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CaseStudy
すこやか薬局知花店(沖縄県沖縄市)
日経DI2013年1月号

2013/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年1月号 No.183

 「片手でカバーを持って、もう片方の手の親指をこんな感じでグリップに当てて、グリップが止まるところまで回してください」─。すこやか薬局知花店(沖縄県沖縄市)薬剤師の久場良亮氏は、気管支喘息と診断されて初めて吸入薬を手にした患者に、吸入の仕方を丁寧に説明する(写真1)。

写真1 喘息患者への吸入指導

患者が理解しやすいように、吸入薬のデモ器を使って丁寧に説明する。
写真:河野 哲舟

 同薬局では現在、喘息患者への吸入指導に力を入れている。「特に、初めて吸入薬が処方された患者には、手技を完璧に覚えてもらうようにしている」と久場氏は話す。

きっかけは看護師からの依頼

 同薬局は、ちばなクリニックの門前に位置する。同クリニックは、隣接する326床の中頭病院の外来部門を独立させる形で2002年に設立された。循環器内科や呼吸器内科、外科、産婦人科、小児科など20の診療科を有する大規模クリニックだ。

 様々な診療科の処方箋を受ける同薬局が、吸入指導に力を入れるようになったきっかけは、11年の秋に、クリニックで呼吸器内科を担当していた看護師の座喜味(ざきみ)政代氏から吸入指導を依頼されたことだ。

 ちばなクリニックでは、吸入指導は看護師が担当しているが、「吸入薬の処方が増え、クリニック内で十分な指導の時間を確保することが難しくなっていた」(座喜味氏)。特に、高齢の患者の中には、数分間の指導では手技を習得することが難しい患者もおり、対応に苦慮していたという。

 同クリニックの近隣には、すこやか薬局知花店のほか、すこやか薬局中頭店、アイン薬局知花店がある(図1)。以前から、薬薬連携を目的として、2カ月に1回程度、病院の薬剤部とこの3薬局で会合を持っていたほか、沖縄県薬剤師会中部支部の勉強会に参加するなど、互いの顔が見える関係だった。

図1 吸入指導で連携する医療機関と薬局

中頭病院とちばなクリニックの門前には3つの薬局がある。

 そこで、3薬局で吸入指導を引き受けることにした。そして、どの薬局でも同じレベルの指導ができるように、クリニックで使用していた「吸入薬チェックリスト」(表1)を共有し、薬局でお薬手帳にこのリストを貼って情報を伝える仕組みをつくった。

表1 吸入薬チェックリスト

吸入薬は薬剤によって手技が異なるため、薬剤ごとにチェックリストを用意している。現在のところ、スピリーバレスピマット(一般名チオトロピウム臭化物水和物)、アドエアディスカスとエアゾール(サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル)、サルタノールインヘラー(サルブタモール硫酸塩)、シムビコートタービュヘイラー(ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物)など8種類を作成している。

 連携のフローはこうだ。まず、同クリニックの呼吸器内科で吸入薬が処方された喘息患者に、看護師が「吸入指導依頼書」を渡し、処方箋とともに保険薬局の窓口に提出するよう説明。この依頼書を持って薬局を訪れた患者に対しては、薬剤師が薬の説明をした後で、吸入薬チェックリストに沿って、処方された吸入薬のデモ器を用いて使用手順を患者と確認する。自己吸入型の吸入薬が処方されている場合は、その場で練習用吸入補助器を使って吸入できるか(音が鳴るか)を確認したり、手技の習得に不安がある患者には薬局で実際に薬を吸入してもらったりと、患者ごとに対応している。

 11年10月から12月の3カ月間で、すこやか薬局の知花店と中頭店で実施した初回吸入指導は36件、指導に要した時間は平均で10分前後だった。高齢の患者では30分程度かかったケースもあったという。また、この36件のうち4件は、うがいの注意点の説明が不十分、吸入器の使用方法の理解が不十分など、吸入指導が十分ではなかったと考えられた。

 実際に吸入指導を行った薬剤師からは、「デモ器を用いて吸入方法を確認することで、以前より確実な吸入指導を行えるようになった」と評価する声が上がる一方、「吸入指導に時間が掛かり、全体の待ち時間が増えてしまっている」「お薬手帳に貼ったチェックリストが次の受診時に活用されているか不明」といった問題点も指摘されたという。

