皮膚科外用薬の処方で指示されることが多い「混合」。しかし、混ぜてもいいものなのか、判断に迷うことはないだろうか。まず知っておくべきなのは、それぞれの基剤とその特徴だ。 軟膏、クリーム、ゲル……。皮膚疾患の薬物療法では、このように剤形が異なる外用薬が複数処方されることが多く、患者のコンプライアンスを上げるなどの目的から、処方箋で「混合」を指示されることがよくある。 東京逓信病院(東京都千代田区)皮膚科部長の江藤隆史氏らが皮膚科医を対象に行った調査によると、外用薬のステロイドにワセリンやその他の薬剤を混合したことがあるかとの問いに対しては、「積極的に行っている」との回答が37.0%、「ときにしている」も47.6%に上った。実に8割以上の皮膚科医が混合を行っていた。 「これは約10年前のデータだが、現在もこうした状況はあまり変わっていないのではないか」と江藤氏は話す。 そもそも外用薬は単剤で使用されることが前提で、混合することを想定して製造されていない。混合することで、主薬の含量低下、pHや皮膚透過性の変化、分離した水分に細菌が繁殖するなどの問題が起きる可能性がある。 東京大学大学院薬学系研究科医薬品情報学講座特任講師の三木晶子氏は、「処方箋通りに混合した結果、分離や変色が起こったり、異臭がするといった調剤のトラブルが起こることは少なくない」と話す。 同講座内に事務局がある、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターでは、薬局で起こったヒヤリハット事例などを収集している。その中でも、外用薬の混合に関するトラブルは、定期的に報告されているという(別掲記事)。 外用薬の混合での「困った!」事例(NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターによる) ユベラ軟膏(一般名ビタミンE・A)45gとリンデロン-V軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル)の5gの混合を指示する処方箋を応需した。それぞれの基剤は、ユベラは乳剤性、リンデロン-Vは油脂性で、混合すると乳化が破壊されると考えられた。医師に疑義照会すると、「問題が起きたことはないので、そのまま出して」と言われた。 メーカーの社内資料では、同製剤の1:1混合では5℃で保存すればベタメタゾン吉草酸エステルの含量は問題ないとのことだった。だが9:1で混合した場合、pHが上昇し、同薬の安定性に影響すると考えられ、混合は避けるべきと考えられた。 ある夏のこと、ウレパールクリーム(尿素)20gとリンデロン-VG軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩)の20gを混合して投薬した患者から、「押入れで保管していたら水が分離した」というクレームがあった。冬に、同製剤をもらった時には問題なかったという。これらは乳剤性のO/W型と油脂性の基剤で混合は避けるべきだが、医師は経験的に処方していた。それぞれのメーカーによると、混合しても室温で1カ月なら外観上の変化は認められないという。 薬局で混合すると、冷所保存(5℃)では外見の変化はなかったが、室温では2日目でかなりの浸潤が認められた。 三木氏は「混合に関する知識や情報を日ごろから身に付けておき、問題があると思われる混合の指示を見たら疑義照会して、医師に積極的に情報提供していくことが求められている」と話す。 外用薬を混合するに当たり、どのようなことを知っておくべきなのだろうか。 外用薬の混合に関して現場で役立つ情報をまとめた『軟膏・クリーム配合変化ハンドブック』(じほう)の監修者である東京逓信病院薬剤部副薬剤部長の大谷道輝氏は「まずは自分の薬局で取り扱っている外用薬の基剤の性質を理解しておくべき」と話す。 「よく応需する混合の組み合わせは実際に混ぜてみて、外観などが変化しないかなどを確かめておくことが重要」と話す東京逓信病院の大谷道輝氏。 基剤は、主に油脂性、水溶性、乳剤性(クリーム)、ゲルに分けられる。 