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DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)花粉症の季節に喘息が悪化する理由
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(1)

A2

(2)2~3μm

 気管支喘息患者の50~80%は、アレルギー性鼻炎を合併しているといわれている。日本では、スギ花粉をアレルゲンとする季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の患者が多く、喘息患者においてもスギ花粉の飛散時期である2~4月にかけて、喘息症状が悪化するケースが少なくない。通院中の成人喘息患者の47.0%がスギ花粉症を合併しており、そのうち約半数で、スギ花粉の飛散時期に喘息の悪化やピークフロー値の低下が認められたとの調査報告もある。

 花粉の飛散時期に喘息が悪化する原因として、様々な機序が考えられている。中でも近年、スギ花粉の表面に付着している微粒子(オービクル)が剥がれて下気道に侵入し、喘息を誘発するという機序が注目されている。スギ花粉は直径約30μmと大きいため、大半は吸入しても上気道で捕捉される。そのため、スギ花粉そのものは末梢気道には到達しにくいが、オービクルは直径約1~数μmと極めて小さいため、下気道に到達し得ると考えられている。

 このほか、間接的な要因として、鼻閉によって口呼吸となるため、花粉のほかダニなどの環境抗原が下気道に侵入しやすくなると考えられている。さらに、鼻局所でのアレルギー性の炎症により、ケミカルメディエーターが産生・放出され、その一部が下気道に到達して気流制限を引き起こすこと、スギ花粉への曝露に伴い全身性サイトカインの産生が亢進し、血流を介して気道への好酸球浸潤を増強すること-なども示唆されている。

 さて、Sさんのもう一つの質問である「喘息の吸入薬は肺の奥まで届いているかどうか」については、次のように説明できる。

 喘息において、気道炎症は中枢気道だけでなく、内径が2mm未満の末梢気道にも存在する。米国呼吸ケア協会(AARC)が1991年に発表したコンセンサスステートメントでは、吸入薬の粒子径として、気道への到達には2~5μm、末梢気道から肺実質への到達には0.8~3μmが有効であるとされている。0.8μmより小さい場合は、呼気とともに排出される。従って、広範囲の炎症部位に到達・沈着する至適粒子径は2~3μmであると考えられる。

 Sさんに処方されたシムビコートは、ステロイドのブデソニドと長時間作用型β2刺激薬のホルモテロールフマル酸塩水和物の配合剤である。両成分の空気動力学的粒子径の中央値(MMAD)は、それぞれ2.4μm、2.5μmと報告されていることから、同薬は、中枢気道から末梢気道まで広範囲にわたり、抗炎症作用や気管支拡張作用を効果的にもたらすことが期待できる。ちなみに、同効薬のアドエア500ディスカス(フルチカゾンプロピオン酸エステル・サルメテロールキシナホ酸塩配合剤)のMMADは、それぞれ3.54μm、3.57μmと報告されている。

 なお、鼻炎を合併する喘息患者に対して鼻炎治療を行うと、喘息症状や気道過敏性も改善することが示唆されている。Sさんにベクロメタゾンプロピオン酸エステル(商品名アルデシンAQネーザル)が処方されたのも、そのためだろう。エピナスチン塩酸塩(アレジオン)は、花粉症と喘息の両者に有効と考えられる。

参考文献
1)新薬と臨床 2010;59:1112-25.
2)アレルギーの臨床 2012;32:111-5.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 Sさんがお聞きになったように、スギ花粉そのものは粒が大きくて鼻の粘膜に引っ掛かるので、肺の奥まで入ることはありません。ただ、最近の研究で、花粉の表面の粉が剥がれ落ちて肺の中に入り、それが喘息を悪化させることが分かってきました。その粉はオービクルといって、花粉の30分の1くらいの大きさです。また、鼻から肺までは1本の管でつながっているので、鼻水や鼻づまりなどの花粉症の鼻の症状も、喘息を悪化させる要因といわれています。

 吸入のお薬については、粒が大きいと肺の奥まで届かず、小さ過ぎても吐いた息と一緒に外に出てしまうのですが、こちらの喘息のお薬は、肺のすみずみまで行きわたるような粒の大きさになっているので、ご安心ください。念のため、吸入方法を確認させていただいてもよろしいでしょうか。

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