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Report:上手な残薬確認
こうすれば聞き出せる 上手な残薬確認
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

 服薬指導時に患者に「お薬、余っていませんか」と尋ねて、「余っていない」と答えが返ってきたら、薬歴に「残薬なし」と記載する─。一般的な残薬確認の流れだが、果たしてこれで十分だろうか。

 西尾久めぐみ薬局(東京都荒川区)薬局長の高山美奈子氏は「『余っている薬はない』と言ってはいても、家に大量の残薬があるという患者は少なくない」と指摘する。在宅訪問指導を行っている高山氏は、患者宅でそんな実態をしばしば目にしてきた。その経験から、「『飲めている』という患者の言葉をうのみにしないことが大切」と強調する。同薬局では、「残薬はあるもの」と考えて、受診間隔が不定期な人などを中心に、さらに一歩踏み込んだ質問をすることで、残薬を聞き出すよう心掛けている。

残薬が多そうな患者にもう一言

 特に、薬を余らせている可能性が高い患者として、高山氏は「1日3回服用の薬が処方されている患者」を挙げる。「お昼の薬を飲み忘れたりしませんか」と具体的に尋ねると、「外出した時などに忘れることがあるので、少し余っている」といった答えが返ってくることがある。そうしたケースでは、昼に飲まずに済む1日2回服用の薬への変更を、医師に提案する。

 また働き盛りで接待や宴会の機会が多い男性は、夕食後の薬が飲めていないことが少なくない。飲酒後は、服薬を忘れがちだからだ。

 そうした患者に高山氏は「飲み会の日の夜の薬はどうされていますか」「飲み会が続くと、つい薬を飲み忘れてしまいますよね」などと声を掛けるようにしている。そうすると「実は……」と、残薬の存在を打ち明けてくれることがある。その場合、食前の服用が可能な薬であれば、宴会が始まる前に服用するようアドバイスする。

 「残薬を確認すると、飲み忘れ時にどう対処しているかも分かる」と高山氏。残薬確認が、正しい服薬方法を再度説明するよい機会になっているという。

 さらに同薬局では、定期的に開催している健康イベント「くすりと健康の広場」でも残薬確認を行っている(図1)。開催案内に「余った薬を持ってきてください」と記載して呼び掛けたところ、いつも薬局に通っている患者が、残薬を持って参加してきた。

 服薬指導で残薬を確認したときには何も言っておらず、きちんと飲めているものだと思っていたが、患者は薬剤師が忙しそうなので残薬があることを言い出せずにいたという。高山氏は「普段の服薬指導での声掛けだけでなく、改めて機会を設けることも大切だと感じた」と話す。

図1 西尾久めぐみ薬局のイベントのポスター

残薬を持ってくるように呼び掛けたところ、当日、残薬はないはずだと思っていた患者が、多くの薬を持って参加してきたという。

カレンダーを活用して残薬を確認

 患者が自ら服薬をチェックできるカレンダーを印刷した薬袋(写真1)を作製し、残薬確認に活用しているのはハリマ調剤薬局東加古川店(兵庫県加古川市)だ。

 同薬局は、精神科専門病院の近隣に位置し、1日65枚程度の精神科の処方箋を応需している。数種類以上の薬を服用している患者だけでなく、睡眠薬や抗不安薬などの頓服処方のある患者が多いのも特徴だ。

 「『つい飲み忘れる』と訴える患者が多かったことから、薬袋の裏面に服薬確認用のカレンダーを印刷することを考えた」と同薬局薬局長の中嶋正憲氏。飲み忘れ防止策の一つとして提供し始めたが、記入した薬袋を薬局に持ってきてもらうことで、残薬確認にも役立てている(図2)。

 2009年から使用しているが、薬局内には活用方法を紹介したポスターを貼付し、活用を促している。さらに、お薬手帳に貼付できるサイズやA4判サイズのものも用意して、患者が持ち帰れるようにしている(写真2)。約1割の患者がカレンダーを利用しており、「飲み忘れが減った」などと好評だ。受診時に医師に見せて、処方日数を調整してもらってくる患者もいる。