油脂性基剤はステロイドや抗菌薬などに幅広く使われている。一般に皮膚透過性は低い。水溶性基剤は水分を吸収する性質があり、皮膚の潰瘍治療薬などに使われている。 乳剤性基剤は、構造から水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)に分けられ、皮膚透過性が高い。 ゲルはべたつかず使用感が良いほか、水やお湯で洗い流しやすい。 表1は、基剤の性質別に混合の可否について、大谷氏らがまとめたものだ。 この表を見ると、基本的に同性質の基剤同士を混ぜると、その性質を損なう可能性が低いことが分かる。乳剤性は混合することで乳化が破壊されやすいので、混合には向いていない。また、ゲルは混合によってpHが変化したり、界面活性剤などが添加されると相分離を起こしやすく、粘度が低下してしまうため、混合不可となっている。 それぞれの薬剤の基剤は、添付文書やインタビューフォームから確認できるが、乳剤性のうちO/W型か、W/O型かまでは分からないことが多い。 メーカーに問い合わせる方法もあるが、手軽に調べる方法として大谷氏は「手に塗ってみて、その部分に水をかけてみると、違いが分かりやすい」と話す。 例えばW/O型のヒルドイドソフト軟膏(一般名ヘパリン類似物質)を塗った場合は水をはじくのに対して、O/W型のアセチロール軟膏(尿素)はさらさらとして水になじみ比較的簡単に洗い流せるという違いがある。 さらに詳しい配合変化については、製薬会社の社内資料を取り寄せて調べることも可能だ。しかし「メーカーによる安定性試験は、配合の比率別の詳細なデータはなかったり、肉眼的な分離を観察しただけで乳化の破壊などまでは確認されていないことが多い」(大谷氏)。 薬局で詳細な安定性試験まで行うことは現実的には難しいものの、大谷氏は“怪しい”混合の組み合わせは、室温や冷蔵庫で保管しておき、経時的に状態を確認することを勧めている。 このほかにも、調剤時に気を付けるべきことの1つとして、基剤を誤解しやすい商品名を把握しておくとよいだろう。 例えば、表2のように基剤がクリームやゲルであるのに、名称に「軟膏」と付いているなど、一見して正しい基剤が分からない薬剤もある。 これは、日本薬局方の製剤総則に書かれていた剤型が原因。第15局まではクリームやゲル、パスタも「軟膏剤」の項目にまとめられていたためだ。 2011年に改正された第16局では「軟膏剤」「クリーム剤」「ゲル剤」に分類された。今後発売される商品は名称から基剤が特定できるようになり、従来品も是正されるとみられる。 さらに、混合する際の手技にも気を配りたい。混合には、軟膏板・軟膏ヘラ、乳鉢・乳棒を使うほか、自動軟膏練り機を使う方法がある。 軟膏板を使うと、水分の多い基剤は空気の混入は少ないが、水分が蒸発しやすいので、手早く混ぜるようにする。乳鉢・乳棒で混ぜる場合、早過ぎると乳化の破壊や空気の混入が起きやすくなるので、ゆっくり混ぜるようにする。 一方、自動軟膏練り機は、回転数や回転時間の設定を誤ると、乳化の破壊、酸敗のほか、軟化して液状化してしまうことがある。 なお、手動、自動にかかわらず混合が可能とされている基剤同士でも、亜鉛化軟膏やその他の水溶性基剤のような固めの軟膏は、混合前によく練って軟らかくしておくなど、双方の物性を近づけるようにすることも重要だ。 副作用の軽減や皮膚透過性向上を期待して、ステロイドに白色ワセリンなどを混合して「希釈」するよう指示している処方箋はよくある。こうした「希釈」は、期待した効果が得られないことがある。 ステロイドの外用薬は、白色ワセリンやヒルドイドソフト軟膏(一般名ヘパリン類似物質)、尿素軟膏などと混合して処方されることが多い。 東京逓信病院の江藤隆史氏(前出)は、ステロイドとワセリンを混合して塗布するよう指示しているが、「ステロイドの外用薬を単剤で全身に塗る量を処方するとかなりの量になり、塗布に抵抗感を持つ患者もいる。ワセリンで希釈して塗るようにすれば、ステロイドの量も少なく済み、患者も安心するためか、コンプライアンスの向上につながる」と説明する。 江藤氏の調査では、ステロイドの混合を行っている医師の26.1%が「ステロイドの副作用の軽減を期待している」と回答。