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調剤事故を防ぐ 機器の掃除&点検
日経DI2013年2月号

2013/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年2月号 No.184

 正確な調剤に不可欠な、調剤機器のメンテナンス。始業前の点検や始業後の掃除は、薬局の日常業務に組み込まれているはずだが、その方法は薬局ごとにばらつきが大きいのが実情だ。中には、調剤機器の掃除が行き届いていなかったり、点検の方法が間違っている薬局もあるという。

東京都薬剤師会の安部好弘氏は「調剤機器の毎日の掃除や点検は、調剤事故を防ぐために非常に重要。現状のやり方が正しいのか、もう一度確認してほしい」と話す。

 東京都薬剤師会(都薬)常務理事の安部好弘氏は、「調剤機器の掃除や点検の方法は、他の薬局と比較する機会がないため、どうしても自己流になりがちだ。管理が不十分な場合、知らないうちに多くの患者に誤った調剤を行ってしまう可能性も否定できない」と話す。

 こうした状況を受けて、安部氏は、自身が担当する都薬の衛生試験所で、調剤機器の正しい掃除や点検の方法に関して、会員向けに情報を発信している。これまで取り組んだのは、分包機の掃除と電子てんびんの点検など。いずれも大半の薬局にあり、ほぼ毎日使用する機器だ。掃除や点検を怠ると、思わぬ調剤事故につながりかねない点でも共通している。

 下記より、都薬の取り組みを中心に、分包機の掃除と電子てんびんの点検における注意点を見ていこう。

 毎日の調剤に欠かせない分包機。忙しい時は簡単に掃除して次の調剤に取りかかりがちだが、ここでの“手抜き”は、確実に次の分包への薬の混入(コンタミネーション)につながる。

掃除方法がコンタミに影響

 都薬の衛生試験所では、会員向けサービスとして、2009年から、希望した薬局に対して、分包機の使用によりコンタミネーションがどれくらい起きているかを調べている。この3年間で、288軒の薬局を対象に検査を行った。

 そこで明らかになったのは、コンタミネーションの程度は、同一薬局の同一機器であっても、調剤する薬剤師により大きく異なることだった(図1)。つまり、個々の薬剤師の掃除の方法が、分包時のコンタミネーションの程度に大きく影響していた。

図1 次の分包への残薬量の薬剤師ごとの違い

6人の薬剤師がそれぞれ、テオドールドライシロップを分包後に普段の掃除を行い、その後に重曹で洗浄し、重曹に含まれるテオフィリンの量を調べた。その結果、個々の薬剤師の掃除の方法の違いにより、コンタミネーションの程度が大きく異なった。

 調査の方法は、テオドールドライシロップ20%(一般名テオフィリン)10gを10包に分包した後に、いつも通り掃除(吸引や拭き取り)を実施。次に、ラインを洗浄する目的で、同じ分包機で重曹20gを10包に分包(1回目)。さらに、重曹10gを10包に分包(2回目)して、それぞれの重曹に含まれるテオフィリンの量を、高速液体クロマトグラフで定量した。

 これまでで残存量が最も大きかったのは1包当たり2.3mg。これは、掃除を全く行わずに分包していたためと、後日判明した。つまり、掃除を行わなければ、この程度のコンタミネーションが生じるわけだ。同薬の6カ月~1歳未満の常用量が3mg/kg/回であることを考えると、看過できない値だ。

東京都薬剤師会の森由子氏は、「掃除のやり方によってコンタミネーションの程度は大きく異なる。掃除を丁寧に行うことがいかに重要かを理解してほしい」と話す。

 都薬事務局長の森由子氏は、「分包後の掃除の程度によって、これだけの量が次の薬に混入することが分かり、非常に驚いた。分包後に丁寧に掃除を行うことがいかに重要かを理解してほしい」と話す。

 都薬では、調査に参加した薬局が、自分の薬局の掃除のレベルが全体の中でどれくらいなのかが分かるようにして結果をフィードバックしている。「この調査を機に、分包後の掃除の方法を見直す薬局が多い」(都薬衛生試験所試験科長の楜澤格子氏)のもうなずける。なお、分包機の機種や使用期間と掃除の効果との間には、関連は認められなかったという。

薬の経路を念入りに掃除

 では、分包機はどのように掃除するのが正しいのだろうか。

 調剤機器メーカー大手の高園産業で、関東一円の分包機を担当する小池哲郎氏は、「分包機の掃除のポイントは、薬が分包機の中をどのように通るかを理解し、その経路を掃除すること」と話す。

 調剤薬局で導入されていることが多い半自動タイプのVマス型の分包機を例に取って説明しよう。

写真1 分包機の掃除の様子

 分包するたびに行う掃除ではまず、機械の自動清掃機能を使う。その後、粉薬投入口(Vマス)部分や、錠剤の投入口の周辺を、分包機に内蔵されている掃除機で丁寧に吸引する(写真1-A)。

