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多彩な生理活性とCYP450誘導作用
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

 VAは、抗夜盲症因子として発見された脂溶性ビタミンの一種である。狭義のVAはレチノールを指すが、レチナールおよびレチノイン酸(RA)もVAとしての生理活性を持つ。これらのレチノール類似化合物をレチノイドと総称する。

 レチノイドは視覚機能の維持のほか、細胞の分化、増殖、成熟、細胞死など、多彩な生理作用に関わっている。特に妊産婦や授乳婦、乳幼児、消耗性疾患の罹患者において需要が増大する。典型的なVAの欠乏症として、夜盲症や角膜乾燥症(乳幼児では失明の恐れ)、成長障害、骨・神経系の発達抑制、上皮細胞の分化・増殖障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫能低下などがある。一方、VA過剰症としては、急性症である乳幼児の脳水腫(摂取後12時間前後で発症)のほか、慢性症である頭蓋内圧亢進や皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛などが知られている。

レチノイドが関わる薬力学的相互作用

 レチノイドを含む医療用医薬品には、VA欠乏症および角化性皮膚疾患の予防・治療に用いるVA剤のレチノールパルミチン酸エステル(商品名チョコラA他)のほか、乾癬治療薬のエトレチナート(チガソン)、急性前骨髄球性白血病(APL)治療薬のトレチノイン(all trans-retinoic acid:ATRA、商品名ベサノイド)およびタミバロテン(アムノレイク)がある。エトレチナート、トレチノイン、タミバロテンはレチノイド製剤と呼ばれる。これらのレチノイドは、核内受容体のリガンドとして標的遺伝子の発現を制御している。

 これらのレチノイド製剤を服用している患者では、他のレチノイド製剤の併用は禁忌であり、VA剤や、VAを含有する一般用医薬品・健康食品も併用してはならない(表1)。併用すると協力作用によりレチノイドの作用が増強し、VA過剰症に類似する症状を発現する恐れがある。

表1 ビタミンA(VA、レチノイド)が関与する相互作用

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 なお、レチノイド自体に催奇形性があるため、レチノイド製剤は妊婦および妊娠している可能性のある婦人への投与は禁忌である。また、VA剤およびVA含有品に関しても、妊娠3カ月以内または妊娠を希望する婦人へのVA 5000 IU/日以上の投与は禁忌である(VA欠乏症の場合を除く)。

吸収阻害に起因する相互作用

 レバーなどの動物性食品に含まれるレチニルエステル(レチノールの脂肪酸エステル)は、消化管内で胆汁酸などと複合ミセルを形成し、加水分解されてレチノールとなり小腸で吸収される(図1)。そのためVA剤やVA含有品は、胆汁酸を吸着する陰イオン交換樹脂を併用すると、消化管吸収が低下すると考えられる。トレチノイン(ATRA)などのレチノイド製剤の吸収経路は不明だが、食事の影響を受けることから胆汁酸存在下で吸収されると考えられ、陰イオン交換樹脂との併用で効果が減弱する可能性がある。

図1 細胞におけるレチノールの代謝経路

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 また、レチノールは小腸上皮細胞で再びレチニルエステルに変換され、カイロミクロンと結合してリンパ管から肝へと移行する。肝ではレチニルエステルとして貯蔵されるが、需要に応じてレチノールとなり、レチノール結合蛋白質(RBP)と結合して血中を移動して各組織に取り込まれる。

代謝阻害に起因する相互作用

 各組織に取り込まれたレチノールは、可逆的にレチナールへと変換され、最終的にRAへと不可逆的に変換される。RAは、核内受容体であるRA受容体(RAR)やレチノイドX受容体(RXR)と結合して標的遺伝子の転写を制御し、生理作用を発揮する。

 RAの中でもATRAおよび9-cis-RA(9CRA)は極めて重要な役割を持つ。いずれもRARに結合するほか、9CRAはRXRに結合して、遺伝子発現を制御する。レチナールからRAへの変換には、レチナール脱水素酵素(RALDH)と肝薬物代謝酵素チトクロームP(CYP)450(CYP1A1/2、1B1、2C19)が関与している(Drug Metab Dispos.2000;28:292-7.)。また、レチノールはCYP2C8、ATRAはCYP26A1、2C8/9、3A4、2E1によって水酸化された後、グルクロン酸抱合体となり排泄される。特に、レチノールおよびATRAのCYP2C8に対する親和性は強く、同じCYP2C8で代謝されるパクリタキセル(タキソール他)の代謝を競合的に阻害し、血中濃度を上昇させる可能性が示されている。

 また、アゾール系薬のケトコナゾール(内用薬は国内未発売;CYP26A1、3A4阻害)やフルコナゾール(ジフルカン他;CYP2C9/19、3A4阻害)は、ATRAの代謝に関与するCYP450を阻害するため、ATRAの血中濃度を上昇させる恐れがある。