保湿剤などと混合して、皮膚透過性を上げる効果を期待しているのは18.5%だった。 では、ステロイドはワセリンなどと混合して「希釈」すると、期待通りの効果が認められるのか。東京逓信病院の大谷道輝氏(前出)は「ステロイドの副作用の軽減、保湿剤との混合による相乗効果を示した明確なエビデンスはほとんどないのが現状」と話す。 そんな中でも、一部の組み合わせではあるが、報告されているデータはあり、これらを基に処方している医師は少なくない。こうしたデータを紹介しよう。 大谷氏がリドメックスコーワ軟膏(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)を白色ワセリンで2分の1、4分の1に希釈して塗布したところ、皮膚蒼白度を指標とした血管収縮効果はリドメックス単剤よりもそれぞれ3分の2、2分の1で、希釈率と同程度には低下していなかった。同じ検討で、パスタロンソフト軟膏やケラチナミンコーワ軟膏といった尿素などと混合した場合は、リドメックス単剤よりも血管収縮効果は高まっていたという(図1)。 図1 リドメックスコーワ単剤と他の軟膏との混合後の血管収縮効果 (出典:薬学雑誌 2002.122:107-12.) このほか、アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)について、4分の1、16分の1に希釈しても、血管収縮反応の陽性率に差はなかったとも報告されている。 配合変化によりステロイドの含量が低下し過ぎてしまうこともある。エステル基を持つステロイドは、基剤が酸性の状態で安定しているが、混合によりpHがアルカリ性に傾くと、エステル基の加水分解によって、その含量が低下してしまうものがある。 特に17位にエステル基を持ち、21位にOH基を持つモノエステルのロコイド軟膏(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)やボアラ軟膏(デキサメタゾン吉草酸エステル)、リンデロン-V軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル)は、ワセリンなどとの混合で含量が低下したと報告されている。 皮膚透過性という観点でも興味深いデータがある。油脂性基剤のステロイドはもともと皮膚透過性が低いのだが、乳剤性の保湿剤を混ぜると、皮膚透過性が高まったという。 大谷氏らは、リドメックス軟膏の単剤と、パスタロンソフト軟膏あるいはヒルドイドソフト軟膏でそれぞれ1:1に混合して、ステロイドの濃度を希釈したものの皮膚透過性も調べている。その結果、皮膚透過比は、リドメックス単剤よりもパスタロンとの混合では4~5倍、ヒルドイドとの混合でも2倍に増加していた。同様にアンテベート軟膏やマイザー軟膏(ジフルプレドナート)も、単剤よりも混合した方が皮膚透過性が高まっていたという。 このように、希釈しても思ったほど効果が減弱しないとの報告があることから、希釈には注意が必要のようだ。 希釈してもステロイドの外用薬の塗布量は、1FTU(finger tip unit)が原則だ。塗る範囲を確認し、適切な使用量を伝える(別掲記事)。 おさらい ステロイドの外用薬の塗布量とその範囲について、よく知られているのが1FTU(finger tip unit)という単位だ。具体的には口の内径が5mmの外用薬のチューブを、成人の人差し指の第1関節から指先まで搾り出した量(0.5g)が、手2枚分の面積に塗布するのに必要な量とされている。よく「手のひら2枚分」という説明がされることがあるが、これは誤り。「手」は手指まで入れた面積を指しているので気を付けよう。 さらに、わが国で使用されている5gや10g入りのチューブの口の内径は、5mmより小さいものが多いため、1FTUでも0.5gとは限らない。また、保湿剤などとの混合の指示がある場合は、軟膏つぼで投薬する。このように1FTUが分かりにくい場合は、服薬指導時に「0.5gはこのくらいの量」と、患者に見せるようにしたい。 