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OTCセレクトガイド
口内炎
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 口内炎は、口腔粘膜に生じるびらん、潰瘍などの炎症を伴う疾患の総称である。最も多いのが、表面が白く、浅い潰瘍を形成するアフタ性口内炎である。口唇の裏、舌、歯肉に好発する。通常、1~2週間で治癒するが、再発したり、数が増えることもある。

 原因は様々だが、歯でかんでしまったり、歯の金属や矯正器具が当たったりして、口腔粘膜が傷つき、そこに細菌が感染して発症する。このほか、ウイルス感染による単純ヘルペス性口内炎、カンジダという真菌によるカンジダ性口内炎などもある。栄養摂取の偏り、疲労、睡眠不足、ストレスなども原因となる。

 また、口腔粘膜が膨れて硬くなっていたり、治りが遅く広がってきたりする口内炎は、口腔癌や舌癌の可能性もある。

 薬物による発症もある。特に、経口ステロイドや吸入ステロイド、抗癌剤などを服用している患者では、粘膜障害(潰瘍)が起こる。

 口内炎は小さくても染みたり、強い痛みを生じるため、それによって食欲が減退する患者は少なくない。特に免疫が低下したり、低栄養となっている小児や高齢者、癌患者などでは、口内炎の痛みによる食事摂取不足が深刻になることもある。

 口内炎でOTC薬の使用が勧められるのは、感染や基礎疾患が合併していないアフタ性口内炎である。

 なお、医療用医薬品による口内炎の治療では、ケナログ口腔用軟膏(一般名トリアムシノロンアセトニド)の塗布、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物の含嗽、漢方薬の半夏瀉心湯などが使われる。

この成分に注目

抗炎症成分

 トリアムシノロンアセトニドは、ミディアムクラスのステロイドで、抗炎症作用を有する。ウイルスや真菌の感染による口内炎は症状が悪化する恐れがあるため、患部に化膿や白斑が見られたら避ける。

 アズレンスルホン酸ナトリウム水和物は、抗炎症作用に加えて、肉芽増殖を促して上皮形成を促進する。

 このほか、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、アラントインなど。

止血、痛みの緩和

 トラネキサム酸は、抗プラスミン作用による止血作用と、ブラジキニンの産生を抑制して痛みを緩和する作用を持つ。

殺菌・消毒成分

 クロルヘキシジン塩酸塩は特にグラム陰性菌を、セチルピリジニウム塩化物水和物は、レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などに対する殺菌作用を有する。ポピドンヨードは遊離ヨウ素による殺菌作用がある。

 ヒノキチオールは、嫌気性菌への抗菌作用のほか、組織収れん作用により口内炎に伴う腫れを抑える。

生薬

 カンゾウは、グリチルリチンを含み炎症を抑える。

 シコンはムラサキの根で、消炎作用や創傷治癒促進作用があり、ヨクイニンは粘膜の炎症を抑える。

 オウレンはベルベリンを主成分とし、殺菌作用、菌の増殖抑制作用、リンパ球の遊走能の活性化作用がある。

 乾姜(ショウガ)も殺菌作用を持つ。

ビタミン

 ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)、リボフラビン(ビタミンB2)、Lアスコルビン酸ナトリウム(ビタミンCナトリウム)などがある。

 このほか、パンテノールは副腎皮質ホルモンの合成を促進し、ビオチンは皮膚粘膜の働きを強化する。

製品セレクト

 口内炎のOTC薬は、患部に直接塗布または貼付する外用薬と、経口薬に分けられる。外用薬には、軟膏、パッチ、スプレー、液剤がある。

 軟膏は患部が複数で、面積が比較的大きい場合に向いており、使用量の調節が可能である。パッチは患部が1カ所で、面積が小さく限局的な患者に薦めたい。使用回数が少なくて済む。また、スプレーや液剤は口腔内全体を殺菌したい場合にお薦めである。

 こうした観点から、軟膏ではケナログA口腔用軟膏(ブリストル・マイヤーズ)を薦めたい。

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 抗炎症成分のトリアムシノロンアセトニドを配合している。添加物であるゼラチン、カルメロースナトリウムなどがゼリー状となって、患部を長時間覆う。

 用法・用量として、1日1~数回患部に塗布する。

 塗布する際に、まず手を洗って指先を清潔な状態にして、口をすすぐ。患部がぬれていると、軟膏が付着しづらいので、ティッシュペーパーやガーゼなどで軽く拭いてから、静かに覆うように軟膏を塗る。ただし、患部が乾き過ぎていても付きにくくなるので、注意が必要である。

 塗った後は、舌で患部を刺激したりせずに、しばらくは飲食は控えるように伝える。食後や就寝前に塗布させるとよいだろう。

 なお、使用後はチューブの口や周辺をティッシュペーパーで拭ってから、キャップをしっかり締めて保管する。

 同じトリアムシノロンアセトニドを配合した外用薬でパッチ状のアフタッチA(佐藤製薬)もお薦めだ。

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 アフタッチAは貼付後しばらくするとゼリー状になり、自然に溶解する。

 1カ所の患部に1回1錠、1日1~2回使用する。薬剤はオレンジ色(支持層)と白色(薬剤層)の2層構造になっており、白色面を患部に付着させる。

 ケナログAには使用年齢の記載はないが、アフタッチAは5歳以上の小児となっている。

 外用薬が塗りにくい場所の口内炎には、経口薬のトラフル錠(第一三共ヘルスケア)を薦めるとよい。

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 抗炎症成分のトラネキサム酸、カンゾウ乾燥エキスのほか、皮膚や粘膜の機能を整えるビタミンB6、B2、ビタミンCを含んでいる。