 お薬手帳を介した連携に関して、すこやか薬局グループ北エリア長兼管理薬剤師の比嘉浩一氏は、「看護師がお薬手帳の必要性を患者に訴えてくれたこともあり、ほぼ全ての患者でお薬手帳を作ってもらえた。しかし、再診時にお薬手帳を忘れる患者も少なからずいるので、薬局で指導したことが医師に確実に伝わるとは限らない。医療機関と薬局が連携するためのツールとしては課題が残った」と話す。

すこやか薬局グループの比嘉浩一氏は、「吸入指導に対する薬剤師の意識と指導の質を向上させたい」と語る。

薬局の評価を電子カルテに反映

 では、薬局から医師に確実に情報を伝えるにはどのような方法がよいのか。中頭病院・ちばなクリニック呼吸器内科部長の伊志嶺朝彦氏は、「院外の薬局での指導結果についても遠慮なくフィードバックしてほしいが、診察中などに電話連絡を受けると丁寧な対応ができないこともある。薬局の薬剤師にとっても、電話よりもファクスの方がハードルが低いと考えた」と語る。

 そこで伊志嶺氏は、「吸入理解度調査表」(表2)を作り、これに薬局が情報を記入してファクスで伝える方法で、薬局と医療機関が情報を共有するプロジェクトを立ち上げた。

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 このプロジェクトでは、まず、薬剤師が調査表に基づいて手技を評価しながら、患者が吸入の必要性を理解しているか、コンプライアンスは良好か、副作用は出ていないかを確認する。いずれかに問題があれば、処方変更提案や再説明の依頼、スペーサーの使用などを医師への連絡事項の欄に書き込み、中頭病院薬剤部宛てにファクスで送る。ファクスを受け取った薬剤部が、パソコン上の専用画面から情報を入力すると、それが電子カルテに反映される(図2)。一方、薬局では、この情報を薬歴に記録する(図3)。

 「薬局での指導や評価の内容が、電子カルテに記載されて確実に医師に伝わり、次の診察時に反映される仕組みは、薬局薬剤師のモチベーションを高める」と久場氏は語る。

 病院薬剤部にとっては、ファクスの内容を入力する業務が増えるが、「医師への連絡事項の『その他』の欄以外は、チェックボックスにチェックを入れるだけで済むシステムを構築したので、それほど時間は掛からない」と同院薬剤部でプロジェクトを担当する渡慶次(とけし)真由美氏は話す。

アウトカムを明確にして評価を

 沖縄県は、喘息死亡率が全国平均より高く、09年の統計では全国で3番目に多かった。「医師がいくら吸入ステロイドを処方しても、患者がきちんと吸えていなければ、喘息死は減らない。どうしたら確実に吸入できるのか、医療機関と薬局が連携して問題点をあぶり出す必要がある」(伊志嶺氏)。そこでまず、12年4月から10月に、伊志嶺氏ともう1人の医師が主治医を務め、吸入ステロイドを処方した患者607人(複数回受診を含む、延べ人数)を対象として、薬剤師の介入前後でピークフロー値や、喘息コントロールテスト(ACT)のスコア、入院や時間外受診の回数などが変化したかどうかを分析中だ。「これらのアウトカムに基づいて、薬局薬剤師の介入の有効性を評価したい。また、今回用いた吸入理解度調査表の項目が適切だったのかについても検討する。これらの結果は、薬剤師にフィードバックする予定だ」と伊志嶺氏は話す。

 「以前は、患者から『吸入薬の使い方は病院で教えてもらったから』と言われると、それ以上踏み込めず、『では、吸入後のうがいを忘れないでくださいね』と軽く一言添える程度の指導にとどまっていた。それが今では、吸入指導は薬局薬剤師の仕事という認識に変わった」と久場氏は振り返る。薬局と医療機関の連携を強化して、沖縄の喘息治療に貢献していく考えだ。(佐原 加奈子)

医療機関と薬局が連携して地域の喘息治療を目指す。写真前列左から、中頭病院・ちばなクリニック看護師の奥間恵氏と座喜味政代氏、同呼吸器内科部長の伊志嶺朝彦氏、中頭病院薬剤部の渡慶次真由美氏。後列左から、すこやか薬局の久場良亮氏と比嘉浩一氏、アイン薬局知花店薬剤師の山路晶子氏。

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