げず、患部にしっかりフィットする。また、指巻用は、重ねて巻いても剥がれにくく、パッドの先端が細くなっているのが特徴である。

 使用上の注意としては、患部が感染、乾燥している場合は使わないようにし、殺菌・消毒剤や軟膏・クリームなどとは併用しない。

 また、個包装から出した後と貼った後は、しっかり装着させるために、パッドを手で温めるとよい。

 使用期間は、貼ってから最長で5日間で、2歳以下は使用できない。

 消毒液の中でお薦めしたいのが、マキロンs ジェット&スプレー(第一三共ヘルスケア)である。

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 特徴として、上部の青い部分を右に回すと勢いのあるジェット、左に回すと優しく出るスプレーと、1本で2タイプの噴霧を選べる。

 成分は、殺菌消毒成分のベンゼトニウム塩化物、組織修復成分のアラントイン、抗ヒスタミン成分のクロルフェニラミンマレイン酸塩を配合している。「色がつかない殺菌消毒薬」を売りにしており、従来からある液剤のマキロンsやチューブ式のマキロンsキズ軟膏と成分および成分量は同じである。

 用法・用量として、1日数回、患部に適量を噴霧するか、ガーゼや脱脂綿に浸して塗布する。

 患部は切り傷、擦り傷、刺し傷、掻き傷、靴擦れのほか、痔疾患の肛門の殺菌・消毒にも使える。

 傷口が既に化膿している場合は、ステロイドや抗菌薬を配合した製品を薦めるとよい。

 ベトネベートN軟膏AS(第一三共ヘルスケア)は、抗炎症作用を持つステロイドであるベタメタゾン吉草酸エステルと、抗菌薬のフラジオマイシン硫酸塩を配合している。湿疹やあせもを掻き壊した部位にも使える。

 同ブランドには、この軟膏のほかに、クリームもある。じくじくした患部には刺激の少ない軟膏がよいだろう。

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こんな製品も

 ハイドロコロイド素材が、通常の皮膚に触れていると、皮膚の表面がふやけた状態になる。この状態を好まない患者には、患部が触れるパッドの中心部分だけ、ハイドロコロイド素材となっている(a)ケアリーヴHCS(ニチバン)を薦めるとよいだろう。

 皮膚に接する粘着剤は低刺激性で、剥がれにくい。また、パッド全体は伸縮しやすい高密度のウレタン不織布で、通気性に優れ、白くふやけにくい。

 サイズによって5種類あり、汎用性の高いSサイズ(2cm×5.5cm)とMサイズ(2.5cm×7cm)はそれぞれ14枚、12枚入りである。

 傷面積の大きな患部には、同じくパッドの(b)メディケアアルゲキュア(森下仁丹)もお薦めだ。切り傷、擦り傷のほか、でき始めの褥瘡にも向いている。サイズは、5cm×8cm、8cm×10cm、10cm×11.5cmの3サイズで、いずれも3枚入りである。

 水仕事などによる指のさかむけ、ひび割れ、あかぎれには、液体絆創膏の(c)サカムケア(小林製薬)を薦める。成分は薬局方の成分であるピロキシリンで、刷毛で塗布して剥がれにくい被膜を作る。

 塗る際には、患部の周辺の水分をよく拭き取っておく。塗った瞬間は染みるが、乾燥すると染みなくなる。また、刷毛は水に触れるとゲル状に固まることがあるので、水で洗わないようにする。同様の製品に、リュウバンS(大木製薬)もある。

 同じく指先の浅い傷には、(d)FCやわらかベールパッド(白十字)も向いている。

 肌色の0.01mmの薄いフィルム素材を指に巻くタイプで、巻いている圧迫感がなく、ぴったりなじむ。20枚入り。

 殺菌消毒液では、ポピドンヨードの(e)イソジンきず薬(明治)もある。殺菌作用が4~5時間程度と比較的長く持続する。転倒で擦りむいた患部の砂や汚れを水で洗い流した後に使用する。

 商品名から、うがい薬と混同しやすいので、誤ってうがいに使わないように指導する。

 このほか、傷口が治癒した後の瘢痕を小さくするために、(f)アットノン(小林製薬)も薦めるとよい。医療用医薬品のヒルドイドと同じヘパリン類似物質を0.3%含む。

 傷・やけどの後の皮膚のしこりのほか、角化症、手足のひび、あかぎれにも使える。

 傷の治療においては、傷口を乾燥させて、通常の絆創膏で密閉した状態にするのは望ましくないが、小児で浅い傷の場合は、キャラクター付きの絆創膏を選び、1日1~2回とこまめに取り換えてもよいだろう。(g)ムヒのキズテープa(池田模範堂)は、子どもに人気のアンパンマンの絵が描かれており、1歳以上から使用できる。パットが大きく、肘や膝に貼っても、しわが寄りにくい。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 傷が浅く、範囲が狭い場合は、止血をして患部を保護するなどのセルフケアでよいが、神経や筋肉まで到達しているような深い傷や広い傷で出血が止まらない場合は、外科や形成外科、皮膚科などの受診を勧める。

 傷の治療は、外科や形成外科、皮膚科の領域とされているが、湿潤療法は内科や小児科のプライマリケアでも普及しているため、患者のかかりつけ医に相談するよう伝えてもよい。

 また、裂け傷は患部がでこぼこした断面になり、傷痕が残りやすいため、きれいに傷口を塞ぐためにも早めの受診を勧める。

 刺し傷は、小さなトゲ、木の枝や釘、刃物など原因は様々である。深く大きな刺し傷の場合には、異物を取り除くことによって悪化し、大量出血することもあるので無理に取り除かず、そのまま受診するよう指導する。

 動物による咬創や引っ掻き傷では、見た目よりも患部が深い場合も多く、感染の可能性が高いので、受診を勧める。

 また、糖尿病患者は傷が治りにくいため、受診勧奨の対象となる。

 淡黄色で粘つく膿が出ている場合や、患部に痛みがあり、患部の周りが赤みを帯びる、腫れや熱があるときは感染を起こしていると考えられるため、受診して適切な処置を行う必要がある。

その他

 絆創膏は、粘着剤により接触皮膚炎を起こしやすい。現在、皮膚にしっかり着き、透湿性のあるアクリル系粘着剤が主流になっているが、粘着剤の成分が比較的低分子のものは、皮膚への透過性が上がり刺激をもたらすこともある。

 また、天然ゴム、合成ゴムなどゴム系粘着剤は、初期粘着力は高いものの、ずれやすい。ラテックスアレルギーの人も、使用を避ける。

 高齢者の場合は、粘着剤よりも剥がす際の刺激による皮膚障害で、かぶれを起こすことが多い。そこで、皮膚を剥がす方向と逆にひっぱりながらゆっくり剥がすように注意する。

 また、糖尿病や動脈硬化のある患者は、足や指先に絆創膏を貼ったままでいると悪化に気づかず、化膿して腐敗することがあるため、1日1回は取り換えて患部の状況を見るように伝える。

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