 15歳以上は1回2錠を、7歳以上15歳未満は1回1錠で、朝昼晩の1日3回服用する。7歳未満は服用できない。

 ケナログなどの外用薬との併用も可能なので、一緒に薦めてもよい。

こんな製品も

 外用薬のうち、スプレーでは、(a)トラフルクイックショット(第一三共ヘルスケア)がお薦めである。医療用のうがい薬などにも使用されている抗炎症成分のアズレンスルホン酸ナトリウム水和物を配合したジェル状液のスプレータイプの治療薬である。l-メントール配合で、使用感はすっきりしている。染みにくいのも特徴である。

 口内炎とともに歯肉炎や歯槽膿漏がある患者には、これらの適応もある(b)新デスパコーワ(興和)が良い。抗炎症成分のグリチルリチン酸二カリウム、塩化セチルピリジニウムのほか、皮膚粘膜の補修作用のあるアラントイン、パンテノールなどを配合している。

 口内炎の場合は1日2~4回適量を患部に塗布するが、歯肉炎には1日2回のブラッシング後に約1.5cm(約0.3g)を目安量として歯茎に塗擦する。

 一方、経口の漢方薬を好む患者には、(c)半夏瀉心湯エキス錠Fクラシエ(クラシエ薬品)や(d)桂枝五物湯エキス顆粒(原沢製薬工業)がお薦めである。漢方薬の中でも比較的早く効いてくることが知られている。

 半夏瀉心湯は、体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、下痢や軟便の傾向がある患者に向いている。1日3回食前または食間に服用し、1回の服用量は、15歳以上で4錠、7歳以上15歳未満で3錠、5歳以上7歳未満で2錠である。

 半夏瀉心湯は、オウレンの主成分であるベルベリンやカンキョウの殺菌作用により口腔環境を整える。また、生薬の相乗効果で消化管粘膜を修復する作用もある。

 口腔粘膜の殺菌作用をより高めるのであれば、お湯で溶かして口に含みながらゆっくり飲み、服用後30分は飲食しないようにする。

 桂枝五物湯は、口腔内のただれや荒れを伴う患者に薦める。同薬も1日3回服用で、用量は15歳以上で1回1包、7歳以上15歳未満で2分の1包、4歳以上7歳未満で4分の1包となっている。4歳未満は服用できない。

 「口内炎がよくできる」と訴える患者には、日ごろから歯茎からの出血などを予防する観点から、ビタミン剤の服用を勧める。

 (e)新エバユースEC(第一三共ヘルスケア)は、アスコルビン酸(ビタミンC)、酢酸d-α-トコフェロール(天然型ビタミンE)、リボフラビン酪酸エステル(ビタミンB2)、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)を配合している顆粒である。砂糖、ナトリウムが含まれていないため、摂取カロリーや血圧を気にする患者にも向いている。

 用法・用量は、1回量が年齢別に5段階に規定されている。15歳以上は1回1包、11歳以上15歳未満は3分の2包、7歳以上11歳未満は2分の1包、3歳以上7歳未満は3分の1包、1歳以上3歳未満は4分の1包である。1歳未満は服用できない。

 1日の服用回数は1~3回で、1日2回服用する場合は、朝食および夕食後に、1日3回服用する場合は毎食後に服用することとされている。

 また、口内炎の予防として、殺菌消毒成分であるセチルピリジニウム塩化物水和物を配合した(f)プロテクトドロップ(常盤薬品工業)もお薦めである。レモン、リンゴ、緑茶ミントの3種類の味があり、砂糖不使用で甘さも控えめである。

 用法・用量は、15歳以上は1回1錠を1日6回、5歳以上15歳未満1回1錠を1日3回、いずれも1錠ずつ口中に含み、かまずにゆっくり溶かす。なお、1回分を使用後は、2時間以上の間隔を置いて使用する。

 口内炎とともに、口角炎や口唇炎も併発している患者には、(g)ユースキン メディリップ(ユースキン製薬)も併せて薦めるとよい。

 第3類医薬品で、粘膜修復成分のアラントイン、グリチルレチン酸、ビタミンE、B6、パンテノールのほか、保護成分のワセリン、グリセリン、オリーブオイルも配合している。無香料で、メントールを配合していない。

 リップクリームだがスティック状ではなく、指で塗るタイプで、1日数回、適量を擦り込む。塗る前は手指を清潔にしてから使用する。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 OTC薬で対応できるのは、アフタ性口内炎のみである。口内炎の数が多く痛みがひどい、なかなか治らない、よく再発する患者には、他の疾患の可能性を考え、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科の受診を促す必要がある。

 そのため、1~2日間使用して症状の悪化が見られる場合、5~6日間使用しても症状の改善が見られないような場合は、使用を中止し受診するように伝えておく。

 また、併用薬を確認することも重要である。吸入ステロイドを使用後に、うがいが不十分であることから口内炎を繰り返す患者もいる。口腔内を洗浄する目的なので、がらがらうがいではなく、ぶくぶくとうがいすること、うがいができなければ、水やお茶を摂取する際に口全体に行きわたらせるようにするよう指導するとよい。

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