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適応外処方のエビデンス
関節リウマチ治療薬メトトレキサートの副作用を葉酸で予防
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

疾患概念・病態

 メトトレキサート(商品名リウマトレックス他、以下MTXと略)は、高い有効率と継続率、優れた骨破壊進行抑制作用、生活機能改善効果に加え、生命予後の改善や心筋梗塞の発症減少効果を兼ね備えた唯一の抗リウマチ薬である(参考文献1)。

 MTXは葉酸の誘導体であり、化学構造が類似していることから、葉酸の代謝を阻害し、プリン、ピリミジンの生合成やアミノ酸代謝に関与するテトラヒドロ葉酸(THF)の産生を低下させる。そのため、DNA、RNAの合成を阻害し、細胞増殖を抑制する。さらに、アデノシンの細胞外遊離を促進して、腫瘍壊死因子(TNF)α、インターフェロン(IFN)γ、インターロイキン(IL)6、IL12などの炎症性サイトカインを抑制することにより、抗リウマチ作用を発揮する(参考文献1、2)。

 MTXには、プリン、ピリミジンの生合成阻害に伴う副作用として、胃腸障害、口内炎、脱毛、肝機能障害などがあり、より重篤で致命的なものとして低頻度であるが間質性肺炎、骨髄障害、リンパ腫がある(参考文献3)。副作用の早期対策として、月1回の定期的な臨床検査を行い、口内炎、咽頭炎、乾性咳嗽・息切れなどの副作用の前駆症状に留意することが大切であり、異常が認められた場合には、速やかな投与中止および適切な加療を行う必要がある(参考文献3)。

治療の現状

 MTXの副作用を予防する目的で、適応外で葉酸(フォリアミン)が用いられている(表1)。「葉酸代謝拮抗薬の副作用軽減」の適応が認可されている薬剤としてホリナートカルシウム(ロイコボリン)があるが、ロイコボリン錠5mgの薬価がフォリアミン錠5mgの約100倍近くと高価なため、後者が適応外使用される理由の一つになっている。

表1 メトトレキサートの副作用予防を目的とした関節リウマチ患者への葉酸の処方箋例

 葉酸をいつ開始すべきか(副作用発現後か予防投与か)、葉酸製剤として何を用いるべきか(葉酸かホリナートカルシウムか)、葉酸投与のタイミング(連日投与か週1回間欠投与か、間欠投与であればMTX投与からの時間)、葉酸の至適投与量などについては、現状ではコンセンサスが得られていない(参考文献2)。

 また、葉酸投与がMTXの治療効果を減弱させ、関節リウマチの疾患活動性を増悪させる可能性が指摘されている。葉酸を併用(1~2mg/日、2.5~5mg/週)することにより、MTXの治療効果が一部減弱すると考えられている(参考文献1)。

 MTXの治療中に重篤な血液障害を認めたり、MTXの過剰投与が判明したりした場合は、生命予後に関わる。その際は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を介さず活性型葉酸となるため迅速な作用が期待できるホリナートカルシウムが用いられる。通常は、10mgを6時間間隔で1日4回経口投与、または6~12mgを6時間間隔で1日4回筋肉内注射する(参考文献2)。

葉酸の有効性

 MTXの7.5mg/週の服用を開始(必要であれば週当たり2.5mg増量し、最大25mg/週)した関節リウマチ患者を対象に、133例には葉酸1mg/日(7mg/週)を経口投与、141例にはホリナートカルシウム2.5mg/週を経口投与、137例にはプラセボを経口投与して、48週間にわたって経過観察した。その結果、副作用のためMTXの治療を中止した患者の割合は、プラセボ群38%に対して葉酸群17%、ホリナートカルシウム群12%と、プラセボ群より継続率が有意(P<0.001)に優れていた。これは、葉酸投与群で肝機能の指標となるトランスアミナーゼの上昇が有意に抑えられたことによると考えられた。

 疾患活動性については、3群間で有意な差は認められなかった。しかし、試験終了時のMTXの平均用量は、葉酸群(18.0mg/週)およびホリナートカルシウム群(16.4mg/週)の方がプラセボ群(14.5mg/週)より多かった。なお、消化器症状、血液障害は葉酸群およびホリナートカルシウム群とプラセボ群との間に発現率で有意差を認めなかった(参考文献4)。

