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特集:薬局の災害対策
ルポ編 被災地で奮闘する薬剤師
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

 「震災から2年もたてば、かなり復興しているだろうと思われているかもしれないが、石巻は1年前とそれほど変わっていない」。石巻薬剤師会専務理事で石巻医薬品センター薬局(宮城県石巻市)薬局長の丹野佳郎氏は、石巻の現状を語る。沿岸部にあった石巻市民病院の解体工事は、この2月にようやく始まったばかりで、外観は当時のまま。病院前にポツンと立つ会営薬局の看板も残されていた。枯れた雑草が時間の経過を物語る(下写真)。

「復興の歩みは遅い」と語る丹野佳郎氏。

 被災した会営薬局は、在宅医療に軸足を移した上で、石巻医薬品センター薬局として仮設のプレハブで再建している(2012年3月号Case Study参照)。在宅患者は確実に増えており、現在では70~75人の患者を担当している。うち約半数は、仮設住宅に入居している患者だ。震災がなかったら通院できていたはずなのに、家庭の事情などで通院が困難になり、訪問が必要になったケースが少なくないという。

 丹野氏は、復興の遅れで人口流出に歯止めがかからず、復興計画の見直しを迫られるのではと懸念しながらも、「震災直後は、とにかく早くなんとかしなければ、と焦りを感じていた。それが今は、落ち着いてじっくりやらなければ、という感覚になっている」と話す。

薬局の再建は道半ば

 石巻薬剤師会会長の佐藤桂子氏が経営していたさとう薬局田町店も、津波で全壊した薬局の一つ。薬局があった土地が道路拡張の対象となったため、数十m離れた土地に、息子の佐藤周造氏が再建した(下写真)。「同じ薬局なのに、建物を新たに建てたため新規扱いになり、それまでの加算が算定できないと言われたり、再建にかかった費用は補助金の対象になると言っておきながら、待合室の椅子は対象外と窓口で言われたり……。ダメ出しが多くて、本当に疲れた」と佐藤氏は打ち明ける。

「営業再開後の方が苦労が多い」と話す佐藤周造氏。

 昨年5月に営業を再開し、ようやく患者が戻ってきたと感じたのは、8月1日の石巻川開き祭り花火大会以降だという。しかし、大きな余震のたびに、しばらくは患者が減るのが現状だ。

 補助金の申請は、支払いを全て完了してからでないとできないため、佐藤氏はまだ補助金を受け取っていない。「3月末までに分包機の支払いを完了して、補助金を申請する。5月には片付けたい」と話す。薬局の再建はまだ道半ばだ。

 石巻では、今も地震が頻発しており、緊張を強いられる日々が続く。実際、今年1月の地震の際には津波警報が発令され、避難勧告が出された。

 「一般に、災害の記憶は3年目ごろから薄れ始めるといわれている。だから今、『必ず災害は起きる。いつ起きてもおかしくない』ということを前提に、次の災害への備えを進めるべき」と丹野氏は力を込める。

モバイルファーマシーで、医療支援チームをサポート

 宮城県薬剤師会は昨年、キャンピングカーを改良して調剤室の機能を持たせた「モバイルファーマシー」を約1000万円かけて導入した(写真)。調剤棚や調剤台、散剤分包機、水剤台、保冷庫など、調剤に必要な設備を車内に搭載し、災害時に被災地で調剤が行えるようにした、いわば移動式調剤室だ。電源確保のため発電機やソーラーパネルなどを装備し、調剤用清水タンクを搭載。医薬品は災害支援拠点などから調達することを前提に、400~500品目収納できる。

 同会会長の佐々木孝雄氏は、「東日本大震災では、被災地の調剤機能が維持できず、特に粉薬などの小児患者の薬が供給困難となった。いかなるときにも調剤機能を保つためにモバイルファーマシーを導入した」と経緯を語る。

 さらに、同会は震災後に発足したみやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会と共同で、「災害時医薬品供給管理システム」の開発を進めている。これは、各地から駆け付けた医療支援チームとモバイルファーマシーが連携するためのシステムだ。

 まず、災害支援拠点に集積された医薬品をバーコードで読み込み、薬効別、貯蔵法別にリスト化する。医療支援チームに、そのリストをダウンロードしたモバイル端末と携帯用プリンターを貸し出し、持ち歩いてもらう。医療支援チームの医師は、端末で処方可能な医薬品を検索して処方し、その内容を端末に入力。携帯プリンターで印刷して、患者のお薬手帳に貼付する。災害時はそれが処方箋代わりになる。巡回してきたモバイルファーマシーの薬剤師に患者が手帳を見せて、薬剤師が薬を交付するしくみだ。

 「慢性疾患の患者では、投薬の記録を残して継続した医療が行えるようにすることも大切。そのために患者に処方の記録を持たせるようにした」と佐々木氏は説明する。

 同システムはほぼ完成しており、3月には稼働できるという。「モバイルファーマシーとシステムを各都道府県薬剤師会が配備し、被災地に駆け付けるようにすれば、災害時医療に貢献できる。ただし今後、緊急通行車両確認証明証の交付や災害時の調剤場所についてなど、法整備も必要」と佐々木氏は話している。

いつでもどこでも調剤ができるモバイルファーマシー。上写真は車内の調剤スペース(写真提供:宮城県薬剤師会)

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