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特集:調査・お仕事編
調査・お仕事編
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

 薬局薬剤師の業務そのものに対する医師の認知度は、直接的な関わりが少ない割には高かった。薬局薬剤師の主な業務を提示し、内容をどの程度知っているかを医師に尋ねたところ、「お薬手帳による患者への情報提供」の認知度が最も高く、「服薬指導」「薬剤服用歴(薬歴)の管理・記録」が続いた(Q6-1)。

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 医師は薬局薬剤師のことを、「薬について患者に説明する」役割として見ている傾向がうかがえる。実際、医師と患者との“橋渡し役”として、薬剤師に期待する声が幾つも挙がった。

Dr. コミュニケーションを取るのがとても上手な薬剤師が、患者が医師の前では言わないことも聞き出してくれる。患者の家族関係や置かれている状況など、必要に応じてフィードバックしてくれて、とても役立っている。(50代女性、開業医、耳鼻咽喉科)

Dr. 患者の立場に寄り添い、薬の専門家として医師に意見やアドバイスをしてほしい。(60代男性、開業医、小児科・リハビリ科)

Dr. 服薬コンプライアンスを高めるよう、患者へ薬の説明をするとともに、薬に対する不安や疑問を聞き出して、医師に伝えてほしい。(40代男性、勤務医、リウマチ科・循環器内科)

 注目すべきは、薬局薬剤師の業務として「お薬手帳による患者への情報提供」がトップだった点。しかも、外来患者のお薬手帳の確認状況を尋ねたところ、「全ての患者に見せてもらう」「だいたい見せてもらう」で半数を超えた(Q7)。薬剤師が患者の処方薬情報を把握するツールとしてだけでなく、医師と薬剤師が円滑に情報交換する上でも、お薬手帳は有用な“武器”になりそうだ。

 Q6-1で、医師の認知度が比較的低かった薬剤師の業務にも目を向けてみよう。今回の調査で挙げた業務の中では、「患者に適した剤形や一包化の提案」「服薬コンプライアンスのチェック」「在宅患者訪問薬剤管理指導」について、4分の1以上の医師が「あまり知らない」「ほとんど知らない」と回答した。逆にこれらの業務は、今後、医師を含む医療チームにおいて、薬局薬剤師が存在感を発揮する“伸びしろ”といえるのかもしれない。

悩ましい「副作用」「後発品」の説明

 一方、薬剤師の業務に対する医師の認知度について、薬剤師自身がどう思っているかを尋ねた結果、「処方箋内容の鑑査」「他科受診歴や併用薬のチェック」が上位に来た。薬剤師は自らの職能を“鑑査役”として位置付けている傾向がうかがえる(Q6-2)。

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 実際、“薬のプロフェッショナル”として、薬局薬剤師の丁寧で正確な仕事ぶりを評価する医師の声も多かった。

Dr. 他科からの処方薬と重複する処方をしてしまったが、薬剤師から注意を受けて助けられたことが何度かある。(50代男性、開業医、眼科)

Dr. 処方ミスや併用注意などを指摘してくれる。患者が希望した薬が他院で重複投与されていた時に、「犯罪に使われる可能性がある」と薬局から連絡を受けたこともある。(50代男性、勤務医、内科・心臓血管外科)

Dr. ニューキノロン系の内服薬を処方した時に、牛乳や下剤と飲み合わせが悪いことを紙に印刷して渡してくれた。(50代男性、勤務医、呼吸器内科・循環器科)

Dr. ある薬で患者に薬疹が出た時、系統は違うが同等の効果が認められる他の薬を提案してくれた。(30代女性、勤務医、皮膚科・循環器科)

 だが、薬局薬剤師が業務として行っていることが、必ずしも医師に好意的に受け止められているとは限らない─調査では、そんなジレンマも浮き彫りになった。薬局薬剤師の業務や態度に関する不満を自由回答で尋ねたところ、特に患者への薬剤情報の提供に関するエピソードが目立ったのだ。

Dr. 患者さんに不安を与えるような注意や副作用の説明。例えば、車の運転注意となっている薬剤が処方され、薬局で「運転してはいけません」と説明されたために、患者さんが薬を飲まなくなったことがある。(50代男性、開業医、泌尿器科)