 3回連続してALT値が50IU/Lを超えていた関節リウマチ患者14例に、MTX服用36時間後に葉酸5mgを経口投与したところ、全例で3カ月以内にALT値が減少した。疾患活動性は、11例では変化がなかったが、3例では関節炎の悪化を伴うC反応性蛋白質(CRP)値の上昇により葉酸の投与を中止した。なお、葉酸を投与するタイミング(MTX服用36時間後)は、MTXは投与24時間後に血中からほぼ消失し、細胞内でMTXから変換したポリグルタミン酸誘導体(MTXGlu、後述)が肝臓に長期間とどまり、葉酸が活性型葉酸になるのを阻害することから設定された(参考文献5)。

 MTXにより肝機能障害を来した関節リウマチ患者116例に、MTX最終投与の36~48時間後に葉酸5mg/週を経口投与し、肝機能障害の改善が不十分であれば葉酸を7mg/週、さらに必要であれば9~10mg/週に増量した。その結果、肝機能障害が葉酸5mg/週で回復したのは50例(43%)、7mg/週では31例(27%)、9~10mg/週では6例(5%)、葉酸投与に加えMTXの減量で回復したのは29例(25%)であった。葉酸5mg/週の投与のみでは半数で肝機能障害の改善が不十分であったが、葉酸の用量を漸増することで、多くの症例で改善が見られた(参考文献2、6)。

 7つの二重盲検ランダム化比較試験(合計で葉酸群67例、ホリナートカルシウム群80例、プラセボ群160例)を統合したメタアナリシスの結果、口内炎、腹部不快感、消化不良、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状は、プラセボ群に比べて葉酸群では79%減少(P<0.0001)、ホリナートカルシウム群は有意ではないものの42%減少し、葉酸の併用により消化器症状の副作用発現が減少することが示された(参考文献7)。

 また、6つのランダム化比較試験(合計で葉酸群198例、ホリナートカルシウム群193例、プラセボ群257例)を統合した結果、肝機能障害の副作用は、プラセボ群に比べて葉酸群およびホリナートカルシウム群で35.8%減少した(参考文献8)。

作用機序

 葉酸は還元されてジヒドロ葉酸(DHF)となり、さらにDHFRによって活性型葉酸のTHFになる。ピリミジン合成やプリン合成に関与する酵素には、THFを補酵素とするものがある。

 MTXは、細胞内に取り込まれるとMTXGluとなり、ほとんど全ての細胞に長くとどまって、DHFRと強力に結合してその活性を阻害する。その結果、THFの産生が減少するため、DNAやRNAの合成阻害を引き起こし、細胞増殖が抑制されて各種副作用が発現すると考えられている(参考文献1)。従って、葉酸不足による副作用の発現を招かないように葉酸の補給が行われる。

適応外使用を見抜くポイント

 葉酸は、ほとんどが週1回の処方であり、MTXと併用されるので見抜きやすい。

 ただ、葉酸服用のタイミングがMTXの最終服用日の翌日か2日後かは、処方医により異なる。MTXの服用は週に1日ないし2日、葉酸は週に1日の服用で、曜日が決められている。服薬コンプライアンスが乱れないように、また服用を忘れたときの対処法について、適切な指導が必要である。

 MTXが8mg/週以上になると葉酸が併用されるケースが多いが、MTXの副作用の兆候が見られた場合に併用されることもある。MTXを服用していて葉酸が併用された場合には、MTXの作用が減弱し、症状の悪化やその兆しが見られることがあるので、患者への注意が必要である。

参考文献
1)リウマチ科2007;37:176-83.
2)リウマチ科 2009;42:505-15.
3)越智隆弘他編『関節リウマチの診療マニュアル(改訂版)』(財団法人日本リウマチ財団)、2004.
4)Arthritis Rheum. 2001;44:1515-24.
5)Scand J Rheumatol. 1999;28:273-81.
6)Mod Rheumatol. 2008;18:S69.
7)J Rheumatol. 1998;25:36-43.
8)BJD. 2009;160:622-8.

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