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原疾患と蛋白尿も考慮して重症度を分類
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は、原疾患にかかわらず、腎機能が慢性に低下した状態を指す。CKDの定義は、(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らかで、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)がある場合、(2)糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が60mL/分/1.73m2未満─のいずれか、または両方が3カ月以上持続する状態とされている。

 現在、わが国のCKD患者は、成人人口の約13%に当たる1330万人、実に成人の8人に1人に上ると推定されている。CKD発症の危険因子として、高齢、CKDの家族歴、過去の健診における尿異常や腎機能異常、腎形態異常、急性腎不全の既往、尿路結石、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの常用薬などが挙げられる。また、最近では、特に脂質異常症、高尿酸血症、高血圧、耐糖能障害、糖尿病、肥満およびメタボリックシンドロームなどの生活習慣病との関連が注目されている。

 CKDの診療については、日本腎臓学会が、かかりつけ医を対象として『CKD診療ガイド』を2007年に作成し、09年に一度改訂している。本稿では、12年の改訂のポイントとCKD患者に薬物治療を行う際の注意点を中心に紹介する。

1.改訂のポイント

 今回の改訂のポイントは、(1)従来のGFRによる評価に加えて、原疾患や蛋白尿の程度も考慮して重症度を分類するようになった、(2)重症度分類を行う際に、患者の筋肉量などに影響を受けにくい血清シスタチンC値から算出した推算GFR(eGFRcys)も利用できるようになった、(3)CKD患者の血圧管理目標や降圧薬の選択が変わった─の3点である。

・重症度分類

 腎臓病診療の国際的ガイドラインの作成に取り組む国際機関KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)は、09年に世界中のコホートから約156万人を集めてCKDの定義と重症度分類の再評価を行った。その結果、これまで使用してきたeGFRに加えて、アルブミン尿と蛋白尿も独立した危険因子であることが明らかになった。

 同時に、CKDのリスクは原疾患の有無により大きく異なることも判明。これらの結果を受けて、12年よりKDIGOのCKDの重症度分類は原疾患(cause:C)、腎機能(GFR:G)、蛋白尿(アルブミン尿:A)のCGA分類で記載されるようになった。

 『CKD診療ガイド2012』では、このKDIGOの重症度分類を取り入れた。具体的には、CKD重症度を原疾患とGFR区分、蛋白尿区分で分類した(表1)。これにより、例えば糖尿病と診断されていてGFR区分が60~89mL/分/1.73m2、尿アルブミン/Cr比が300mg/gCr以上の患者は「糖尿病G2A3」というように表記するようになった。

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・腎機能の評価

 これまで腎機能の評価法としては、血清クレアチニン(Cr)値を基にした推算糸球体濾過量(eGFRcreat)を使用していたが、筋肉量や食事量、運動量が標準でない患者では正確にGFRを推算できないという問題があった。そのため、今回の改訂では、これらの影響を受けにくい血清シスタチンC(Cys-C)値からもeGFRcysとして算出し重症度分類ができるようにした。

・血圧管理目標や降圧薬の選択

 CKDにおける降圧の意義は、CKDの進行を抑制して末期腎不全を予防することと、心血管系疾患(CVD)発症や死亡のリスクを軽減することである。CKDの治療に当たっては、まず減塩、さらには禁煙や体重減量など生活習慣の改善が重要であり、その上で薬物療法を行う。

 改訂では、CKD患者の血圧管理目標が変わり、従来の「尿蛋白1g/日以上の場合、血圧は125/75mmHg未満にする」という基準がなくなり、全て130/80mmHg以下にするよう統一された。ただし、65歳以上の高齢者CKDでは、病態に応じて過剰な降圧は避けることとされた。

 また、CKDの第一選択薬はレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬のみだったのが、正常蛋白尿の糖尿病非合併CKD患者では、降圧薬の種類は問わず、患者の病態に合わせて降圧薬を選択するようになった。CKDを合併した高血圧に対する降圧薬の選択は、図1の通りである。

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 また、現在、新規透析導入の原因疾患で最も多いのは、糖尿病腎症である。そのため、CKDの治療においては、血糖管理も非常に重要である。糖尿病を合併したCKDにおける血糖の管理目標は、HbA1c 6.9%(NGSP)未満となっている。

 同時に、CKDでは脂質異常症の治療により、蛋白尿の減少と腎機能の低下を抑制できる可能性もある。CKD患者に対しては、LDLコレステロールは120mg/dL未満(可能であれば100mg/dL未満)に管理する。

 このほか、CKDの患者の貧血に対する管理基準も変わった。腎機能が低下すると、腎臓から赤血球の産生を促進するエリスロポエチンの分泌が低下して貧血になる。そのため、CKD患者には貧血についての検査も行う必要がある。

 貧血があれば、消化管出血を除外し、鉄欠乏の評価と鉄補充を行う。赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)の開始時期と投与量は、腎臓専門医に相談して決定する。Hb濃度10g/dL以下から投与を開始し、治療目標値はHb10~12g/dLとし、12g/dLを超えないよう配慮する。

2.CKD患者への薬物治療の注意点

 薬剤師にとっては、ガイドの22章「CKDにおける薬物治療の注意」も参考になるだろう。腎機能が低下している場合、腎排泄性の薬物を服用すると、その血中濃度が上昇し、薬効の増強や副作用の頻度が増大する。そのためCKD患者では、原則として腎排泄性の薬物を避け、非腎排泄性の代替薬や腎排泄の寄与の少ない薬物を選択することが望ましい。同ガイドでは、腎機能が低下した患者に腎排泄性薬物を使用する場合は、腎機能に応じて1回投与量を減らすか、投与間隔を延長する必要があるとした。

 具体的な薬物投与方法は、腎臓専門医に相談しながら、添付文書などを参考にして決定する。また、通常、CKDの診療で使用するeGFR(mL/分/1.73m2)は、標準的な体表面積における値を示しているが、薬物の投与設計では必ず、腎機能を体表面積補正していないeGFR(単位mL/分)の値で評価する。体表面積補正をしないeGFR(mL/分)は、患者のeGFR(mL/分/1.73m2)値に係数を掛けることで計算できる。係数は早見表としてガイドに掲載されている。

 そのほか、同ガイドでは、NSAIDsや抗菌薬の一部など、CKDで注意が必要な薬物と病態を挙げている(表2)。例えばNSAIDsは、プロスタグランジン(PG)の低下から腎虚血になり、腎前性急性腎不全や急性尿細管壊死を来すことがある。また、抗菌薬は、腎排泄性のものが多いため、GFR低下例では減量を検討する。

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 参考データとして、薬剤ごとに、腎機能の低下時の投与量を紹介した「腎機能低下時の薬剤投与量」(監修:日本腎臓病薬物療法学会)の付表が掲載されているので、こちらも利用するといいだろう。

(東京慈恵会医科大学付属病院薬剤部 北村正樹)

1)日本腎臓学会「CDK診療ガイド2012」.
2)薬局2012;63:3043-9.
3)日医雑誌2012;141:830-1.

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