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患者指導ワンポイント
Lesson8 点耳薬の使い方
日経DI2012年12月号

2012/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年12月号 No.182

 点耳薬は、薬液を外耳道から滴下して使用する薬剤である。中耳炎や外耳炎、鼓膜炎などに対して、抗菌薬やステロイドの点耳薬がしばしば処方される。感染患部や炎症部位への直接的な薬剤投与は、高い効果が期待できる、内服薬に比べて全身に対する副作用が少ない、薬が少量で済むなどのメリットがある。このほか、耳垢塞栓の場合に、軟化用点耳液(耳垢水)が使われることもある。

 中耳炎に対しては、外耳道から中耳腔に薬剤を到達させる必要がある。そのため、鼓膜穿孔がない症例には、点耳薬は無効である。

 また、外耳道に耳垢や耳漏などがあると、薬液を患部に到達させにくくなる。通常、耳垢や耳漏は診察時に医師が除去するが、中耳炎などで中耳腔にたまった膿が外に流れ出てくることもあるので、点耳前に外耳道を綿棒でそっと拭うように指導することもある。

使用前に人肌に温める

 冷えた点耳薬を滴下すると、外耳道や中耳腔周辺の温度が急速に低下し、前庭が刺激されて回転性のめまいが起きることがある。これを防ぐため、点耳薬は使用前に体温程度に温めて使用する。5分間ほど手に握っているとよいだろう。37℃くらいのぬるま湯につけておいてもよいが、ビニール袋に入れるなどして、容器のラベルをぬらさないように注意する。

 点耳の際は、治療する側の耳が真上を向くように側臥位を取る。低めの枕を当てて、頭と背骨がまっすぐになるように寝る。そして、耳介を後頭部側に軽く引っ張って外耳道をまっすぐにした状態で、なおかつ耳介を上下に動かしながら点耳すると、中耳腔に薬液が入りやすい。

 薬液への汚染を防ぐため、容器の先端が直接、耳に触れないようにして、医師の指示量を滴下する。一気に滴下すると、めまいを起こしやすいので、2秒で1滴くらいが目安だ。

 なお、中耳炎で痒みも訴える場合、抗菌薬とステロイドの2剤が処方されることも少なくない。私は、効果の優先順位を考慮して、重症の場合は抗菌薬を先に、感染が軽度で痒みが強い場合はステロイドを先に点耳するように指導している。

 小児はもちろんのこと、成人であっても、可能な限り家族などに点耳してもらってほしい。というのは、耳の上で容器が耳に触れないように保持することや、目視せずに適量を滴下することは、意外と難しいからだ。独居などで、別の人に点耳してもらうことができない場合には、どれくらいの力で容器を押すと1滴出るのかを覚えてもらってから使用してもらうようにする。

 点耳薬の多くは、少し多めに滴下しても副作用などの心配はほとんどないが、医師が処方した日数を確実に点耳するために、適量を使うように指導してほしい。

中耳腔に入れるコツ

 鼓膜穿孔の直径が1mm以下の場合は、鼓膜の表面張力により、薬液が中耳腔に入りにくい。そのような場合には、嚥下させながら滴下するとよい。また、外耳道の入り口を親指の腹で塞ぎ、ゆっくりと押しては戻す(陽圧、陰圧にする)ことを5~6回繰り返す方法も有効だ。点耳後は、十分に薬を作用させるため、約10分間そのままの姿勢を保ち、耳浴する。

 耳浴後は、清潔なティッシュペーパーなどを耳に当てて起き上がり、耳の外へ流れ出た薬液を拭き取る。薬液は無理に出す必要はないが、耳が塞がって聞こえが悪いという場合には、綿棒でそっと拭くか、プールで耳に水が入ったときに水を抜くように、どこかにつかまって片足立ちで軽く頭を振るようにすると、すっきりするだろう。

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