 なお、ATRA治療時はしばしば耐性が問題となるが、これにはATRA自身によるCYP26A1誘導作用が関与すると考えられるため、アゾール系薬の併用が有用であると推察されている。ペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)α刺激薬のクロフィブラート(ビノグラック他)にもCYP26A1転写抑制作用があるため、同様に有用であると考えられる。一方、ピオグリタゾン(アクトス他)にもCYP26A1阻害作用が報告されており、9CRAには血糖改善作用もあるため、PPARγ刺激薬の効果発現にはCYP26A1阻害による9CRA量の増加も関与することが推測されている。またトログリタゾン(販売中止)、ATRA、9CRAは、骨肉腫細胞におけるPPARγ、RAR、RXRの発現を増大させ、相乗的に抗腫瘍効果を増強する可能性が報告されている。

CYP3A4誘導作用が関与する相互作用

 ATRAや9CRAなどは、RXR、プレグナンX受容体(PXR)、ビタミンD受容体(VDR)、構成的アンドロスタン受容体(CAR)を活性化し、二量体のRXR/RXR、PXR/RXR、RXR/VDR、RXR/CARを介してCYP3A4を誘導することがin vitro実験で報告されている。特にPXR/RXRを介したCYP3A4の誘導作用は、リファンピシン(リファジン他)と同等かそれ以上であることが示されている。9CRAで処理した細胞では、CYP3A4誘導によりアセトアミノフェンの毒性中間代謝物による共有結合が増えることで肝毒性が増強する可能性も示唆されている。

 なお、機序は不明であるが、にきび(尋常性ざ瘡)患者においてテトラサイクリンとVA剤を併用したところ、頭蓋内圧上昇や頭痛、吐き気などを呈したケースが報告されている。従って、低用量でも相互作用によってVA過剰症を発現するリスクがあることを常に念頭に置く。また、飲酒およびレチノイドの双方に肝毒性を誘発する作用があるため、慢性飲酒者へのVA剤の投与は慎重に行う必要がある。

相互作用への対処法

 視覚維持や美容を目的として、VAを含有する一般用医薬品や健康食品を積極的に摂取している患者は多い。これらの摂取状況は常に把握しておく。

 相互作用に関しては、まず、レチノイド製剤を服用中の患者に対して、VA剤やVA含有品、その他のレチノイド製剤を服用・摂取しないよう指導するほか、VA含有飲食物(肝油、レバー、卵黄、牛乳、魚油など)の過剰摂取も避けるよう説明する。また、フルコナゾール、クロフィブラート、ピオグリタゾン、テトラサイクリン系薬などを服用中の患者が、レチノイドを含む薬剤を併用する場合は、頭痛や吐き気(頭蓋内圧亢進)、脱毛、筋肉痛、肝障害などのVA過剰症の症状の有無を確認する。

 一方、陰イオン交換樹脂を長期にわたって服用中の患者では、VA欠乏症状の発現に注意する(ケース1)。また、CYP3A4で代謝される薬剤を服用中の患者がレチノイドを含む薬剤を併用する場合は、薬効減弱の可能性を考慮する。特にアセトアミノフェンの服用患者では、肝毒性の危険性が高くなるため要注意である(ケース2)。

 これまでに当薬局でレチノイドが関与する相互作用が問題となったことはないが、実際の対応例を提示する。

 脂質異常症のAさんは(1)(2)の薬剤を数年間服用中である。コレバインミニ(一般名コレスチミド)の長期服用により、脂溶性ビタミンや葉酸の吸収が低下している恐れがあるため、来局時にはこれらのビタミン欠乏症状の有無について尋ねるようにしている。特に、夜中に物がよく見えない、目が乾燥する、皮膚が硬くざらざらするといったVA欠乏症の症状が現れた場合は、必ず相談するよう指導している。また、ベザトールSR(ベザフィブラート)はPPARα、γ、δ(β)を同等に刺激するため、VAの作用を増強する可能性も考慮する。

 Bさんは、緊張性頭痛のため(1)~(3)を1年以上服用している。カロナール(アセトアミノフェン)はCYP2E1、3A4、1A2による代謝が亢進すると、肝毒性発現の可能性が高くなる。Bさんには喫煙(CYP1A2誘導)、飲酒(CYP2E1誘導)の習慣はなく、定期的な血液検査で肝機能異常も認められていない。妊娠の予定はないが、目の疲れや乾燥があったため、指定第2類医薬品のカワイ肝油ドロップSを数カ月前から飲み始めた。同薬の1日投与量にはVA 4000 IU(レチノール当量[RE]1200μg)が含まれており、2万5000 IU(RE 7500μg)を毎日服用すると慢性過剰症が現れやすくなると考えられた。

 薬剤師は、肝油は取り過ぎると頭痛、悪心、嘔吐、めまいなどの症状やカロナールによる肝障害を助長する恐れがあるため、用法・用量を厳守するよう指導。また、全身倦怠感や黄疸、痒みなど、気になる症状があれば必ず相談するよう伝えるとともに、定期的に血液検査を受けるよう指導した。現在のところBさんの肝機能は正常であるが、引き続き注意を促している。

(杉山薬局[山口県下関市]嶋本豊、杉山正康)

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