 忙しい調剤業務の中では大変かもしれないが、機械の自動清掃機能に加えて、手動吸引や拭き取りを加えると、掃除の効果は高まる。都薬の調査では、自動清掃機能に、吸引と拭き取りを加えると、コンタミネーションが10分の1以下に改善した例があった。

 特にコンタミネーションを避けたい色の濃い薬剤や、錠剤・カプセル剤を粉砕して苦味の強くなった薬剤、ハイリスク薬では、賦形剤を用いた掃除が有効だ(写真1-B)。賦形剤を、薬と同じように分包することで、それ以前に分包され分包機の中に残った薬が、賦形剤に混ざって排出される。これはよく知られた洗浄方法だ。

 洗浄用の賦形剤としては、乳糖、でんぷん、重曹(炭酸水素ナトリウム)などが使われるが、都薬の調査では重曹が最も洗浄効果が高かった。森氏は、「重曹で洗う場合は、使用する量も重要だ。薬が通った部分全てに重曹が触れるように、重曹を多めに使用すると、洗浄効果が高まる」と話す。

業務終了後は拭き取り掃除

 1日の業務が終了した後も、分包機を掃除したい。Vマス部や散薬分割器など、分薬が通る経路を1つずつ丁寧に掃除機で吸引する(写真1-C)。さらに、各部を乾いた布か水でぬらして固く絞った布で拭き取る(写真1-D)。

 帝京大学薬学部教授でファーミック(東京都国立市)専務取締役の下平秀夫氏は、「ドライシロップが湿気でベタベタになると、散薬分割器の底板がスムーズに開かなくなる。すると、粉薬がうまく下に落ちず、分包される粉が減ったり、極端な場合は空包になってしまう」と注意を促す。

ファーミックの下平秀夫氏は「分包機の故障の大半は掃除不足が原因。普段から気を付けるようにしたい」と話す。

 分割器の中に残った粉薬は、自動清掃機能を使った際に吸われてなくなり、気が付きにくい。

 そのほか、漏斗状のホッパー部は、必ず取り外して掃除したい(写真1-E)。「粉薬が湿気により付着することを繰り返して、ホッパー部の内側で粉が層になっているような例も過去にあった」(小池氏)。ドライシロップなど吸湿性の高い薬を多く扱っている薬局では、頻繁に掃除する方がよい。

 ホッパー部は、乾いた布か、水でぬらして固く絞った布で拭き取る。汚れがひどい場合は、お湯でぬらした布で拭くとよく取れる。

 熱で薬包紙を圧着させるためのゴムやヒーターの部分も、専用のブラシで掃除する。その際、ヒーター部分でやけどしないように注意する。円盤型の分包機では、円盤部分にあるクリーナーや薬のかき取り部分などを分解して掃除する。

 週末や連休前の掃除では、普段の掃除を念入りに行うと同時に、説明書を見ながら、水洗い可能な部品を取り外して、ぬるま湯で洗うとよい(写真1-F)。ばねが付いている部分など、洗ってはいけない部品があるので、必ず取り扱い説明書で確認してから洗うようにする。

フィルター交換で残存が1/20に

 掃除の際に意外に見落とされがちなのが、分包機に内蔵されている掃除機のフィルターだ(写真2は分包機に内蔵されている集塵フィルターの一例、写真3は分包機に内蔵されている掃除機のフィルターの一例)。

写真2 分包機に内蔵されている集塵フィルター

使用するにつれ、右の写真のように粉がたまるので、定期的に掃除・交換する必要がある。

写真3 分包機に内蔵されている掃除機のフィルター

フィルターに粉がたまると、吸引力が低下し、清掃効果が落ちる。また、フィルターが破れていると吸引するたびに薬をばら撒く恐れもある。

 すみれ分包機取締役営業部長の岡崎晃彦氏は、「フィルターに粉がたまったり、ほこりが付着していると、吸引力が低下し、掃除の効果が落ちる。また、フィルターが破れていると、吸引するたびに薬の粉がまき散らされたり、分包機の故障の原因になる」と話す。

 狭い調剤室でこのようなことが起こると、中で働く薬剤師の薬剤アレルギーにつながる可能性もあるので、注意が必要だ。都薬の調査では、自動掃除機のフィルターの交換前後で、コンタミネーションが20分の1に改善する事例があった。

 フィルターの構造や掃除の仕方は、メーカーによって多少異なるが、掃除の際には、集塵フィルターと掃除機のフィルターの2つを取り外し、分包機に内蔵されているものとは別の掃除機で、たまった粉を吸引する。内蔵掃除機だと、吸った粉がまた同じフィルターにたまるからだ。フィルターは、粉や塵がいっぱいになるまで待たずに、早めに掃除や交換を行うようにしたい。

 分包機の取り扱い説明書には掃除の仕方が詳しく書かれている。高園産業では、現場で使いやすいように、分包機の機種ごとに、掃除のポイントを簡単にまとめたクイックマニュアルを作成している。

