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リフィル処方箋と箱出し調剤が実現したら
日経DI2012年12月号

2012/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年12月号 No.182

 お薬手帳の管理に後発医薬品の普及促進、在宅医療への参画など、私たち薬局薬剤師の業務は年々変化し続けている。果たして今後は、どうなるのだろうか。今回、2つ予測してみた。どちらも薬剤師の将来を大きく左右するものだ。

 まず1つがリフィル処方箋、つまり同じ処方箋を何回も利用可能にする制度の導入である。医師が認めた場合に限るが、患者は一度リフィル処方箋を受け取れば、その後何回かは医療機関に行かなくても、薬局で同じ薬を直接受け取れる。欧米などでは、既に実施されている。

 もう1つは、箱出し調剤である。日本のように薬の箱を開けて、処方箋で指示された量だけを薬袋に詰めて投薬するという調剤の仕方は、実は先進国では珍しい。多くの国では、開封せずに箱のままで患者に渡している。日本の薬局の方がきめ細かいサービスをしているともいえるが、その手間は調剤料に反映されている。

 これらの制度の導入は、医療費抑制という点で大きな効果が期待できる。リフィル処方箋によって患者の受診頻度は減るので、医療機関の診察料や検査料を抑制できる。箱出し調剤は調剤の手間を減らすので、薬局の調剤料を抑制できる。日本の医療財政は火の車だ。いずれはこの2つが現実のものとなると、筆者はみている。

 では実際にこれらが導入されたら、薬局の現場はどう変わるだろうか。まずリフィル処方箋だが、患者がリフィル処方箋で薬を受け取る際に、健康被害を防ぐため、薬剤師が問診や簡単な検査を行うことになるかもしれない。つまり薬剤師は、血圧測定などのフィジカルアセスメントを学ぶなど、医療人としてのレベルアップが求められるようになるわけだ。

 次に箱出し調剤だが、調剤の手間が減れば調剤料は間違いなく減額される。当然、調剤が主な収益源だった薬局は、他で収益を上げる方法を探さねばならなくなる。そうなると薬剤師は、薬局という商店の営業担当として、患者を集め、自費商品の販売なども含めて収益を上げる方法を考え出す必要が出てくる。商売人としてのレベルアップが求められるようになるといえよう。

 リフィル処方箋と箱出し調剤がどちらも導入されている国もある。それは、その国における薬局薬剤師の立場と職能が確立している証明ともいえる。院外処方箋の歴史が短く、薬剤師は医療人なのか商売人なのか曖昧なままで、その職能まで疑問視されるような日本では、導入したらどうなるか、慎重に考えなければならない。

 実際のところ、リフィル処方箋の導入には、医師会の猛反発が予想される。患者の受診抑制につながり、自分たちの取り分が減る恐れがあるとなれば、黙ってはいまい。また箱出し調剤の導入には、調剤報酬制度はもちろん、処方箋の書き方や医薬品の流通業界にも大きな変革が迫られる。調剤料が減額されれば、薬剤師の給与は引き下げ、最悪リストラだ。よって、実現にはかなりの紆余曲折が予想される。

 何でも海外のまねをすればいいというわけではない。しかし今でも、窓口で前回と同じ内容の処方箋を患者に手渡すだけの「無診察医療」は行われているし、調剤料の計算は、薬剤師でもその合理性を説明できないほど複雑怪奇になっている。この状況を放置しているのは、行政や医療関係者の怠慢といえないか。

 筆者が考える理想像は、リフィル処方箋と箱出し調剤がともに実現し、医療人かつ商売人としてバランス良く進化した、柔軟で幅のある薬局薬剤師の姿である。願わくば給料も今より少しは上がってくれればよいが、それは期待薄だろうか。 (みち)

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