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DI BOX/相互作用ノート
ビタミンKが関与する相互作用
日経DI2013年3月号

2013/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年3月号 No.185

 VKは脂溶性ビタミンの一種であり、基本構造としてナフトキノン骨格を有する。天然型VKとしては、3位の側鎖構造が異なるVK1(フィロキノン)とVK2(メナキノン類:MK-n)が存在し、VK2はイソプレン単位の違いによって、MK-4からMK-14に分類される(図1)。

図1 ビタミンKの化学構造式

 VK1は葉緑体で合成され、葉物野菜や植物油、豆類、海藻類に多く含まれる。人が摂取するVKの約9割は、食物由来のVK1である。一方、VK2は微生物によって産生される。例えば納豆菌はVK2(MK-7)を産生する。また、腸内細菌も主に長鎖MKを産生するが、その産生量は生体内の需要を満たすほど多くはないとされている。

 VKは生体内で、肝・骨・血管に存在するVK依存性蛋白質の凝固因子や、オステオカルシンおよびマトリックスGla蛋白質を活性化するγカルボキシラーゼの補酵素として働き、血液凝固や骨代謝調節、血管石灰化抑制などの作用を発揮する。また、近年、神経細胞機能の維持や脂質代謝調節、癌細胞の増殖抑制、アポトーシスの誘導といった多彩な生理作用に関与することも示されている。

 VKは、通常の食生活の下で欠乏することはまれであり、過剰摂取しても毒性がないことが報告されている。ただし、(1)腸内細菌によるVK産生の低下(抗菌薬の長期投与や腸内細菌叢が未熟な新生児など)、(2)胆道・胃腸障害(胆汁欠如、胆管瘻、閉塞性黄疸、小腸病変、慢性重症下痢など)によるVK吸収阻害、(3)肝障害(VK利用率低下)、(4)薬剤(ワルファリンカリウム[商品名ワーファリン他]、サリチル酸、抗菌薬など)の使用─などにおいては、VK欠乏のリスクが高くなる。中でも、新生児のVK欠乏は新生児メレナ(下血)や頭蓋内出血などを来し、致命的となり得る。

VKが関わる薬力学的相互作用

 VK製剤には、MK-4製剤のメナテトレノン(グラケー他;骨粗鬆症治療薬、ケイツー他;VK欠乏症予防・治療薬)や、VK1製剤のフィトナジオン(ケーワン他;VK欠乏症予防・治療薬)などがある。また、一部の経腸栄養剤や輸液用総合ビタミン剤もVKを含有する(表1)。

表1 ビタミンK(VK)が関与する相互作用

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 これらのVK含有医薬品が関わる相互作用として、臨床上問題となるのは、ワルファリンの抗凝固作用に拮抗することである。ワルファリンは、肝のVK代謝サイクルを阻害し、VKの再利用を抑制することで抗凝固作用を発揮するため、VKを含有する医薬品の併用や食品の摂取による効果減弱に注意を要する。また、骨粗鬆症に対するメナテトレノンの用量は45mg/日と極めて多い(成人の食事摂取基準は男性75μg/日、女性60~65μg/日)ため、ワルファリンとの併用は禁忌である。

吸収阻害に起因する相互作用

 VKは脂溶性ビタミンのため、消化管吸収には胆汁酸を必要とする。従って、VK含有医薬品と陰イオン交換樹脂(コレスチミド[コレバイン]、コレスチラミン[クエストラン])を併用すると、樹脂の胆汁酸吸着作用により、VKの消化管吸収が減弱する。特に陰イオン交換樹脂を長期にわたって単独投与する場合は、VKの補給を考慮する必要がある。

 また、抗菌薬の投与などによって腸内細菌叢が乱れると、VK供給量が減少する可能性がある。従って、抗菌薬の併用によるワルファリンの作用増強には注意が必要である。

CYP阻害・誘導に起因する相互作用

 細胞内のVK1は、主に肝CYP4F2によって水酸化された後、グルクロン酸抱合体となって排泄される(図2)。そのため、CYP4F2阻害薬(ケトコナゾール[内用薬は国内未発売]など)は、細胞内VK1濃度を上昇させる可能性があり、VK製剤の作用を増強させると考えられる。ただし、VK1の過剰摂取による毒性はほとんどないため、これらの併用は問題ないと考えられる。