なお、軟膏とクリームでは、クリームの方が水分を含んでいるものの、1FTUで同量と考えてよいという報告がある。 5mmの内径のチューブで、成人の人差し指の第1関節の長さを出した量(0.5g)を1 FTUという。1FTUで、成人の手2枚分の面積に塗り広げるのが適量とされる。 また、ステロイドのほかに、保湿剤も塗るよう指示されている患者に対しては、塗布する順番の指導に悩むことが少なくない。大谷氏は「どちらを先に塗っても患者の皮膚の上では混ざり合うので、吸収量に差はないと考えてよい」と話す。ただし、「ステロイドを皮疹の部分に塗ってから保湿剤を全身に塗ると、改善した皮膚にまでステロイドを塗り広げることになる。そのため、先に保湿剤を塗り、必要な部位にステロイドを塗るという方法が副作用予防の観点からは勧められる」とのことだ。 一方で、皮膚科外用薬は薬剤の量や種類が増えるほど、コンプライアンスが低下するという報告もある。そのため「より効かせたいステロイドを先に、と考える医師もいる。いずれにせよ、患者への説明に違いが生じないように、処方医とはコミュニケーションを取っておくことが重要」と大谷氏は話している。 「塗り薬は後発医薬品に変更しにくい」と考える薬剤師は多い。実際に、使い心地が違うなどの理由で嫌がる患者もよくある。
また、医師が変更を好まないケースもあるようだ。果たしてどうなのか。 「塗り薬は、主成分が同じでも、基剤の種類やその配合などによって使用感や吸収率などが違ってくる。また、患者が肌で感じるため、違いを指摘されやすい」と明治薬科大学教授の石井文由氏は話す。塗り薬は、先発品と同じような使用感に作るのが難しいことなどから、錠剤のように多くの後発品は出ていないのが現状だという。 「製品によって使用感などが違うことを、データに基づくエビデンスとともに把握して、患者に薦めてほしい」と話す明治薬科大学の石井文由氏。 では、実際にはどのような違いがあるのだろうか。石井氏らは、ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩(商品名リンデロン-VG他)とヘパリン類似物質(ヒルドイド他)の軟膏、クリーム、ローションについて、先発品、後発品の各製品の使用感を比較した。その指標として、スプレッドメーターによる伸びと、粘度計による粘性を測定している。 その結果、ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩の軟膏では、デルモゾールG軟膏が先発品や他の後発品に比べて粘度が低かった(図2)。また、ヘパリン類似物質では軟膏やクリームで、先発品と後発品とで粘度に大きな差が出た。 図2 軟膏の粘度の比較(石井氏による) ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩の軟膏の粘度を測定した結果、他の製品に比べてデルモゾールGの粘度が低かった。 石井氏は「リンデロン-VGなどの基剤はワセリンや流動パラフィンなどだが、デルモゾールGにはこれらにミリスチン酸イソプロピルが配合されており、そのことによって粘度に違いが出たと考えられる」と説明する。 さらに石井氏は、ヘパリン類似物質を使って、粘度計やスプレッドメーターで測定した値と、健常成人100人に塗布したときの使用感の比較も行った。すると軟膏、ローション、クリームいずれも、粘度計で測定した粘度と使用感評価の「べとつき」、スプレッドメーターで測定した伸びと「伸びの良さ」には相関があった。 「例えば、粘度が低いデルモゾールGは、先発品に比べてさらっとした感触を与えるだろう」と石井氏。つまり、先発品を使い慣れている患者にとっては、デルモゾールGに変更することで「さらっとして、もの足りない」という声が出る可能性がある。逆に、先発品が「べたついて嫌だ」と感じていた患者には、デルモゾールGを薦めれば喜ばれることもあるだろう。 「後発品が良い悪いということではなく、違いを認識して使い分けたり、患者に説明することが大切」と石井氏は強調する。 軟膏の場合、基剤に使われている白色ワセリンの違いによって、刺激性にも違いが生じるようだ。