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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)バセドウ病にチラーヂンSが出された理由
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

出題と解答 : 東風平 秀博
(田辺薬局株式会社[東京都中央区])

A1

抗甲状腺薬により甲状腺機能が低下しすぎたときなどに、抗甲状腺薬を減量するよりも、甲状腺ホルモン薬を追加する方がコントロールがしやすい場合があるため。

 バセドウ病は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体に対して自己抗体(TRAb)が産生される自己免疫疾患で、TRAbがTSH受容体を過剰に刺激することで、甲状腺ホルモンが必要以上に産生され、心身に様々な症状を引き起こす。血液検査では、TSHが基準値より低くなり、甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン〔FT4〕、遊離トリヨードサイロニン〔FT3〕)やTRAbが基準値より高くなる。甲状腺腫、頻脈、眼球突出の3症状が特徴的な症状としてよく知られるほか、動悸、体重減少、発汗過多、手指などの震え、微熱、イライラなどの神経過敏、食欲亢進、下痢、過少月経、倦怠感、筋力低下などの症状がある。20~40代の女性に多い。

 治療には、薬物治療、アイソトープ治療、手術がある。薬物治療が選択されることが多く、抗甲状腺薬のチアマゾール(商品名メルカゾール)か、プロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)が用いられる。いずれの薬剤も甲状腺のペルオキシダーゼを阻害して甲状腺ホルモンの産生を抑制する。

 日本甲状腺学会の『バセドウ病治療ガイドライン2011』では、薬物療法の第一選択薬として、Tさんに処方されているチアマゾールを推奨している(ただし、妊娠初期、特に妊娠4~7週を除く)。通常は15mg/日程度からスタートし、症状の改善とともに投与量を漸減し、FT4値やTSH値が基準域に入る量を維持しながら自己抗体が消えるのを待つ。Tさんも、症状が改善していたため、前々回、チアマゾールが減量されたと話している。

 しかし、抗甲状腺薬の用量調整は難しく、治療により甲状腺機能が低下しすぎることも少なくない。こうした場合に、抗甲状腺薬を減量するのではなく、抗甲状腺薬と逆の作用を持つ甲状腺ホルモン薬のレボチロキシンナトリウム水和物(チラーヂンS他)を併用することで、コントロールがしやすくなる場合がある(適応外処方)。

 Tさんは、前々回、チアマゾールを減量したにもかかわらず、今回の検査でTSH値が急激に上昇し、甲状腺機能が低下傾向にあることが分かった。これに対しTさんの主治医は、上記の考えから、チアマゾールを減量せずにレボチロキシンを追加したと考えられる。

 レボチロキシンを追加せずにチアマゾールを1日置きにして量を減らす方法もあるが、レボチロキシンを追加した方が症状のコントロールがしやすく、アドヒアランスの面ではよい。

 なお、抗甲状腺薬のチアマゾールについては、妊娠初期に同薬を服用していた患者の新生児に、臍腸管遺残や臍帯ヘルニア、頭皮欠損などが発生する可能性が指摘されている。そのため、日本甲状腺学会は、妊娠初期、少なくとも妊娠4~7週に、チアマゾールを使用しないよう勧めている。患者が妊娠可能な時期の女性である場合は、妊娠の希望や可能性があれば、治療法について担当医に相談するよう伝えたい。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 Tさんが服用されているメルカゾールというお薬は、量の調節が難しく、甲状腺の働きが抑えられすぎることがあります。こうした場合には、甲状腺ホルモンのチラーヂンSというお薬を服用すると安定しやすいといわれています。

 前々回の診察で、症状が良くなってメルカゾールを減らせたのですが、今日の検査では、甲状腺の働きが抑えられすぎていたため、先生はチラーヂンSで調整されたのだと思います。

 バセドウ病の治療では、Tさんのように服用する量が頻繁に変更されることがよくあります。Tさんも値が早く安定するといいですね。

 もう一点、先生からもお話があったと思いますが、Tさんが服用されているメルカゾールは、非常に有効なお薬なのですが、妊娠初期に服用すると、ごくまれに赤ちゃんに障害が出る可能性があります。ですので、Tさんが将来、妊娠する可能性が出てきたら、治療方法の変更などについて、担当の先生に相談するようにしてくださいね。

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