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DI BOX/ガイドライン解説
小児気管支喘息
日経DI2013年4月号

2013/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年4月号 No.186

 気管支喘息は、発作性に起こる気道狭窄により、喘鳴や咳嗽、呼気延長を伴う呼吸困難を繰り返す疾患である。

 基本病態は慢性の気道炎症であり、これにウイルス感染やアレルゲンなど様々な増悪因子が作用することで、気管支平滑筋の収縮や気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進による気道狭窄が生じ、喘息症状が起こる。

 小児喘息は、免疫グロブリンE(IgE)が関与するアトピー型が多く、ヒョウヒダニに対するIgE抗体を高率に認めるのが特徴である。

吸ステによる気道炎症の抑制が基本

 小児喘息の治療目標は、気道の炎症を抑えて症状のない状態を長期間維持することで呼吸機能や気道過敏性を改善し、最終的には寛解・治癒を達成することである。JPGL2012では、抗炎症薬の重要性を改めて強調し、治療の基本は、吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬などによる気道炎症の抑制であり、補助的に長時間作用型気管支拡張薬を併用するとした。

 薬物療法を開始する際には、重症度を判定し、重症度に対応した治療ステップで指定されている治療薬を使って治療を開始する(表1)。

表1 小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(6~15歳)

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 治療薬は、抗炎症作用を有する吸入ステロイド、ロイコトリエン受容体拮抗薬、クロモグリク酸ナトリウム(DSCG)の中から選択する。表1は、上から推奨される順に薬剤が記載されているので、例えば、治療ステップ2の患児では、特別の理由がなければ吸入ステロイド(低用量)を使用する。

 単独で十分な効果が得られない場合は、ロイコトリエン受容体拮抗薬やDSCGを組み合わせたり、テオフィリン徐放製剤の追加を考慮し、早期に十分な効果が得られるようにする。

各種吸ステの用量対比表を作成

 JPGL2012の大きな変更点として、長期管理における吸入ステロイドの用量を、年齢に関わりなく、治療の強さを示す治療ステップごとに規定したことが挙げられる。

 改訂前は患児の年齢によって用量が異なっていたが、改訂後は「低用量」「中用量」「高用量」の3段階に変更。基本的には患児の年齢に関係なく、治療ステップ2で低用量、治療ステップ3で中用量、治療ステップ4で高用量の吸入ステロイドを使用することとした。

 さらに、JPGL2012では、各種吸入ステロイドの用量対比表を設けた(表1下)。

 吸入ステロイドは、薬剤によって薬理作用の強さだけでなく、肺内沈着率や生体利用率、気道局所での滞在時間の違いなどにより臨床的効力が異なると考えられる。しかし、小児において、薬剤間の効果や副作用の違いを比較した報告は乏しいことから、JPGL2012では、これまでの使用経験から推測される吸入ステロイドの用量対比表を設けた。

 例えば、治療ステップ3で使用する吸入ステロイドの中用量は、フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)とベクロメタゾンプロピオン酸エステル(BDP)、シクレソニド(CIC)では100~200μg/日、ブデソニド(BUD)では200~400μg/日、ブデソニド吸入懸濁液(BIS)では250~500μg/日が該当する。

「比較的良好」は、満足できない状態

 もう1つの大きな変更点は、喘息の長期管理において、コントロールが適切に行われているかを評価する基準が明示されたことだ(表2)。

表2 喘息コントロール状態の評価

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 ガイドラインでは、漫然と薬物療法を継続するのではなく、少なくとも月に1度程度は、この基準によりコントロール状態を評価し、必要に応じて治療薬を調整することを推奨している。コントロール状態は、最近1カ月の喘息症状や睡眠、運動などの日常生活の状況、発作治療薬の使用状況などを基に評価する。

 コントロール状態が「良好」であれば、喘息は適切にコントロールされた状態と考え、長期にその状態を維持する。一方、コントロール状態が「不良」の場合は、適切な治療が行われていない状態であることから、増悪因子を探して対策を講じたり、治療アドヒアランスの向上を図るための患者指導を行うとともに、薬物治療の強化を検討する。

 気を付けたいのは、コントロール状態が「比較的良好」と判定された場合だ。これは、良いという意味ではなく、寛解・治癒を達成するには、満足できる管理状態ではないことを示す。この状態が3カ月以上持続する場合は、薬物治療の強化を考慮する。

 ガイドラインでは、吸入療法を効果的に実施するために吸入指導の重要性を強調している。

 吸入を始めるに当たっては、適切な吸入方法の選択と吸入手技を習得させるための指導が不可欠であり、治療開始後も吸入指導を定期的に行うようにしたい。吸入指導では、パンフレットやビデオを活用するだけでなく、患児の吸入手技を実際に観察しながら、個別に指導を行うことが重要である。

(東京慈恵会医科大学病院薬剤部 北村正樹)

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