 残薬が多い患者に対して、薬局でも医師に疑義照会して処方日数の調整を行う。だが、それ以上に中嶋氏らが重視しているのは、薬が飲めていない理由を考え、飲めるようにする方法を提案することだ。

 そのため同薬局では、「飲み忘れを防ぐためのヒント集」を作成(表1)。この中から、例えば独居の患者には「時計や携帯電話のアラーム機能を利用する」、外出が多い患者には「朝の薬を飲むときに昼の薬を財布に入れておく」といったように、患者の状況に合わせて飲み忘れ防止法を紹介している。このヒント集を患者に渡して、参考にしてもらうこともある。

 中嶋氏は「残薬を確認するだけで終わらせるのではなく、薬をきちんと飲めるように指導することが大事」と話している。

患者が服薬をチェックできるカレンダーを印刷した薬袋を活用して、残薬確認を行っている。また、残薬が多い患者には、薬の飲み忘れを防ぐためのヒント集を提供している。

写真1 裏面に服薬カレンダーが印刷された薬袋

写真2 薬局内に置かれた手帳サイズの服薬カレンダー

表1 飲み忘れを防ぐためのヒント集

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図2 患者が記入したお薬カレンダー

「残薬が多い患者には、飲み忘れ防止の指導が大切」と話すハリマ調剤薬局東加古川店の中嶋正憲氏。

回収用のバッグを配布

 フタツカ薬局芦屋西(兵庫県芦屋市)では、家に余っている薬を持って来てもらうための「フタちゃんお薬整理バッグ」を用意し、残薬確認に活用している(写真3)。

 チラシやポスターで、「バラバラになった薬を一包化する」「数量を調べて日数の調整を医師に相談する」など、薬局に残薬を持ち込むことによるメリットを具体的に示したところ、患者から「薬局でこんなことまでもやってくれるのか」と喜ばれたという(図3、写真4)。

 同薬局薬局長の松木恵氏は、「普段から『余っている薬は薬局に持ってきて』と声を掛けているつもりだったが、浸透していなかったことに気づかされた。バッグを作ったことで、薬局の機能を知ってもらうことにもつながった」と感想を述べる。

 残薬を持って来てもらうことで、患者が自宅でどのように薬を管理しているかも把握できた。具体的には、PTPシートを1錠ずつ切り離して、薬ごとにチャック付きビニール袋に入れて保管している患者が多かった。外見がよく似ているタケプロンカプセルとOTC薬のベンザブロックS、またセロクラールとメリスロンなどが一つの袋に分類されているものもあり、間違えて服用しているケースの発見にもつながった。

 持ち込まれた残薬は、薬局でいったん預かって整理する。古い薬や既に処方されていない薬などは、患者の同意を得て破棄し、再利用できる状態のものは何の薬かが分かるようにして患者に返却する。

 返却する際に、薬剤数が多く飲み間違いが多い患者には、医師との相談の上、なるべく一包化を行う。また、必要に応じてお薬カレンダーや薬ボックスを使って服薬管理するように指導する。そうした服薬支援を行うことで、きちんと服薬できるようになった患者もいる。

 取り組みを始めた11年2月から12年4月までの1年余りで、47人にバッグを配布、15人が残薬を入れて薬局に持ってきた。「全体の患者数から見ると少ない数だが、バッグを活用することで声掛けだけでは見つからなかった残薬を発見することができた。さらにアドヒアランスを高めることにも貢献できた」と松木氏。継続して待合にポスターを掲出するとともに、服薬指導時にバッグを配ることで、残薬の“掘り起し”を図っている。

写真3 フタちゃんお薬整理バッグ

フタツカ薬局芦屋西では、残薬を入れて薬局に持ってきてもらうための「フタちゃんお薬整理バッグ」を患者に配布している。残薬を薬局に持ってきてもらうことで、自宅での薬の管理方法が把握でき、服用方法の間違いの発見にもつながっている。

