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OTCセレクトガイド
日経DI2013年2月号

2013/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年2月号 No.184

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 痔は、肛門周囲の静脈がなんらかの刺激で圧迫されて血流が滞り、炎症や潰瘍、静脈瘤、膿瘍などを合併する疾患である。

 痔は、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろうの大きく3つに分けられる。痔核は直腸肛門部にある静脈叢に、排便時のいきみや便秘などで負担が掛かり、うっ血して膨らみ瘤状となったものである。肛門の歯状線より内側を内痔核、外側を外痔核と呼ぶ。

 痔核で最も多いのは内痔核であり、知覚神経のない肛門の内側にできるため、痛みは少ないが排便時に瘤が破れ出血がみられる。

 内痔核は、排便時に脱肛して、早期であれば中に戻るが、悪化すると指で押し込んでも戻らなくなる。このような内痔核や、大量の出血および炎症がひどい外痔核では、外科手術が必要となる。

 裂肛は、便秘による硬い便や繰り返す下痢などで、歯状線下部の上皮が切れた状態を指す。肛門上皮には知覚神経があるため排便時に激しい痛みを感じるが、出血量は多くはない。

 裂肛を繰り返すと、傷が深くなって肛門潰瘍ができ、傷口の皮膚が厚みを増して、いぼになる。進行すると、むずむずした掻痒感をもたらす。

 痔ろうは、歯状線の奥にある肛門陰窩が細菌感染で化膿し、肛門周囲膿瘍となり、膿が出た後、その空洞が再度感染して悪化していく状態である。患部が腫れたり、高熱が出ることもある。

 OTC薬の適応となるのは、軽度の痔核、裂肛の痛み、出血、腫れ、痒みである。

この成分に注目

抗炎症成分

 ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステルなど。これらのステロイドは、血管収縮、血管透過性抑制作用を持ち、出血、炎症、痒みを抑える。患部が化膿している場合は、ステロイドで悪化することがあるので、使用を避ける。

抗ヒスタミン成分

 ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩など。抗ヒスタミン作用により、炎症を抑えるほか、痒みや腫れも抑える。クロタミトンは、熱感刺激を与え、痒みを抑える。

局所麻酔成分

 アミノ安息香酸エチル、リドカイン、ジブカイン塩酸塩など。知覚神経を麻痺させ、痛みや痒みを抑える。

血管収縮成分

 テトラヒドロゾリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩など。交感神経刺激作用による血管収縮作用により出血、充血を抑える。

血管強化成分

 カルバゾクロムは、毛細血管の透過性亢進を抑制、血管抵抗性を増強することで止血する。

収れん成分

 酸化亜鉛は、皮膚の蛋白質と結合して、収れん、止血作用を呈す。タンニン酸は、白血球湿潤抑制作用、蛋白質変成作用により、粘膜やびらんにおける収れん作用を示す。

殺菌成分

 アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、ベンザルコニウム塩化物、イソプロピルメチルフェノールなど。殺菌作用で、患部の感染を予防する。

サルファ剤

 スルフィソミジンは、細菌のDNA合成を阻害し、抗菌作用を示す。真菌やウイルスには無効である。

創傷治癒促進成分

 アラントインは、皮膚組織および粘膜修復作用があり、患部の治癒を促進する。

清涼成分

 l-メントールは、清涼感による局所刺激により、掻痒感を抑制する。

末梢循環改善成分

 トコフェロール酢酸エステルは、末梢循環の血流改善により、患部の治癒を促進する。

漢方薬

 乙字湯、大黄牡丹皮湯など。乙字湯は、トウキ、サイコ、オウゴン、カンゾウ、ショウマ、ダイオウを配合。うっ血を取り、炎症を抑えるほか、硬い便を軟らかくする作用を持つ。

製品セレクト

 痔の患者向けのOTC薬には、軟膏やスプレーの外用薬、坐薬のほか、便の硬さなどを改善して皮膚の修復を早める内服薬がある。患部の位置によって、外用薬か坐薬かを選択する。

 ステロイド入りの軟膏で薦めたいのが、メンソレータムリシーナ注入軟膏A(ロート製薬)である。

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 出血や炎症を抑える酢酸ヒドロコルチゾン、局所麻酔作用のあるアミノ安息香酸エチルとリドカインのほか、酸化亜鉛、l-メントール、イソプロピルメチルフェノール、アラントイン、酢酸トコフェロールが配合されている。

 患部が肛門の外側、内側にかかわらず使えるのも特徴である。外側であれば、キャップを外し容器を押すと軟膏が出てくるため、そのまま塗布する。内側であれば容器のノズル部分を肛門に挿入して、薬剤を注入する。挿入した場合は、衛生上、中身が残っていても容器ごと捨てるよう伝える。

 パッケージが明るいオレンジ色で、女性が買いやすい。1箱8個入りで、個別包装はアルミパッケージで一見痔の薬には見えにくいため、携帯に便利である。15歳以上で使用でき、外側に塗布する場合は適量を1日3回、内側に注入する場合は1日2回までとなっている。

 外用薬を使うことに抵抗がある患者には、内服薬を薦めるとよい。

 プリザ漢方内服薬(大正製薬)は、乙字湯エキスを配合している。便秘の原因となる硬い便を軟らかくする効果もある。医療用医薬品の乙字湯と成分量を比較すると、ダイオウ以外は、ほぼ半量となっている。

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 効能は、体力が中程度以上で、便が硬く、便秘傾向がある痔核、裂肛および便秘である。また、骨盤底筋群の緊張を高めて脱肛した痔核の戻りをよくするため、軽度の脱肛にもよい。患部が肛門より少し奥の方にあり、外用薬が使いづらい場合にも向く。

