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医師が処方を決めるまで
アレルギー性鼻炎
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

講師
湯田 厚司
(ゆたクリニック[津市]院長)

講師から一言
 ゆたクリニックは、三重大学医学部附属病院教授だった湯田氏が2011年10月に開業した耳鼻咽喉科診療所。花粉症の舌下免疫療法や皮下免疫療法を手掛ける一方、頭頸部癌の検診やセカンドオピニオンも実施している。「アレルギー性鼻炎の治療の基本はアレルゲンの回避です。花粉症ではマスクの着用と洗濯物を屋外に干さないこと、通年性の鼻炎ではダニなどのアレルゲン除去といった生活指導も行ってください」。

 アレルギー性鼻炎は、わが国で最も患者数の多い鼻疾患で、くしゃみ、水性鼻汁、鼻閉を主徴とする。ダニなどのアレルゲンが原因となる通年性と、花粉など特定の季節に飛散するアレルゲンによる季節性に分けられ、季節性の中でも、スギ花粉をアレルゲンとするスギ花粉症に悩まされる人が多い。スギ花粉症は国民病ともいわれ、有病率は年々増加している。花粉症には、鼻炎以外に眼症状や皮膚症状を伴うことが多い。

 アレルギー性鼻炎の治療指針となるのが、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会の『鼻アレルギー診療ガイドライン』で、改訂第7版が近く出版される。同ガイドラインでは、通年性、季節性のいずれも、表1に示す指標で重症度を判断し、(1)鼻汁がひどい「くしゃみ・鼻漏型」、(2)鼻閉が他の症状よりも特に強い「鼻閉型」、(3)全ての症状が同程度に強い「充全型」─の3つの病型に分類する。その上で、重症度と病型を勘案して治療方針を立てるよう勧めている(表2、表4)。

表1 アレルギー性鼻炎症状の重症度分類(参考文献1を一部改変)

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表2 花粉症の重症度に応じた治療選択(参考文献1を一部改変)

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表4 通年性アレルギー性鼻炎の重症度に応じた治療選択(参考文献1を一部改変)

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 本編では、まずスギ花粉症に対する処方例を2例紹介し、続いて通年性への処方例について解説する。ただし、アレルギー性鼻炎の治療ではこうした薬物療法も重要だが、マスクをする、室内を清潔に保つといったアレルゲンの回避が基本となることには留意していただきたい。

初期療法で飛散ピーク時の症状を緩和

 最初に紹介する患者は、スギ花粉症に加えヒノキ花粉症も合併している38歳の女性である。2月上旬から中旬にスギ花粉の飛散が開始する地域に在住しており、ここ10年以上、2月から4月にくしゃみや鼻水といった症状が現れている。来院した2月2日は飛散開始日より前であったが、既に鼻水など軽い症状が出始めていた。

 この患者のように、花粉の本格的な飛散の前に軽い症状が見られたり、過去に強い花粉症症状がある場合は、飛散ピーク時の症状を抑える目的で、抗ヒスタミン薬などを内服する初期療法を行う。

 花粉症の初期療法に用いる薬剤には、第2世代抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗ロイコトリエン薬、Th2サイトカイン阻害薬、抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬がある(表2)。

 第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代に見られた眠気、口渇といった副作用が軽減されており、初期療法に用いる場合は、花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で飲み始める。その他の薬剤を初期療法に使う際には、飛散予測日の1~2週間前から服用を開始する。どの薬剤を選択した場合も、スギやヒノキの花粉の飛散が収まる5月上旬~下旬ぐらいまで服用を続けることがポイントとなる。

 この患者は初診時に既に症状があったため、第2世代抗ヒスタミン薬による初期療法を開始した。タリオン(一般名ベポタスチンベシル酸塩)を処方したのは、第2世代抗ヒスタミン薬の中でも最高血中濃度到達時間(Tmax)が短く、効果が早く出ると考えたためである(表3)。

表3 主な抗ヒスタミン薬の単回服用時の最高血中濃度到達時間と血中半減期

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ピーク時にステロイド点鼻を追加

 花粉の飛散がピークとなる時期には症状が重症化するため、追加薬を必要とすることが多い。本例では、初診から1カ月後に追加薬としてステロイドの点鼻薬を投与した。最近のステロイドの点鼻薬は、バイオアベラビリティーが低く安全であり、1日1回噴霧でも効果が高い。

 本例にはヒノキ花粉の飛散が終了する5月初めまで、2剤を継続投与した。1日の花粉飛散数が非常に多い日には多少のくしゃみが見られたが、比較的快適に過ごすことができたという。

 ちなみに、ヒノキ花粉症はスギ花粉症の約8割に合併する。さらに、イネ科のカモガヤ花粉症を合併していると、関東以西では、5月末までの治療が必要となる。

眠気が大敵の受験生
中枢抑制の少ない薬剤を中心に選択

 スギ花粉が飛散する時期は受験シーズンでもある。受験生への処方には工夫が必要で、眠気などを引き起こしにくい薬剤を選択した上で、頓用薬による症状のコントロールを行っている。