クオール薬局伊勢崎店(群馬県伊勢崎市)薬局長の笹原侑祐氏は、ある医師が皮膚への刺激性の違いを問題視していることを知り、白色ワセリンについて調べた。 「白色ワセリンの刺激性を問題視する医師もいる。患者によって使い分けることも大切」と話すクオール薬局伊勢崎店の笹原侑祐氏。 その医師によれば、アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)を使用していたアトピー性皮膚炎の患者が、後発品に変えたところ、皮膚症状が悪化したという。先発品に戻すと症状は落ち着いたことから、医師は白色ワセリンによる接触皮膚炎の可能性を指摘していた。 白色ワセリンは、石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したものの総称である。精製段階において、微量の芳香族化合物、硫黄化合物、有色樹脂状物質などの不純物が残留する。これらの不純物が酸化されるなどして、皮膚に刺激を与えると考えられる。 白色ワセリンとして販売されている製品は複数あるが、実は製品によって純度が異なるといえる。高純度で知られるのは、化粧品としても販売されているサンホワイトや、医療用医薬品としても販売されているプロペトだ。しかし、添付文書などには、どの白色ワセリンを使用しているかは示されていない。 そこで笹原氏は、ステロイドに使用されている白色ワセリンの種類を各メーカーに問い合わせた。表3は、その結果の一部を抜粋したもの。後発品では、最も純度が高いとされるサンホワイトを使用した製品はなかった。 表3 基剤として使用されている白色ワセリンの種類(笹原氏の資料を一部改変) 画像のタップで拡大表示 添付文書やインタビューフォームでは、その製品がどの白色ワセリンを使っているかは分からない。笹原氏が各メーカーに問い合わせて調べた結果、後発品でサンホワイトを採用している製品はなかった。 さらに笹原氏は、サンホワイトとその他の白色ワセリンについて、太陽光による色調変化を調べている(図3)。その結果、「サンホワイトは6週間後もほとんど色調変化を起こさず、安定性が高いと考えられた」(笹原氏)という。 図3 サンホワイト(上段)とその他の白色ワセリン(下段)の色調変化(笹原氏による) 太陽光の下で肉眼で確認したが、サンホワイトは6週間経過してもほぼ色調に変化がなかった。 白色ワセリンは、接触皮膚炎を起こすことはまれで、比較的安全性が高いとされている。「多くは後発品でも特に問題ないと思うが、皮膚の状態によっては変更しない方がよい場合があることを知っておく必要がある」と笹原氏は話している。 手間が掛かる塗り薬の調剤を少しでも効率的にする方法について、皮膚科診療所の門前の薬局で日々、塗り薬の調剤を行っている2人の“達人”に聞いた。 外用薬の混合の指示がある処方箋を多く扱う薬局では、予製が欠かせない。中野ミキ薬局(東京都新宿区)もその一つだ。後ほど紹介する自動軟膏練り機を使用したいところだが、「1回に大量に調製するため、コンパクトタイプの機器では追い付かない。500g以上を1度に調製できる機器は、大きくて設置できない」と同薬局薬局長の木内洋氏。そこで、調理用の大きなボウルを使って混合している(写真1)。 写真1 大量に軟膏を練るときに使うボウルとヘラ ボールは調理用の大きなものを使用。調理用ヘラは、ヘラ部分が取れないものを選ぶのがポイント。 ボウルなので軟膏やクリームがはみ出ず、しっかり混ぜられるのが利点だ。曲線に合わせて、軟膏ヘラではなく調理用のヘラを使う。 軟膏つぼには、薬の名前のシールを作製して貼っているが、シールは薬によって色を変えている(写真2)。また、シールは蓋と容器の底の両方に貼っている。2種類の塗り薬が出た際に、蓋を間違えるのを防ぐためだ。 写真2 軟膏つぼに貼る薬の名前のシール シールは、薬によって色を変えてある。 一方、そうごう薬局草津店(広島市西区)薬局長の伊藤正博氏が薦めるのは、チューブ絞り器(写真3)。ローラー部分がプラスチック性のものと金属性のものがあるが、「金属性のものが断然、使い勝手がいい」と伊藤氏。