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OTCセレクトガイド
めまい・乗り物酔い 第15回
日経DI2012年12月号

2012/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年12月号 No.182

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 めまいは、安静時あるいは運動時に、自身の身体と周囲の空間との相互関係・位置関係の感覚が乱れて、不快に感じる状態である。

 大きく分けると、周囲や天井がぐるぐる回る回転性めまいと、身体がふらつく、まっすぐに歩けないといった浮動性めまいがある。

 回転性めまいは内耳の影響を受けることが多く、難聴や耳閉感、耳鳴りなどの聴覚症状、吐き気や嘔吐などを伴うことが多い。

 一方、浮動性めまいは立ちくらみ、頭痛、しびれなどを伴うことが多く、身体や頭を動かしたときに増強する。高齢者の浮動性めまいは、低血圧または高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患などに併発することが多い。

 めまいの原因は耳鼻咽喉科疾患、脳血管疾患など様々である。中耳炎の悪化による内耳の炎症やメニエール病、髄液の漏れによる外リンパ瘻、前庭の神経の炎症などがある。また、めまいを来す脳血管疾患には、脳梗塞や脳出血、腫瘍などによる脳の血流障害がある。

 その他には、服用中の薬剤によるも の、ストレスなど心因性によるものなどもある。

 OTC薬の適応となる代表的なめまいには、吐き気や嘔吐を伴う乗り物酔いによるめまい、ホルモンや自律神経の乱れから起こるめまいがある。

 乗り物酔いは、自動車や電車、飛行機、船などに乗った際に感じる症状で、吐き気、ふらつき、めまいや頭痛が生じ、ひどくなると頻回なあくびや唾液分泌過多、冷や汗、顔面蒼白を呈し、嘔吐に至る。

 このメカニズムとして、乗り物の上下左右の振動や、加速・停止などの揺れを感じる中で、平衡感覚を司る前庭や半規管と、目から入ってくる外界の視覚情報とのずれにより感覚が混乱することによって、めまいが起こるという説がある。

 また、乗り物に乗るという環境変化や、以前乗り物酔いをしたという緊張感から自律神経のバランスが崩れることも発症要因になるといわれる。それゆえ、内耳が未発達で、乗り物に慣れていない小児で発現しやすい。

 乗り物酔いに関しては、実際にめまいの症状が起こる前に、予防的に薬を服用するケースが多い。

 また、月経困難症や更年期による体の不調、ストレスやうつ状態から起こるめまいは、漢方薬などで血行やホルモンバランスを整えることで改善することが多く、こうした女性向けのOTC薬も複数販売されている。

 

この成分に注目

抗ヒスタミン成分

 クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、メクリジン塩酸塩、ジメンヒドリナート、プロメタジン塩酸塩など。

 クロルフェニラミンマレイン酸塩は、催眠作用により鎮静効果を発揮し、乗り物酔いの症状に効く。

 ジフェンヒドラミンサリチル酸塩は、脳幹の興奮を抑制し、内耳障害や循環障害によるめまいを抑制する。また、嘔吐中枢への刺激を阻害して迷路反応を鎮静することで、めまいに伴う悪心や嘔吐を抑制する。

 メクリジン塩酸塩は、前庭から脳幹の嘔吐中枢へ送られる電気的信号を阻害し、めまいや吐き気などの自律神経症状を抑制する。半減期が長く、効果が持続しやすい。

 プロメタジン塩酸塩は、強力なムスカリン受容体拮抗作用(抗コリン作用)により、吐き気や過剰な唾液分泌を抑制する。

副交感神経遮断成分

 スコポラミン臭化水素酸塩水和物、ロートエキス、ジサイクロミン塩酸塩、メチキセン塩酸塩など。乗り物酔いに対する「慣れ」を促進させ、感覚の混乱を防ぐ。自律神経の興奮を抑えるほか、抗コリン作用で唾液分泌も抑制する。

抗めまい成分

 ジフェニドール塩酸塩は、椎骨動脈の循環を改善し、眼振を抑制する作用を持つため、ぐるぐる回るめまいやふわっとするめまいの症状を抑制する。中枢性、末梢性の制吐作用を持つほか、眠くなりにくいという特徴がある。

