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Interview
ネットでも対面でもOTC薬を安全に販売することが何よりも重要です
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

 今年1月、一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売を一律に禁じる厚生労働省の規制は違法であるとの判断を、最高裁判所が下した。原告の一社であるケンコーコムは即日、第1類・第2類のOTC薬のネット販売を再開した。厚労省が新たな規制の検討を始める中、日本オンラインドラッグ協会としての考え方などを、理事長でケンコーコムの代表取締役でもある後藤玄利氏に聞いた。 (聞き手は本誌編集長、橋本宗明。2013年1月30日収録)

1967年2月大分県生まれ。89年4月アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。94年5月うすき製薬取締役。同年11月ヘルシーネット(現ケンコーコム)を設立し、代表取締役就任。2000年に健康関連ECサイトを開始。06年7月日本オンラインドラッグ協会を設立し、理事長に就任。

─ネット販売に関して、薬局・薬剤師からは慎重論が多く聞かれます。

後藤 まず理解してもらいたいのは、安全性と利便性はトレードオフの関係ではないということです。ネット販売においても対面と同様に、何よりも重要なのは安全性を高めることです。利便性が高いネット販売が出てきたら安全性が損なわれるというのは誤解です。

 これまでの議論は対面かネットかに終始し、対面でできることがネットではできないからだめだというものでした。でも重要なのは、医薬品の副作用リスクをいかに低減するかです。そのために何が必要か、例えば専門家の販売への関与や、大量購入の防止など、リスク低減のための必要条件を挙げた上で、それを対面だったらどう満たしているのか、ネットだったらどう満たしていけるのかを議論していくべきです。それで、どうしても満たせないものがあるからだめというのなら分かりますが、対面の方がベターだからネットはだめというような切り捨て方はないはずです。対面販売、ネット販売というのは手段であって、目的はあくまでも安全性の向上だと思います。

─日本オンラインドラッグ協会のガイドラインには、これで本当に安全性を確保できるのかと疑問を感じる部分があります。例えば「情報提供を行う」とありますが、ネットでの情報提供は一方通行になりがちです。また、薬剤師への相談に関して電子メールなどの方法が記載されていましたが、電子メールで本当に薬剤師だと確認できるのでしょうか。

後藤 それらは一つひとつ議論しながら解決していくことだと思います。例えば、相手が本当に薬剤師かどうか分からないというのは、お店に行っても同じです。成り済ましはネットの世界でもリアルの世界でもあることで、それを防ぐにはしっかりと仕組みをつくっていくしかない。例えば厚労省が、この人は薬剤師であるとネット上で確認できるような仕組みをつくれば、成り済ましを防げるかもしれません。

─全国紙のインタビューで、OTC薬のネット販売業者を国が認定する制度の創設を提案されていました。

後藤 前提は副作用リスクを低減するために何が必要かということで、それを実現する手段として、例えばこういうことが考えられると示したものです。

─対面でできることがネットではできないと批判する声が多いですが、逆にネットだからこそできることもありますか。

後藤 例えば頻回購入の防止です。昨日買った人が今日も同じ商品を買ったというのは、ネットなら分かりますが、お店だと店員が違うと分かりません。とはいえ、対面ならこれができる、ネットならこれができると議論し始めると切りがありません。あくまでもリスク低減に何が必要かを考えることが大事です。

─ケンコーコムは既に第1類・第2類OTC薬のネット販売を再開しています。反響はありますか。

後藤 裁判ではネット販売の一律禁止が認められなかったのですから、基本的にネット販売が認められたと理解しています。そこで、当社としてきちんと安全策を講じた上で、ネット販売を開始しました。開始当初は、今まで待ちわびていたという患者さんの声が、1日10件程度寄せられました。慎重にすべきという声も数件ありましたが、ほとんどが薬局や専門家からのものです。

 現在、薬剤師は7人で、約4300アイテムを扱っています。売上高は、第1類が数%、第2類が6割、第3類が3割くらいで、市場とほぼ同じ比率です。

─第1類OTC薬のネット販売に、薬剤師の関与は必要とお考えですか。

後藤 もちろんです。専門家の関与は絶対に必要です。一方で、情報技術(IT)を活用すれば、効率化や安全性の確保ができる面もあるはずです。例えば、一つひとつの商品の販売時に禁忌事項のチェックをしっかりやるのは簡単ではないですが、ITを活用すれば効率的に行えるかもしれない。その医薬品をその人に提供すべきかどうかは、最終的には薬剤師が関与しなければなりませんが、それ以前の部分でITを活用して、効率化できるものは効率化していこうと考えています。

─ネット販売でも薬剤師の関与は必要だということですが、対面販売をしてきた薬剤師の中には、自分たちの仕事がコンピューターに奪われてしまうように感じている方もいます。

後藤 薬剤師は専門的な職能を持っているので、その付加価値をいかに発揮してもらうかです。付加価値の低い部分はITで効率化し、付加価値の高い業務に集中すべきであって、薬剤師が陳腐化した業務に安穏としているのは問題です。情報化がどんどん進み、消費者が医薬品の専門的な情報に簡単にアクセスできるようになっている中で、薬剤師はどういう付加価値を出していくかのを考えなければならないということだと思います。

─ITを効率化や安全性の確保に利用できるということに業界を挙げて取り組んでいけば、ネット販売に対する見方も変わってくると思います。頻回購入の問題にしても、ネット販売の業界全体でチェックができれば、対面販売とは全然違うことができると認められると思うのですが。

後藤 今後、日本オンラインドラッグ協会ではそういった研究もどんどんやっていきたいと思います。何しろこれまでネット販売は一律禁止だったので、検討のしようがありませんでした。これからそういうことを検討していくスタートラインにようやく立てたのだと思います。

─日本医師会から生活習慣病薬のスイッチOTC化に反対する声が出るなど、OTC薬の在り方が問われる中で、対面販売とネット販売の立場が対立の構図でいいのか疑問を感じます。

後藤 やろうとしているのはみんな同じで、安全性を高めた上でセルフメディケーションを推進して、国民全体の健康を向上させることだと思います。にもかかわらず対面神話みたいな議論があり、われわれが業界の足を引っ張っているという声があるのは残念です。

─そもそもOTC薬は、市場の縮小傾向が続くなど厳しい状況にあります。OTC薬市場をどうすれば活性化できるか。日本オンラインドラッグ協会としての考えをお聞かせください。

後藤 ネット販売か対面販売かを問わず、安全性と利便性の両方を高めていけば、OTC薬は消費者におのずと受け入れられるはずです。市場が活性化していないのは、その取り組みが足りないからだと思います。

 実際、ここ数年、業界全体で患者にひどい仕打ちをしてきたと思います。ネット販売でも3年半にわたって、「あなたは離島ではないので、第2類医薬品は売れません」ということをやってきました。そんなことを業界全体でやってきて、患者から信頼されるはずがありません。

 これまでのOTC薬をめぐる議論は、患者の視点が不在でした。患者目線で取り組み、欲しい薬が流通の中にない状況を一刻も早く解消すべきです。

インタビューを終えて

 最高裁の判決が下りた後も、厚労省が新しい規制の検討に着手するなど、ネット販売に対する慎重論は根強く存在します。後藤さんが口にした“対面神話”という言葉には、ネット販売の中でいかに安全性を確保しながらOTC薬を流通させていくべきかという前向きな議論になかなかならないもどかしさがにじんでいるようでした。関係者がセルフメディケーションの推進というテーマで議論してみれば、歩み寄れる部分が見えてくる気もするのですが、読者はいかにお考えでしょうか。(橋本)

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