 都薬では、会員薬局のうち約4300軒の電子てんびんを、年に1度、専属の計量士が検査している。大内英夫氏と田中正憲氏の2人が、それぞれ1日平均15~16軒の薬局を訪問し、11年度は7305台を検査した。

東京都薬剤師会の計量士の大内英夫氏(左)と田中正憲氏は、会員薬局を訪問して、電子てんびんの検査と会員へのアドバイスを行っている。

 大内氏がまずチェックするのが、置き場所と置き方。電子てんびんは、周りに物がなく、安定していて、空調や集塵機などからの風が当たらない場所に置くのが鉄則だ。測定時に、てんびんを置いた台が動いたり、風が直接当たると、それだけで値が不安定になる。

 置き方で特に注意すべきなのが、電子てんびんを水平に置くこと。当たり前のようで、実はできていない薬局が多い。水平が保たれていないと正しく計量できない(写真4)。電子てんびんに付いている水準器の水泡が円の中心にくるように置くのがポイントだ。

写真4 電子てんびんが傾いているときと水平のときの表示の変化(20gの分銅を置いた場合)

てんびんが水平になっていないと、20gの分銅を置いても正しく量ることができない。水準器の水泡が円の中心になるように、てんびんの足を調整すると、水平が保たれ、正確に量ることができる。

 電子てんびんは、使っているうちに水平でなくなってくるので、必ず毎朝チェックするようにしたい。特に4本足は、3本足より安定しにくく、1日2回以上は点検したい。調剤室が狭く、使用する際に動かして使っている薬局があるが、動かすことにより水平が保てなくなることがあるため、できれば動かさないで済む場所に置くようにする。

受け皿のがたつきが多い

 次に確認すべきなのが受け皿のがたつき。主な原因は、受け皿の下のねじが緩んでいることだ(写真5)。

写真5 電子てんびんの受け皿の下のねじを締めている様子

受け皿の下のねじは使っているうちに緩むので、定期的に締める必要がある。ねじは10円玉を使って固く締める。

 受け皿の下のねじは使っているうちに緩むので、定期的に締める必要がある。11年度に検査した電子てんびん7305台のうち、検査時に調整が必要だったのは681台に上る(故障を除く)。その約半数の319台で、受け皿の下のねじを締める必要があった。

 ねじが金属製の場合、10円玉を使って固く締める。プラスチック製の場合は、折れやすいので手で締める。プラスチック製のねじは緩みやすいので、頻繁に確認するようにしたい。また、受け皿の下は、薬剤がこびりついていることがあるので、拭き取りも行いたい。

始業点検では分銅を用いる

 始業時には分銅による点検を行う。まず、電子てんびんを置く場所や置き方を再確認し、電源を入れて機器が安定するまで数分待ってから、表示が「0.0」になっていることを確認する。次に、分銅を用いて正しい重さが表示されるかを確認する。分銅を受け皿の中央に置いて、表示される値が、許容誤差の範囲内であれば合格と考える(表1)。

表1 電子てんびんの許容誤差(2010年9月以降に製造されたものの場合、計量法による)

例えば、20gの分銅を10mgレンジ表示の電子てんびんに載せた場合、表示が19.99~20.01gの範囲であれば、許容誤差の範囲内にあるため、検査では合格となる。

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 誤差の範囲内に収まらない場合は、校正(キャリブレーション)を行う。大内氏らの検査時に調整が必要だった681台のうち、341台は校正で直すことができた。校正機能がない場合や、校正しても正しい重さが表示されない場合は、故障している可能性が高いので、修理に出すようにしたい。

 また、電子てんびんの受け皿に誤って薬瓶を落としたときなども、電子てんびんが正確に機能しているか再点検したい。この場合、分銅を前後左右に動かしてみて(写真6)、一部だけ極端に大きな値が表示されれば、壊れている可能性が高い。

写真6 分銅を使った電子てんびんの点検の様子

零点を確認後、分銅を前後左右に動かし、表示される値がいずれも誤差の範囲内であれば合格と考える。

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 分銅は、1500~3000円程度なので、なければ購入しておこう。大内氏は、「まずは10gを1つ、余裕があれば100gと200gも1つずつ購入するといいだろう」とアドバイスする。

表示の単位にも注意

 電子てんびんには、g(グラム)単位だけでなく、真珠を量る匁(もんめ:Mon)や、宝石を量るカラット(ct)の単位でも重さを表示できるものがある。こうした電子てんびんでは、表示単位を間違うと調剤事故につながるため、注意が必要だ。

 例えば、1匁は3.75gに相当するので、表示単位を誤って匁にして薬の重さを測ると、3.75倍の量を調剤してしまうことになる。実際、2007年に川崎市で、小児3人に対し、タミフルドライシロップ(オセルタミビルリン酸塩)を3.75倍量で調剤した事故が起きた。

 誤ってボタンを押し、いつの間にか表示が変わる恐れもある。匁やカラットで表示できないように設定できる機種も多いので、取り扱い説明書を参考に、設定をし直しておこう。

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