中枢神経興奮成分

 ジプロフィリン、アミノフィリンなど。中枢興奮作用により、吐き気などを防ぐ。

精神運動興奮成分

 カフェイン、無水カフェイン、クエン酸カフェインなど。乗り物酔いに伴う頭痛を緩和させるほか、抗ヒスタミン成分や鎮静成分による眠気防止作用もある。

鎮静成分

 アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素など。不安や緊張を取り除き、吐き気やめまいなどの乗り物酔いの症状を抑制するほか、リラックス作用もある。

鎮吐成分

 アミノ安息香酸エチルは、胃粘膜の知覚神経麻痺作用によって、めまいから来る消化管運動や反射性嘔吐を抑制する。

漢方薬

 四物湯、苓桂朮甘湯、黄連解毒湯、半夏厚朴湯など。四物湯は血の巡りを良くして身体を温める作用を持つ。苓桂朮甘湯は水分代謝や自律神経の乱れを整える。

製品セレクト

 乗り物酔いに効く鎮暈薬は大きく分けて、催眠作用のある製品と眠くなりにくい製品に分けられる。催眠作用のある製品で薦めたいのが、アネロン「ニスキャップ」(エスエス製薬)である。

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 1日1回の服用で済む徐放性製剤で、マレイン酸フェニラミンが1カプセル中30mgと多く含まれているほか、スコポラミン臭化水素酸塩水和物などの有効成分を配合している。これらは催眠作用があることから、ゆっくり身体を休めたいという患者に向いている。

 乗り物酔いの予防には、乗車の30分前までに服用することとされている。乗り物酔いが起きてからでも、すぐに服用すれば症状を緩和することができる。食前・食後にかかわらず服用可能だ。15歳以上1日1回1カプセルで、小児は服用できない。

 小児用としては、同じブランドでアネロン「キャップ」がある。含有成分は同じだが、成人用の半量になっている。7~14歳で服用が可能。

 月経に伴うめまいには、女性薬 命の母ホワイト(小林製薬)が向いている。いらいら感や身体のだるさ、頭痛、ヒステリーを伴う患者にもよい。トウキ、センキュウ、シャクヤク、ブクリョウなど身体を温める作用のある生薬を11種類配合した錠剤で、毎食後に1回4錠を1日3回服用する。

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 180錠入り(15日分)と84錠入り(7日分)があり、7日分は“お試し用”として薦めるのによい。

 吸湿しやすい製剤のため、服用後にキャップをしっかり閉めるよう伝える。

 一方、めまいに加えて、立ちくらみもある患者には、その気つけとして、生薬製剤の救心カプセル(救心製薬)を薦めてもよいだろう。

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 同製品は、ストレスや不安感、更年期などが原因で自律神経が乱れた際に起こる息切れや動悸を主な効能とするが、患者向けの説明書によると、身体がだるくて気力が出ないような時や暑さで頭がぼーっとして意識が低下した時にも向いているという。

 心筋の収縮力を高めて血液循環を良くし、心臓の働きを助ける作用を持つセンソやゴオウに加えて、呼吸機能を高めるジャコウ、ストレスから来る神経の緊張を鎮めるレイヨウカク末、真珠など8種類の生薬を配合している。

 用法・用量は、1回1カプセルを1日3回、朝夕および就寝前に服用とされている。

こんな製品も

 乗り物酔いのめまいを予防する薬では、飲みやすさを重視する人も多い。(a)センパア液(大正製薬)は、グレープフルーツ味の液剤で、気分が悪くなった時にすぐに服用できる。

 成分として、めまいや吐き気を抑えるメクリジン塩酸塩、自律神経の興奮状態を緩和するスコポラミン臭化水素酸塩水和物を配合している。

 1箱2本入りと5本入りがあり、1日2回まで服用可能だが、追加服用する場合は、4時間以上空ける。

 11歳以上で服用できるが、11~14歳の小児に対しては保護者の指導監督の下、服用させる。

 小児から成人まで、家族で服用できる乗り物酔い薬としてお薦めなのが、(b)トラベルミンファミリー(エーザイ)である。

 オレンジ味のラムネのような口腔内崩壊錠なので、水なしで服用できるのが特徴だ。5歳以上で服用できる。用法・用量として、5歳以上11歳未満の小児は1回1錠、11歳以上は1回2錠を服用する。

