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医師が語る 処方箋の裏側
BZ系薬の長期投与例は粉砕して0.1錠ずつ減量
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

 「起きていられないほど身体が重くて、この2カ月は食欲もありません」。こう言って1年半ほど前に来院した根津享さん(仮名、当時43歳)。

 20年前のある朝、突然、身体が鉛をまとったように重くなり、毎日昼まで寝てしまうようになったという。複数の医療機関でうつ病などと診断され、2年前からSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のジェイゾロフト(一般名塩酸セルトラリン)が25mg/日のほか、ソラナックス(アルプラゾラム)0.4mg/日、ランドセン(クロナゼパム)0.5mg/日、テルネリン(チザニジン)3mg/日が処方されていた。

 この処方で私が気になったのが、SSRIが十分な量処方されていないにもかかわらず、ベンゾジアゼピン(BZ)系薬が2種類処方されていた点だ。

 BZ系薬は、常用量の投与でも早ければ数日間で耐性が出現し、依存性が問題となる。減量しようとしても離脱症状が現れてうまくいかないケースが多く、私は漫然とした投与は避けるべきと考えている。

 診察の結果、根津さんは慢性疲労症候群の可能性が考えられた。

 こうした場合、私はSSRIを上限まで増量した上で、BZ系薬を粉砕し0.1錠ずつ減量していく方法を行っている。患者の状態を確認しながら、2~3カ月置きに減量し、1年3カ月後には右の処方箋のように、1種類0.6錠まで減量できた。なお、SSRIによる不眠に対して、少量のデジレル(トラゾドン塩酸塩)を投与した。

 日本でのBZ系薬の処方量は海外に比べ非常に多い。米国ではBZ系薬の処方に免許が必要で、研修医が処方できる環境ではないのでBZ系薬を使わずに済むような診療スタイルが身に付いた。

 根津さんは、現在、ジョギングや買い物に行くなど、日常生活を送れるようになっている。(談)

岡田 唯男氏
Okada Tadao
1995年神戸大学医学部卒業。在沖縄米国海軍病院、米国ピッツバーグ大学メディカルセンター附属シェイディサイド病院家庭地域医療科レジデントなどを経て、2006年鉄蕉会亀田ファミリークリニック館山(千葉県館山市)院長に就任。家庭医療学が専門で、医療を通じた住みやすい地域づくり、家庭医の育成に力を注いでいる。

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