 次の処方箋は、3年前に花粉症を発症した18歳男性に対する処方である。2月下旬に行われる大学入学試験を控え、1月15日に来院した。

 初期療法に用いる薬剤として私が選択したのは、第2世代抗ヒスタミン薬のアレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)である。アレグラは、眠気や集中力、判断力を低下させる鎮静性が抗ヒスタミン薬の中で最も低いとされている。

 この患者には既にくしゃみや鼻汁などの軽い症状があり、入試の大切な時期でもあるため、飛散開始日より前ではあったが、アレグラの服用を開始してもらうことにした。

 患者には、花粉飛散が本格化する時期を見据えて、ステロイド点鼻薬を2月上旬に追加、さらにプレドニン(プレドニゾロン)を頓用で5回分処方し、症状がひどい日の朝に服用するよう指示した。

 ただし、入試で緊張している時期でもあり、プレドニンの胃腸症状などの副作用にも注意が必要なので、ムコスタ(レバミピド)と併用した。

 花粉症に対しては、ステロイドと抗ヒスタミン薬の配合剤であるセレスタミン(ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)の処方を患者が希望することもある。症状を抑える効果が強いため、投与を希望する患者は少なくないが、満月様顔貌や食欲増進といった副作用が懸念されるので、短期間の処方にすべきと考えている。

鼻閉型には抗ロイコトリエン薬
治療開始時は抗ヒスタミン薬も併用

 次の症例は、通年性のアレルギー性鼻炎で鼻閉の強い25歳男性である。以前から時々くしゃみに悩まされることがあったが、ここ数日、鼻閉がひどく、熟睡できないということで当院を受診した。

 アレルギー性鼻炎の主症状である鼻閉は、鼻粘膜の肥満細胞から放出されるロイコトリエンなどにより、鼻粘膜が腫脹することで起こる。

 鼻閉には抗ロイコトリエン薬の効果が高いが、効果の発現には1週間程度かかるので、治療開始時は即効性のある抗ヒスタミン薬を併用するようにしている。

 本例には、抗ロイコトリエン薬のキプレス(モンテルカストナトリウム)に加えて、第2世代抗ヒスタミン薬のザイザル(レボセチリジン塩酸塩)を就寝前服用で処方した。同時に服用できると、服薬アドヒアランスも良いと考えた。

 鼻閉にはステロイドの点鼻薬も有効である。『鼻アレルギー診療ガイドライン』では、花粉症には軽症から、通年性には中等症から使うように推奨されている。

 鼻閉が強く、日常生活にも差し障るような場合には、点鼻薬として、より即効性のある血管収縮薬も使用することがある。しかし、血管収縮性の点鼻薬を連用すると難治性鼻閉の原因にもなるため、使用は1週間以内にとどめることが原則である。

小児では年齢と体重、剤形に注意

 最後の症例は、通年性アレルギー性鼻炎の小児に対する処方例である。初診時と2カ月後の処方箋を見比べてみてほしい。オノン(プランルカスト水和物)は同量なのに、ジルテック(セチリジン塩酸塩)は2倍量を処方している。理由が分かるだろうか。

 実はこの女児は初診時には6歳だったが、2カ月後の診療時には7歳になっていた。オノンは体重、ジルテックは年齢を基準に投与量を決めるため、体重は変わらないのにジルテックだけが7歳から倍量になるという事態が生じたのである。

 表5に、小児のアレルギー性鼻炎への適応を持つ主な抗アレルギー薬を示す。使用できる年齢は、薬剤ごとに違い、剤形によっても異なる。錠剤は、7歳から飲めるものが多い。

表5 小児のアレルギー性鼻炎に適応がある主な抗アレルギー薬

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 用量は、年齢により設定されているものと、体重で設定されているものがあり、年齢で適応が決まる薬剤は、年齢の割に体重の多い子どもでは用量不十分になる恐れがある。

 錠剤では、クラリチン(ロラタジン)、ジルテック、ザイザルは成人と小児で同じ用量を服用するが、アレグラの小児用量は成人の半量である。成人と用法が異なる薬剤もあり、ジルテックとザイザルは成人では1日1回、小児では1日2回投与である。

 抗ロイコトリエン薬は、オノンドライシロップのみが小児のアレルギー性鼻炎に使用できる(2012年12月末現在)。キプレスおよびシングレア(モンテルカストナトリウム)は、細粒、チュアブルともにアレルギー性鼻炎の適応はなく、錠剤は15歳からの適応である。

 以上、アレルギー性鼻炎の処方例を解説したが、患者に合った薬剤を選ぶ上で、過去に服用したことのある薬剤は何か、きちんと飲めていたかなどを把握できるお薬手帳は非常に有用である。

特に小児ではドライシロップなどの風味が服薬アドヒアランスに影響する。これからも、薬剤師の皆さんには、こうした情報を積極的に記載していただければ幸いである。

参考文献
1)『鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー 2013年版(改定第7版)』(ライフ・サイエンス、2013年)

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