Dr. 妊婦に処方した薬について、わが国では一般的な処方内容であるにもかかわらず、米食品医薬品局(FDA)の指針を基にネガティブな意見を言われたため、患者が混乱した。(50代女性、勤務医、産婦人科・内科)

Dr. スタチン系薬の処方に際して、筋肉痛などの副作用を強調し過ぎて、もともと不安神経症のある患者の不安をあおり、治療に差し支えたことがある。(60代女性、勤務医、心臓血管外科・循環器科)

 「薬剤師が教科書や添付文書で知識を身に付けるほど、患者との知識レベルの差は広がってしまう。薬剤師にはその差を埋めるだけのコミュニケーション能力に欠ける傾向があることが、医師から“杓子定規の服薬指導”と批判される一因ではないか」とみるのは、吸入指導に力を入れるバンビー薬局一番町店(東京都千代田区)管理薬剤師の黒木宏隆氏。

 調査では、後発医薬品への変更に関しても、情報不足や薬局の取り組みに対する誤解が、医師の不満につながっているとみられる意見も多かった。

Dr. 患者の自己負担金が安くなること以外で後発品が先発品よりも優れているように印象付けたり、配合されている成分が異なるのに全く同じ薬であるというような説明はしないでほしい。(40代男性、勤務医、消化器内科・循環器科)

Dr. 患者に同意を取って勝手に後発品に変え、その後の連絡も一切なかった。患者に「先生に言っておいて」と伝えたようだが、患者も言い忘れており、2カ月間、自分が処方した薬ではない物を患者が服用していたことに気づかなかった。(40代女性、開業医、内科・消化器外科)

Dr. 後発品に変更するのはよいが、その時々で仕入れ値の安い物を出しているようで、いつも違う後発品が出されるのはどうかと思う。(40代女性、開業医、小児科・循環器科)

 これについて浅草薬剤師会会長でみどり薬局(東京都台東区)管理薬剤師の坂口眞弓氏は、「後発品の使用では医師の考え方を尊重しているが、例えば嚥下機能が低下した患者にはOD錠やゼリー状の後発品を提案したり、錠剤が大きく粉砕不可の配合薬の場合は、2種類の後発品の組み合わせを提案したりするなど、薬剤師として後発品の付加価値を見いだせる場合は、積極的に薦めている」と話す。

医療人としての意識改革に期待

 薬局薬剤師に対する不満と期待の両方において、業務内容ではなく、むしろ業務への取り組み方や医療従事者としての意識を問う医師の声が多かったことにも注目したい。

Dr. 薬剤師にはプライドを持って仕事をしてほしい。雇われの身であれば、なかなか思う通りにはいかないだろうが、経営より患者のことを第一に考えてほしい。(40代男性、開業医、皮膚科・リウマチ科)

Dr. 医療者として、指示待ちではなく、もっと積極的に多職種連携の一翼を担ってほしいと思う。そのためにも責任を取る覚悟で臨んでほしい。(50代男性、開業医、内科・リハビリ科)

Dr. 遠慮しないで医師にもっと問い合わせしてほしいし、勉強もしてほしい。患者の生活に踏み込んだ服薬指導をするなど、生活管理をする上でチームの一員になってほしい。(50代男性、開業医、小児科・リウマチ科)

 半蔵門病院(東京都千代田区)副院長でアレルギー呼吸器内科医師の灰田美知子氏は、「患者にとって最良の医療を追求したとき、医師は自分一人で実現できることに限界があると気づき、薬局薬剤師にも力になってもらいたいと思う。だから薬剤師には、医療チームの一員として、日ごろから自分の仕事にプライドと責任感を持ち、努力をいとわないでほしい」とエールを送る。

 ともすると薬局薬剤師は、医師との関わりにおいて受け身で控えめになりがち。だが医師が薬局薬剤師に本当に求めているのは、「国民の健康な生活を確保する」という共通の任務を全うするための、医療人としての自立した姿勢だ。冒頭で紹介した、医師にとって頼りになる薬局薬剤師の人数が数年後にどうなっているか。薬局薬剤師の真価が今、問われている。

