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医師が語る 処方箋の裏側
痙攣歴がある小児への抗ヒ薬処方時の注意点
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

 黄色く粘性の高い鼻水が治らず、起床時や就寝中にひどく咳込むようになったとして、2月下旬に外来を受診した木下航介くん(仮名、3歳)。普段から私が気管支喘息の治療を行っている患児で、熱性痙攣の既往がある。

 起床時や就寝中の咳は、鼻水が喉に流れる後鼻漏が原因と考えられた。症状から副鼻腔炎と診断し、当院で定めた痙攣性疾患に注意すべき薬剤に該当せず、痙攣性疾患の患児への使用経験が豊富なクラリシッド・ドライシロップ10%小児用(一般名クラリスロマイシン)を処方したが改善せず、1週間後に再受診した。

 喘息には、アレルギー性鼻炎が合併することが多い。航介くんは、クラリスロマイシンだけでは改善しなかったことや、スギ花粉が舞う時期に発症したことから、低年齢での発症が増えている花粉症(季節性のアレルギー性鼻炎)が合併していると判断。抗ヒスタミン薬のアレジオンドライシロップ(エピナスチン塩酸塩)を追加することにした。

 ここで気を付けたのが、抗ヒスタミン薬の選択だ。

 ヒスタミンは、アレルギー反応を引き起こすだけでなく、神経伝達物質として働き、痙攣を抑制する。そのため、血液脳関門の発達が未熟な小児が、脳内移行性の高い抗ヒスタミン薬を服用すると、痙攣が誘発される可能性があることが、近年、小児科領域で話題となっている。痙攣の既往歴や家族歴がある患児は、特に注意が必要とされることから、航介くんには、脳内移行性が低く、ドライシロップ製剤があるアレジオンを処方した。

 1週間後には、鼻水は減り、起床時や就寝中の咳もほとんどなくなっていたため、クラリスロマイシンを中止した。エピナスチンはスギ花粉の飛散量が減る5月ごろまで服用させる予定だ。(談)

吉原 重美氏
Yoshihara Shigemi
獨協医科大学医学部小児科学准教授。1983年獨協医大医学部卒。同大小児科学教室入局。助手、講師などを経て、米国カルフォルニア大学サンフランシスコ校に留学。2004年から現職。とちぎ子ども医療センターアレルギー・呼吸器疾患部門長を兼任。

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