 ダイオウを配合しているため、妊婦の服用は避ける。また、胃腸が弱い人も避ける。

 剤形は細粒だが、粒子が細かく苦みはほとんどないので飲みやすい。生後3カ月以上の小児から服用可能。1日3回食前または食間に服用する。

 患部に触れないで治療したいという患者には、スプレータイプのサラシュット(第一三共ヘルスケア)を薦めるとよいだろう。

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 軟膏が微粒子となりスプレーされるので、液だれしにくく、患部に付着する。

 局所麻酔作用で痒みや痛みを抑えるジブカイン、抗炎症作用のプレドニゾロン酢酸エステル、殺菌消毒作用のべンザルコニウム塩化物を配合している。

 手のひらサイズのボトルで、外出先でも使いやすい。逆さま、横向きでもスプレーできる。

 使い始めはノズル部分にティッシュペーパーなどを当てて、薬剤が出るまで空打ちする。押す力が弱かったり、押すのがゆっくり過ぎると噴射の勢いが弱まり、液だれすることもあるので注意したい。患部からノズルを3~5cm離して1日1~3回、1回に1~2噴霧する。使用後はノズル周りをティッシュペーパーなどで拭いて清潔に保つ。

 小児にも使えるが、保護者の監督の下で使用させる。

こんな製品も

 肛門の患部にしっかりとどまる坐薬では、(a)プリザエース坐剤T(大正製薬)を薦める。抗炎症作用のヒドロコルチゾン酢酸エステル、塩酸テトラヒドロゾリン、トコフェロール酢酸エステル、痛みや痒みを抑えるリドカイン、l-メントールのほか、患部の細菌感染を抑えるクロルヘキシジン塩酸塩が含まれる。

 15歳以上で使用でき、1回1個を1日1~3回肛門内に挿入する。

 患部の痛みや炎症が強い場合、軟膏や坐薬はステロイドを配合したものを選ぶのが望ましいが、症状が緩和された後には、ステロイド入りでないものに切り替えて、連用は避ける。

 ステロイドを含まない外用薬では、(b)ボラギノールM軟膏(武田薬品工業)がよい。抗炎症作用のグリチルレチン酸、鎮痛作用のあるリドカインのほか、皮膚組織修復作用のあるアラントイン、ビタミンE酢酸エステルが含まれる。滑りのよい軟膏で、油脂性基剤が患部を保護する。

 なお、ステロイドを含まない外用薬のうち、痒みが強い患者には、クロルフェニラミンマレイン酸塩やl-メントール、塩酸リドカインを配合したプリザクールジェル(大正製薬)がある。塗った後の清涼感が特徴である。

 痔になる背景には、便秘や便の硬さが関係していることが多い。そこで、整腸剤も薦めるとよいだろう。

 (c)ザ・ガードコーワ整腸錠PC(興和)は、パントテン酸カルシウムが腸の善玉菌の発育を促し、生菌の納豆菌、乳酸菌により腸内環境を整える。また、ジメチルポリシロキサンにより腸内のガスの発生を抑える。生菌を胃酸から守るための制酸薬が含まれるが、健胃生薬と胃粘膜修復薬も配合されているので、胃の調子が悪い患者にもよい。納豆菌が配合されているため、ワルファリンを服用している人は使用を避ける。

 また、小児の患者では、直腸付近で硬くなった便を出しやすくするために浣腸を薦める。(d)イチジク浣腸20(イチジク製薬)は、グリセリンを10g含む。6歳から11歳が対象で、1回1個を直腸内に注入し、効果が見られない場合はもう1個注入するが、1時間空けた方が効果的である。挿入後は、できれば3~10分程度、便意が強まるまで待って排便する。使用時はノズルをまっすぐに入れて、無理な挿入は避けるよう保護者に伝える。

 医薬品ではないが、入浴剤は血行を良くして患部や皮膚組織の修復を早めるので、併せて薦めるとよい。(e)薬用バブメディケイテッド(花王)は、通常のバブよりも高濃度の炭酸ガスを発生させる。

 一方、(f)泡サニーナ(花王)は、排便時に使うトイレットペーパーにスプレーして泡が消える前に汚れを拭き取る薬用清浄剤である。拭き取る際に痛みを感じるという患者に薦めるとよい。消炎や消毒作用のあるグアイアズレン、塩化ベンザルコニウムを配合している。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 痔の症状が長引いたり、繰り返すようであれば、他の疾患の可能性を否定できないため、すぐに大腸肛門科の受診を促す。例として、排便時の無痛出血は下部消化管、黒色便は上部消化管の異常で、大腸癌やクローン病などが疑われる。また、肛門部の疼痛は癌の可能性、脱肛は直腸脱やポリープの可能性もある。

 また、患部から膿が出るといった症状が続くようであれば、感染性のためステロイドの使用を避け、受診を促す。 外科手術が必要な痔ろうは、OTC薬の適応ではないため、腫れた患部を冷やして、早めの受診を促す。

その他

 痔は、座り仕事が長い人だけでなく、便秘しやすい人、妊婦や授乳婦にも多くみられる。

 小児では、便意を我慢したり忘れることによる便秘で裂肛しやすい。この痛みでさらに排便を我慢し、便秘が悪化することがある。日ごろから便意を意識した排便習慣を付けるよう、保護者に伝えるとよい。

 痔の原因には、便秘のほか、排便時のいきみが長いなど肛門に負担が掛かったり、冷えによる血行不良、喫煙、アルコールや刺激物の過剰摂取なども挙げられる。こうした生活習慣を改善するよう指導することも重要である。

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