DI Onlineのロゴ画像

DI BOX/ヒヤリハット
NSAIDs貼付薬の残薬を不適切に使用
日経DI2012年12月号

2012/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年12月号 No.182

 わが国では、NSAIDsの貼付薬(テープ剤・パップ剤)が、後発医薬品やOTC薬を含めて、非常に多く販売されている。NSAIDsの貼付薬は一般に入手しやすく、変形性関節症や腰痛症などに対して気軽に使用されているが、接触性皮膚炎や光線過敏症などの局所性副作用や、アナフィラキシー様症状、アスピリン喘息、胎児動脈管収縮などの全身性副作用が発現したという報告があり、使用に際しては注意が必要である(引用文献1)。

 NSAIDs 貼付薬は、残薬が出やすく、それが患者の自宅に大量に保管されているケースがよくある。

 例えば、関節リウマチなどの慢性疾患に対して、前回処方された貼付薬を患者が使い切っていないのに、新たに同じ貼付薬が処方されることが多々ある。また、遅発性筋肉痛(筋肉痛)や指伸筋腱損傷(突き指)などの急性疾患に対して 1袋だけ処方された場合でも、包装単位が 1袋当たり5~7枚のものが大半であるため、全てを使い切らずに治療を終えるなどして残薬が発生すると考えられる。医師の処方設計や薬剤師の処方鑑査の不備が原因の場合も少なくないだろう。

 こうした残薬を患者が自己判断で使用すると、医療従事者が把握していない状況で有害事象が発現する恐れがある。さらに、残薬は薬剤費の観点からも重要な問題である。

 今回は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システム「アイフィス」に寄せられた事例の中から、NSAIDs貼付薬の不適切な使用にまつわる事例を紹介する。

 なお、筆者らが収集した服薬指導におけるヒヤリハット・ミス事例などは、無料で閲覧が可能である。入会申し込みは、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターのウェブサイト「アイフィス(薬剤師)」コーナーから。

受診ごとにケトプロフェンの貼付薬を要求

 添付文書によると、モーラステープの用法用量は、「1日1回患部に貼付する」とある。貼付枚数の制限は明記されていないが、臨床試験では、腰痛症に対しては、ケトプロフェン20mg含有テープ剤2枚を1日1回使用している。

 これに対し、ケース1の患者は、モーラステープを1回に5~6枚、1日に数回貼付していたことから、明らかに過剰使用であり、ショック、アナフィラキシー様症状、喘息発作の誘発など全身性副作用を起こす恐れがあったと考えられる。

 NSAIDsの貼付薬の不適切な使用については次のような事例もある。

 不適切な使用の原因として、医師の処方が過量であることや、薬剤師の疑義照会が不十分であること、患者が危険性を認識していないことが挙げられる。これを回避するためには、医師、薬剤師、患者が、NSAIDsの貼付薬の過剰使用による副作用の可能性と適切な使用について、認識する必要がある。

 また、薬剤師は、過量処方に対して疑義照会を行うべきである。そして、服薬指導の際に、患者が複数の医療機関で同じ薬を処方されていないか、また、自宅残薬がないかを確認する。特に、自宅残薬は他人へ供与される可能性があり、医療従事者が把握できない状況で不適切に使用される恐れがあることから、注意が必要である。

 ケース1~5のような場合、薬剤師は次のように説明すればよかった。

 「この貼り薬は、一度にたくさん使用したり、1日に何度も貼り替えると、お薬を貼った部分だけでなく、喘息発作などの副作用が起こることがあり、危険ですのでやめてくださいね。1日1回、先生から指示された枚数を貼るようにしてください。また、全ての薬について言えることですが、ご自宅に余った薬を、ご自分の判断で使用したり、家族や知り合いにあげたりしないでください。余ったお薬は薬局で回収しておりますので、よろしければ次回お持ちください」

患者の61%が貼付薬の残薬を保管

 NSAIDs の貼付薬は、残薬となって患者宅に保管されやすいといわれている。その実態を明らかにするため、最近、筆者の講座の松岡らが、NSAIDs 貼付薬の処方に対する患者の意識と自宅残薬の取り扱い実態について調査を行った。その結果、患者の61%が自宅にNSAIDs 貼付薬の残薬を保管しており、多くが将来的に必要性を感じたときに残薬を使おうと考えていることが明らかになった(図1)1)。これは、残薬が不適切な使用につながる可能性があることを示すデータだ。

図1 NSAIDs貼付薬の自宅残薬の用途(n=378、複数選択)

画像のタップで拡大表示

 調査は、過去 1 年間に医療用のNSAIDs 貼付薬を処方された経験のある患者を対象に、ウェブサイト上のアンケートで行った(回答618人)。医師が処方した貼付薬の量に対する患者の意識は、「ちょうど必要な量」との回答は41%にとどまり、「かなり多め」と「やや多め」の合計が40%だった。

 一方、医師に対して貼付薬の増量あるいは追加を要望したことのある患者は43%で、そのうち 64%が要望通りの量を処方されたと回答した。

 さらに、NSAIDs 貼付薬には副作用が発生する危険性があると思うかを尋ねたところ、24%が「副作用が発生する危険性はない」と回答した。「体にたくさん貼ると副作用が現れると思うが通常は現れない」と考えている患者は43%だった。

 その半面、実際にNSAIDs 貼付薬を使用した際に、副作用が出たことがあるか尋ねたところ、「副作用が出たことがない」と回答した患者は46%にとどまり、半数以上が何らかの症状を経験していた。症状としては、痒み40%、かぶれ40%、光に当たり湿疹やかぶれが出た4.5%などが多かった。

 また、少数ではあるものの、体がだるくなった0.6%、喘息が出た0.3%、喘息が悪化した0.2%、尿が出なくなった0.2%、胃が痛くなった0.2%など、全身性の副作用が疑われる回答もあった。ただし、症状は自己申告であり、患者の持病や服薬状況などは調べていないため、因果関係は不明である。

 不適切な使用による事故を未然に防ぐために、医療従事者は患者に対し、薬の用法・用量や副作用について情報提供を行うだけでなく、残薬が生じた場合の対処法や、残薬を使用する前に医師や薬剤師に相談すべきであること、残薬は他人に譲渡してはいけないことなども説明することが求められる。

(東京大学大学院教授 薬学系研究科医薬品情報学講座 澤田康文)

引用文献
1)医療薬学 2012;38(9):592-8.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