 一方、眠くなると困るという患者には、同ブランドのトラベルミンRを薦めるとよい。同薬は、抗ヒスタミン成分であるメクリジン塩酸塩の代わりに、抗めまい成分のジフェニドール塩酸塩を主成分としている。無水カフェインも多く含まれている。

 口腔内崩壊錠が苦手な小児には、同じトラベルミンシリーズの(c)トラベルミン チュロップを薦めるとよいだろう。ドロップタイプなので、慌ただしい外出時にも服用させやすい。

 ぶどう味とレモン味があるので、子どもの好みに合わせて薦める。成分はともに、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩とスコポラミン臭化水素酸塩水和物である。

 5歳以上11歳未満は1回1錠で、11歳以上は1回2錠を服用する。誤嚥を防ぐため、1錠ずつ口に含むように指導する。追加服用も可能で、4時間以上置いて1日2回までとなっている。

 1包に2錠包装されているが、品質を保つため、開封したら袋の口を折り返して保管し、なるべく早く服用する。

 なお、3歳以上の小児で服用可能な薬剤としては、(d)こどもセンパアS(大正製薬)がある。3歳以上10歳未満で1錠、11歳以上14歳未満は2錠となっており、成人の服用量は設定されていない。

 成分は、塩酸メクリジンとスコポラミン臭化水素酸塩水和物で、幼児が服用しやすいように錠剤を小さくした、バナナ味の製品である。

 同ブランドには、3歳以上で服用でき、グレープフルーツ味の液剤である、こどもセンパアS液もあるので、液剤の方が服用しやすいという小児にはこちらを薦めるとよい。

 一方、更年期に伴うめまいに対しては、(e)ルビーナ(武田薬品工業)と(f)ラムールQ(ツムラ)が向いている。ともに漢方製剤だが、服用回数と服用時点が異なる。

 ルビーナは、漢方の四物湯と苓桂朮甘湯の処方を組み合わせた連珠飲に基づく処方で、トウキ、シャクヤク、センキュウ、ジオウ、ブクリョウ、ケイヒ、ソウジュツ、カンゾウから抽出したエキスを配合している。効能は、体力が中等度またはやや虚弱で、のぼせ、ふらつきがある更年期障害、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、貧血となっている。

 1回3錠、1日3回を食後すぐに服用する。独特の香味がある灰黄色~灰褐色の錠剤で、錠剤によって微妙に色が異なるが、効果に変わりはないので、販売時に伝えておくとよい。

 ラムールQは、中将湯に鎮痛作用のあるエンゴサクや鎮静効果のあるカノコソウを配合したエキスに加えて、センナエキスやビタミンを配合している。1回2錠で1日2回、空腹時または就寝前に服用する。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 めまいを感じた時に、どの診療科を受診すればよいのか迷う患者も多い。耳鼻咽喉科疾患に起因するめまいは、周囲が回っているように感じる回転性のめまいが特徴だ。めまいに加えて聞こえづらさや耳鳴りといった耳の症状があれば、耳鼻咽喉科の受診を勧める。放置により難聴になることも考えられるので、早めに受診を促す。

 ふわふわ・ふらふらする、頭痛やしびれ、麻痺を伴う場合は、脳血流の異常を疑い、速やかに救急外来や脳神経外科、神経内科の受診を勧める。

 さらに、漢方製剤を数週間服用しても特に改善が見られないような場合は、めまいの専門外来などの受診を促すことが望ましい。

副作用

 抗ヒスタミン成分を含有する製品は、催眠作用があるので、服用後の車の運転や機械類の操作などは避けるように伝える。

 このほか、抗コリン作用を有する薬剤もあるので、緑内障や前立腺肥大といった持病がある患者には、成分を確かめてから購入するよう伝える。

その他

 来局時にOTC薬で対応できるかどうか見極めるために、併用薬や基礎疾患の有無、吐き気やしびれ、痛みなど随伴症状を確認し、話が明確か、ろれつはどうか、まっすぐ歩けるかどうかなども質問して、推測することが重要である。

 また、今回紹介した乗り物酔いの薬は、複数種類を同時に服用したり、総合感冒薬などとの併用は禁忌なので、患者に伝えておくとよいだろう。

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