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不正受験問題で問われる登録販売者資格の価値
日経DI2013年2月号

2013/02/10
坂口裕一

日経ドラッグインフォメーション 2013年2月号 No.184

 昨年、一般用医薬品(OTC薬)の販売資格である「登録販売者」試験で、大手スーパーの西友が、受験資格として必要とされる実務経験を満たしていない従業員らに、虚偽の実務経験証明書を発行していたことが発覚した。

 不正は登録販売者試験が初めて実施された2008年まで遡り、実務経験証明書を発行した352人中、なんと282人が要件を満たしていなかったらしい。その中には試験に合格し、OTC薬を販売していた者もいた。試験を実施した東京都などの関係自治体は調査の上、合格を取り消す方針だという。

 この事件を知って筆者がまず思ったのは、虚偽の実務経験証明書の発行がなぜバレたのか、ということだ。登録販売者の実務経験とは「1カ月に80時間以上、1年間連続して一般用医薬品の販売等の業務に従事すること」とされている。だがその証明は自己申告制であり、第三者評価ではない。組織ぐるみで改竄を行えば基本的にバレないし、証拠も残らない。今回の事件が発覚したのは、おそらくは内部告発によるものだろう。

 誰もが予想していると思うが、今回の件は氷山の一角であろう。登録販売者の数は既に10万人を超えていると聞くが、そのうち受験資格を正しく満たしていた者が果たして何人いることか。調査しても、きっと全部は洗い出せないだろう。心当たりのある企業は、既に内部告発潰しを念入りに済ませたはずだ。

 行政が、登録販売者の受験資格に実務経験を求めたこと自体は、間違っていない。登録販売者の資格は高卒、いや中卒(中卒は実務経験4年)でも取得できる。学歴は不問としたも同然であり、それならせめて実務経験を求めたいということだったのだろう。

 だが導入後、不正受験者が少なからず混じっていることに行政も気づいたらしい。そのためか、12年度から外部研修制度が導入された。これは、登録販売者に毎年12時間の外部研修を義務付けたものである。これで一定の質を確保しようという狙いだろうが、この外部研修にまで反対意見を呈し、参加を拒否しようとする企業や登録販売者がいるという噂を聞いた。その言い分はというと、外部研修など受けなくても内部研修や自己学習で十分とのことらしい。また「やったふり」で済ませる魂胆かと、疑いたくなってしまう。

 この際、行政はもう一度、薬事法を改正し直すべきではないか。不正受験者が混じった資格になど価値はない。いっそのこと、登録販売者の資格の廃止も検討してはどうか。

 ところで筆者は以前、知り合いの医師にこう言われたことがある。「OTC薬の添付文書などに『薬剤師に相談』ならともかく、『医師に相談してください』と記載されるのは迷惑である」と。なぜなら、医療用医薬品に関しては各方面から情報提供があるが、OTC薬に関してはそれがほとんどない。医師に断りもなしに勝手に販売される薬など知るか、とのことだった。

 暴論のようだが、考えてみればセルフメディケーションとは自分で健康管理を行う、いわば自己責任の医療である。自分で判断が難しい医薬品なら専門家の助言が必要だが、それ以外は自己責任、あるいはメーカーに責任を取ってもらえばよい。

 提案として、特に注意を要する第1類、指定第2類に属するOTC薬は薬剤師だけが取り扱い、それ以外は無資格でも販売できるように薬事法を改正するというのも1つの方法だと筆者は考える。案外問題ないのではないか。そもそも、今お店にいる登録販売者たちだって、不正受験で合格した、厳密には無資格者かもしれないのだから。 (みち)

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