図3 フタちゃんお薬整理バッグの利用を促すポスター

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写真4 残薬整理のポスターを提出した同店の掲示板

「バッグをきっかけに自ら残薬があることを医師に伝える患者も出てきた」と話すフタツカ薬局芦屋西の松木恵氏。

持ち込まれた薬の8割を再利用

 福岡市薬剤師会でも、オリジナルのバッグを配布し、残薬確認に活用している(写真5)。同会では「節薬エコバッグ」と名付け、「残薬をバッグに入れて薬局に持ってくることで、ムダな薬代を減らそう」とポスターやチラシで呼び掛けている(図4、写真6)。

福岡市薬剤師会では、オリジナルの節薬エコバッグを作製し、患者に配布。ポスターやチラシを利用して、残薬を薬局に持ってきてもらうように呼び掛けている。約2カ月で、31薬局に持ち込まれた残薬の総額は80万円を超えた。

写真5 節薬エコバッグ

図4 節薬エコバッグの説明ポスター

写真6 節薬エコバッグのポスターを貼り出しているオリーブ薬局

 同会副会長の木原太郎氏は、「最終的な目的は、患者の服薬アドヒアランスを向上させて、正しく薬物治療を受けてもらうことにあるが、『薬代が安くなるかもしれない』という患者にとってのメリットを表に出すことで、興味を持ってもらいやすいと考えた」と説明する。

「残薬をしっかり確認することで、医療費削減にも貢献できることが分かった」と話す福岡市薬剤師会の木原太郎氏。

 節薬エコバッグは、12年6月に31薬局が試験的に使用を開始。同年8月までの試行の結果を、九州大学大学院薬学研究院・臨床育薬学分野が収集し分析した。期間中、31薬局で1600袋が配布され、残薬を持ち込んだ患者は252人。うちバッグを利用した患者は約半数の123人だった(表2)。

表2 節薬エコバッグの試行の状況

 残薬を持ってきてほしいとチラシやポスターなどで呼び掛けた結果、バッグは持たないが薬だけ持ってきた患者もいた。参加薬局のオリーブ薬局を経営するみついき薬局(どちらも福岡市城南区)代表の満生清士氏は、「節薬エコバッグというツールが、家に余っている薬を調べてもらおうと患者が考える、よいきっかけになったのではないか」と話す。

 持ち込まれた薬の薬価は、総額で83万9655円にも上った(表3)。薬局では、薬が服用できるかを判断し、患者が現在も服用している薬であれば医師に疑義照会して、処方日数を調整した。その結果、8割以上に当たる70万2695円分が再利用できた。

表3 試行による医療費削減効果

残薬確認はまさに薬剤師の仕事

 疑義照会が増えることから、医師から「面倒だ」という不満の声が上がるのではないかと懸念されたが、実際には「患者の服薬状況が把握できた」と、歓迎する医師が多かったという。

 残薬を持ち込んだ患者の中には、自己負担が0割の患者も38人いた。オリーブ薬局管理薬剤師の三井所尊正氏は、「服薬指導時にはできるだけ、自己負担額のことだけでなく、国全体の医療費の削減につながることも説明するようにした。残薬はもったいないと感じてくれた患者が、自己負担割合にかかわらず残薬を持ってきてくれたようだ」と説明する。

 持ち込まれた残薬の中には、一包化している薬も多数あった。「一包化すればコンプライアンスが上がるとは一概には言えないことが分かった。薬剤師は、薬が患者に渡った後のことをもっと考える必要があると改めて感じた」と三井所氏。

 同会では、13年1月から全会員を対象に、「節薬エコバッグ」を活用した残薬確認を展開していく構えだ。木原氏は、「残薬確認は、医療費削減にも有効だし、アドヒアランスを高めるきっかけにもなる。薬剤師の職能の一つといえるこの活動を、地域に定着させ、さらには全国に広げていきたい」と意気込みを語っている。

「一包化していても飲めていない患者も多い。注意が必要」と話すオリーブ薬局の三井所尊正氏(左)。みついき薬局の満生清士氏(右)も「残薬について意識して確認することが大切。節薬エコバッグはそのためのツールとして有効」と強調する。

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