図2 ビタミンK(VK)の体内動態と各薬剤の作用点

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 また、CYP4F2阻害による肝VK1濃度の上昇は、ワルファリンの作用を減弱させる恐れがある。実際、CYP4F2遺伝子の一塩基多型(SNP)により、VKの異化が抑制されて肝VK濃度が上昇し、ワルファリンの効果が減弱することが報告されている。ケトコナゾール以外のアゾール系薬のCYP4F2阻害効果は明らかでないが、アゾール系薬はCYP3A4/2C9阻害作用を持つため、CYP1A2/2C9/3A4で代謝されるワルファリンの作用を増強させる点に留意が必要である。

 一方、ロバスタチン(国内未発売)はCYP4F2誘導作用を有するため、肝VK1の異化を促進してワルファリンの作用を増強させる可能性がある。他のスタチン系薬のCYP4F2阻害効果は不明だが、シンバスタチン(リポバス他)、アトルバスタチンカルシウム(リピトール他)、フルバスタチンナトリウム(ローコール他)は、ワルファリン代謝を競合阻害して作用を増強させ得る。

 なお、CYP4F2には、アラキドン酸、エイコサノイド(LTB4など)、ビタミンE、フィンゴリモド塩酸塩(イムセラ、ジレニア)などの側鎖末端のメチル基を水酸化(ω水酸化)する作用もある。

 ちなみに、CYP3A4はVK過剰時に誘導されることから、VK異化過程にはCYP3A4も関与していると推察される(Thromb Haemost 2008;100:530-47.)。抗痙攣薬(フェニトイン[アレビアチン、ヒダントール他]、カルバマゼピン[テグレトール他])を服用中の母親から生まれた新生児では、頭蓋内出血のリスクが高くなることが知られているが、これは、抗痙攣薬が核内受容体のプレグナンX受容体(PXR)を活性化し、CYP3A4を誘導してVKの異化を促進するためと考えられる。

UBIAD1代謝が関与する相互作用

 細胞内でVKは補酵素として働くほか、PXRを活性化して標的遺伝子の転写を制御し、生理作用を発揮する。興味深いことに、人が食物から摂取するVKの大半はVK1である半面、生体内の多くの組織には主にMK-4が存在する。このことから、VKの作用は主にMK-4に起因し、また、MK-4はVK1から産生されると考えられる。

 VK1からMK-4が産生されるメカニズムは長らく不明だったが、近年、MK-4への変換反応を担う酵素として、UBIAD1(UbiA prenyltransferase containing 1)が発見された。ヒトのUBIAD1は、ほぼ全ての組織に存在し、VK1の側鎖を切断した後、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)存在下にプレニル基(C5)を導入してMK-4を合成する反応を触媒する。UBIAD1の阻害・誘導に関与する相互作用は未解明だが、酵素反応にはメバロン酸経路で生成されるGGPPを要することから、ビスホスホネート製剤やスタチン系薬がVK作用に影響を与える可能性がある。

相互作用を回避する服薬指導

 ワルファリンを服用中の患者では、VKとの相互作用に注意が必要である。ワルファリンと骨粗鬆症治療薬のメナテトレノン(グラケー他)との併用は禁忌である。また、VK含有食品である納豆やクロレラ、青汁の摂取は禁止し、緑黄色野菜の大量摂取も避けるよう指導する(ケース1)。

 一方、VK欠乏症を誘発し得る薬剤(陰イオン交換樹脂、抗菌薬、CYP4F2/3A4誘導薬)を併用する場合は、ワルファリンの作用増強や代謝への影響に留意し、皮下出血や歯肉出血、鼻出血、血尿、血便などの出血症状が現れた場合はすぐに相談するよう伝える。抗菌薬のうち、レボフロキサシン(クラビット)、アジスロマイシン(ジスロマック)などは、短期間でも高用量で投与されることがあるため、注意が必要である。スタチン系薬がCYP4F2誘導やUBIAD1阻害を介して、VKの作用に影響を与える可能性があることも念頭に置く(ケース2)。

 なお、日本人はVKが潜在的に欠乏しているといわれている。高齢者では欠乏症状が表れやすいことから、骨粗鬆症、動脈石灰化症(動脈硬化)、脳神経障害などが見られた場合は、VK欠乏の可能性も考慮する。

(ラララ薬局[山口県下関市]
田上忠行、杉山正康)

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