しっかり絞れるという。 写真3 チューブ絞り器 絞る部分が金属製のものがいい。プラスチック性だと、使っているうちに緩んできてしっかり絞れなくなる。 また伊藤氏は、100円均一ショップで購入した、調理用ヘラも活用している(写真4)。入れ物の底に付いた軟膏やクリームを残さず集め取るために使う場合は、「小さめのものの方が使いやすい」(伊藤氏)そうだ。 写真4 調理用ヘラを活用 100円均一ショップで購入したヘラ。小さ目のものを用意しておくと、容器の底の軟膏を集め取るのに便利だ。 チューブ入りの軟膏やクリームをピッキングする際には、ヒルドイドローション(一般名ヘパリン類似物質)が入っていた箱を利用する(写真5 )。「手で持つとチューブを握りつぶしてしまったり、落としてしまう。カゴは大き過ぎてまとまらない。この大きさがちょうどいい」と伊藤氏。薬に貼る塗布部位のシールも、空き箱を利用して整理する(写真6)。作業をしやすくするためのちょっとした工夫が大切だ。 写真5 空き箱をピッキングに利用 ヒルドイドローション25mgが10本入っていた空き箱を、チューブのピッキングに使用している。 写真6 部位を示すシールを空き箱で整理 チューブや軟膏つぼに塗布部位を示すために貼るシールは、空き箱を利用して整理しておき、作業をしやすくしている。 自動軟膏練り機は、市販の軟膏つぼに外用薬を入れてセットすると、遠心力を使って混合する機器。100g程度の混和なら、わずか数十秒で完了する。遠心力を掛ける際に必要なバランス調整が不要の機種が登場している。 自動軟膏練り機向けの軟膏つぼ。漏れ防止の加工(赤丸部分)がある(シンリョウ TEL0120-7-11296) なんこう練太郎 NR-120 2008年に発売されたNRJ-250に比べ、ウエートバランスの調整が不要で、よりコンパクトになった。10~100g用の軟膏つぼに対応。奥行き27.2cm×横26.4cm×高さ35.1cm。 発売:2011年12月 マゼリータ KN-250F 10~100gの混和ではウエートバランスの調整が不要で、250gまではレバーでバランスを調整する。奥行き36cm×横30cm×高さ42.5cm。 発売:2011年11月 ねりロボ AB-1 容器の重量も含め20~250gの混和が可能で、自動でウエートバランスを調整する。10~100gと少量向けの機種(ABC-1、81万9000円)もある。奥行き33cm×横40cm×高さ40cm。 発売:2009年3月 ひとひ練り YS-MXO-240 遠心力を出すための駆動部分に、経年劣化しやすいベルトではなく、ギアを採用し、耐久性を高めた。最大混和重量240g、奥行き36cm×横30cm×高さ38cm。 発売:2011年9月 価格(税抜き):89万8000円 「シーボルとBタイプ」は、外用薬のチューブの口元に残った薬を押し出すのに便利(写真上、6090円)。「ねりサット」(写真下、2415円)は、ラミネート加工されたクラフト紙50枚が重ねてある軟膏板。この上で混和した後は、紙をめくって捨てるだけでよい。いずれも価格は税込み、問い合わせは大同化工(TEL06-6901-1855)。
ユベラ:リンデロンの9:1は大丈夫?
冬は平気だったのに夏では分離した!
基剤の性質を理解しよう
心配な組み合わせは薬局で観察を
「“軟膏”なのにクリーム」にも注意
希釈通りの薬効減弱にはならず
希釈して皮膚透過性が上がる例も
希釈にかかわらず1FTUを守って塗る
ステロイドの適切な塗布量とは?
メーカー希望小売価格(税込み):78万7500円
問い合わせ:シンキーなんこう練太郎係
(TEL03-5821-7455)
メーカー希望小売価格(税込み):90万3000円
問い合わせ:大同化工(TEL06-6901-1855)
メーカー希望小売価格(税込み):99万7500円
問い合わせ:マルコム(TEL03-3320-5611)
問い合わせ:ユヤマ(TEL06-6332-2556) こんなグッズも…
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