薬剤師

「駆け込み寺」としての薬局の役割も見直すべき

地域における医療連携を目指す
坂口 眞弓氏
(みどり薬局[東京都台東区]管理薬剤師)

 浅草薬剤師会では、以前から医師会や歯科医師会との連携を図っており、顔を合わせてざっくばらんに情報交換する場を積極的に設けてきた。顔の見える関係性を築くことで、互いに助け合う姿勢も生まれる。実際、私が調剤ミスをしてしまい落ち込んだ際に、当事者ではない診療所の医師が励ましてくれたり、二次的なクレームを引き起こさないための患者対応のポイントを教えてくれたりして、助けられたことがある。

 従来、薬局は健康相談を受け付けたり、患者に適したOTC薬を提案したり受診勧奨を行ったりするなど、一般市民の健康に関する“駆け込み寺”のような存在だった。現在は調剤に重点が置かれる向きがあるが、昔ながらの薬局も見直されていいと思う。OTC薬の選択ではまず、患者さんとの会話から情報収集を行うことがカギとなるが、これこそ薬局薬剤師の醍醐味ではないだろうか。

 セルフメディケーションの推進が叫ばれているものの、実現できていないのが現状だ。「薬剤師なんかに任せられない」という医師の反発も少なからずあるが、患者が最初にアクセスする場所として、生活習慣の改善を指導したり、緊急性によって受診を勧めたりするなど、貢献できる部分は大きいはずだ。もちろん薬局薬剤師には、それを判断するだけの臨床能力を身に付けることが求められる。(談)

医師

患者の安心を確保するためなら、院内処方も辞さない

新病院で院内処方と院外処方の選択性を打ち出した
星 北斗氏
(星総合病院[福島県郡山市]理事長、医師)

 私は、2013年1月に移転し診療を開始する新病院で、外来患者が院内処方と院外処方のいずれかを選択できる仕組みを導入することを決めた。

 分業率は70%近くにまで上がったが、そろそろ頭打ちだ。医療費抑制につながり、飲み合わせなどのチェック機能が働くといった、医薬分業のメリットとして語られてきたことは、蓋を開けてみたら全く実現できていない。理想とされた面分業は“絵に描いた餅”だったのだ。むしろ利便性や金銭的負担で、患者にデメリットをもたらしている。

 それでも私は何とか歩み寄ろうと、病院と薬局の合同勉強会を開いたり、病院の採用医薬品の情報を薬局に提供したりしてきた。

 だが、最近の薬局、特に大手薬局チェーンのやり方は目に余る。「調剤してやるから、余計なことは言うな」という態度だ。

 さらに、一般名処方によって、薬価差益がより大きい後発品に薬局の裁量で変更できるようになった。かつて病医院をあれほど悪者にした薬価差益で、薬局はもうけようとしている。処方に変更はないのに、毎回パッケージが異なる薬を受け取ることになれば、患者は混乱し不満に思うのも当然だ。そして、その不満の矛先は薬局ではなく、病医院に向けられる。これ以上看過することはできない。

 遅かれ早かれ、調剤技術料は確実に引き下げられるだろう。調剤料が引き下げられれば、中小薬局は立ち行かなくなる。門前薬局が突然、撤退するリスクを考えた時、私は自分の病院の患者を守るために、院内処方という選択肢を確保しておきたいと結論した。

 本当に生き残りたいのなら、薬局は幻の面分業を追求するのではなく、門前薬局に徹すべきだ。いつか院内薬局の外注ができる日が来た時、「うちの院内に薬局を作ってほしい」と言われるくらい、病医院と一蓮托生となり、医療従事者の一員として患者に安心を提供できるよう努めてほしい。

 ただし、現在でも薬局の良さはあると思うし、それを見込んでかかりつけ薬局を選んでいる患者が少なからず存在するのも事実だ。私は、そのような薬局の努力は評価したい。彼らから処方箋を奪うつもりはないため、院内処方と院外処方のいずれかを患者に選んでもらう形にする。選択制にすると、9割がたの患者が院内処方を選ぶと試算されている。薬局には、それを8割、7割に抑えられるような努力を期待したい。(談)

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