今春、政府の後発品の使用促進策として、後発医薬品調剤体制加算が改定され、さらに一般名処方に対する加算も新設された。これらのインセンティブによって、後発品の使用はどれくらい進んだのだろうか。 本誌が2012年10月に実施した調査の結果、後発医薬品調剤体制加算を算定しているとの回答は72.3%に上った(Q1)。今年4月の時点(本誌2012年5月号特集「調剤報酬改定 現場の声」での調査)では66.0%だったので、6.3ポイントの増加だ。中でも19点を算定している薬局は、4月時点の23.4%から今回は30.9%に達した。 Q1.あなたの薬局では、2012年10月現在、「後発医薬品調剤体制加算」は何点ですか。 72.3%が後発医薬品調剤体制加算を算定している。 また、薬局での調剤における後発品の占める割合を数量ベースで尋ねたところ、調剤報酬改定前は「20%以上~25%未満」にあったピークが、現在は「35%以上~40%未満」に移るとともに、全体的に増加方向にシフトしていることが明らかになった(Q2)。 Q2.あなたの薬局における後発品の占める割合(数量ベース)はどのくらいですか。 全体的に後発品の占める割合が高い方向にシフトしている。 一般名処方に対する加算とは、一般名を含む処方箋を発行した医療機関に対し、処方せん料に2点を加算するというもの。この2点を算定しようと考えた医療機関が、一斉に一般名処方に切り替えた結果、一般名を含む処方箋が急増している。 診療報酬改定前は「0~5%未満」との回答が約8割(491人)を占めていたが、今年10月には約2割(117人)まで減少。一般名を含む処方箋の割合が一気に増えた(Q3)。「80%以上~90%未満」と「90%以上~100%」とを合わせると107人で、回答者の17.0%に上った。 これだけ一般名処方の処方箋が増えれば、後発品の占める割合が増えるのも当然だ。以上の結果から、今春の改定は後発品使用を大きく促進させたといえるだろう。 Q3.あなたの薬局において、「一般名」で処方されている薬剤を含む処方箋の割合はどれくらいですか。 一般名処方が占める割合が一気に増え、0~5%未満が激減している。 より身近になった後発品を販売している企業に対し、薬剤師はどのように感じているのだろうか。後発品の企業名を具体的に挙げ、その中から好感を持っている企業を選んでもらう「好感度調査」の結果、沢井製薬が3年連続でトップに輝いた(表1)。 表1 好感を持っている後発品企業TOP10 n=754、無回答0、複数回答。支持率は、好感を持っていると回答した割合。 この好感度調査は、本誌が2010年から実施しているもので、今年で3回目を数える。集計の結果、1位の沢井製薬、2位の日医工、3位のエルメッドエーザイ、4位の東和薬品は、3年間順位に動きはなかった。 今回目立ったのはファイザーで、前回の29位から5位に急浮上した。また、前回10位だった第一三共エスファが順位を2つ上げ、8位に上昇した。 一方、前回5位だったMeiji Seika ファルマは5位から6位に、田辺三菱製薬は7位から9位に、あすか製薬は6位から10位に順位を下げた。 前回調査で8位の興和テバと9位の大洋薬品工業が統合して誕生したテバ製薬は7位だった。 なお、これらの順位は「支持率」であり、実際に薬局で採用している「採用率」とは必ずしも一致しない。採用率は5割に達していない第一三共エスファやファイザーが、好感度ランキングでは上位に食い込んだ。 調査では、さらに、好感を持つ理由について、「大企業だから」「取扱品目が多いから」など17の選択肢を提示し、複数回答で選んでもらった。それを、支持率上位12社について集計したのが表2だ。各項目について上位3社を赤色で表記した。つまり赤色の数字が多い企業ほど、薬剤師がその企業を強く認識しているというわけだ。 大手の沢井製薬、日医工、東和薬品は、取扱品目の多さ、供給の安定性が高く評価された。薬剤師が後発品を選ぶ際に最も重視しているのは「供給が安定しているかどうか」であり(Q4)、これら大手3社が常にランキング上位にいるのもうなずける。 Q4.新たに備蓄する後発品を選ぶ際、一般にどのような点を重視していますか。 薬剤師は、供給の安定性と企業への信頼度を重視して後発品を選んでいる。 3位のエルメッドエーザイは、「後発品に、先発品にはない特徴がある」「品質が信頼できる」という点で評価されている。 5位のファイザー、6位のMeiji Seika ファルマは、「先発品も作っている」「自社製品の臨床データを持っている」という実績に加え、DI情報の充実やMRの訪問、情報提供など、情報発信能力が高く評価された。 これらに加えて、Meiji Seika ファルマは「先発品と大きさや形が似ている」「先発品にはない特徴がある」など、ファイザーは「薬価が安い」など、両社ともに17項目のうち、9項目が上位3位に入った。このほか12位の日本ケミファは情報提供の項目の高さが目立っている。 下記では、具体的に後発品をどのように選んでいるのか、自由記述欄に書かれた回答から紹介しよう。 後発品、私の薬局ではこう選んでいます 今回の調査では、後発品を選択する際のプロセス、選択するに当たって留意していることを聞いた。多数寄せられた回答の中から一部を紹介する。 ・門前の医院が採用している銘柄を確認してから、供給の安定性、品質、市場シェアなどの情報を卸に聞いて決定している(50代女性、管理薬剤師) ・安定供給が一番。次に、自社で臨床データを持っている、あるいは製剤上の工夫を凝らすメーカーの商品が候補に挙がる。価格差は結果的にあればよい(30代男性、管理薬剤師) ・県内の薬剤師会に登録している薬局の備蓄医薬品がリアルタイムで分かるので、各薬局の採用状況を考慮して、安定供給、品質の保証をしっかり見極めて採用している(30代男性、薬局勤務) ・診療所の門前薬局なので、医師を頻繁に訪問しているメーカーを優先し、次に卸の推奨商品、関連雑誌で評価の高いものを選ぶ(50代男性、管理薬剤師) ・基本的に品質重視だが、実際に比較するのは難しいので、最も信頼できる近隣医療機関の薬剤部が採用している商品を参考に選定している(40代男性、管理薬剤師) ・他店からヘルプに来た薬剤師にも分かりやすいように、「一般名+メーカー名」の商品を選ぶ(20代男性、管理薬剤師)
・(販売企業でなく)製造企業ごとに仕分けた後、製剤の評価(溶出、血中濃度、無包装時の安定性、簡易懸濁など)を行う。そしてPTP、ヒートや外観、価格などを勘案して総合的に決める(40代女性、管理薬剤師) ・先発品からの切り替えの際、患者に違和感を与えないという観点から、外観が先発品と似ている商品を選ぶ(30代男性、管理薬剤師) ・口腔内崩壊錠(OD錠)は製剤見本を取り寄せて、味で決める(30代男性、管理薬剤師) ・まずは、その薬が誰にどれだけ出ているか、その患者が後発品を希望しているかを確認し、後発品自体を採用するかどうか決める。次に、MRが情報提供に来ている企業の商品の中から候補を選ぶ。品質情報を確認し、問題なさそうなら、卸に見積もりを出してもらい、薬価と薬価差益の両方を考慮して決定する。規格違いでメーカーを変えることもある(30代男性、管理薬剤師) ・できる限り医薬情報担当者(MR)と話をして、賦形剤までチェックする。シートの色や形状も大きな判断基準(30代女性、経営者) ・廃棄分が少なくなるよう、包装単位が少ない商品を選択する(40代男性、管理薬剤師) 【調査の概要】 調査概要 【性別】男性:445人(59.0%)、女性:305 人(40.5%)、無回答:4人(0.5%) 【年齢】29歳以下:88人(11.7%)、30歳代:268人(35.5%)、40歳代:221人(29.3 %)、50歳代:144人(19.1%)、60歳以上:31人(4.1%)、無回答:2人(0.3%) 【薬局薬剤師】631人。うち経営者:81人(12.8%)、管理薬剤師:322人(51.0%)、管理薬剤師以外の勤務薬剤師:228人(36.1%) 【病院・診療所の薬剤師】123人。病床数は無床:5人(4.1%)、1~19床:2人(1.6%)、20~99床:22人(17.9%)、100~199床:25人(20.3%)、200~299床:15人(12.2%)、300~499床:36人(29.3%)、500床以上:18人(14.6%)
9割以上が一般名の薬局も
企業ランキング上位は不動
採用率は、自薬局で1品目でも備蓄していると回答した割合。詳細は表2参照。 供給の安定性を最も重視
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