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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)メタボ患者にリピディルが追加された理由
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

出題と解答 : 渋谷 泰史
(アイ調剤薬局[東京都中央区])

A1

(1)高尿酸血症・痛風患者は、メタボリックシンドロームを高頻度で合併している。
(3)リピディル(一般名フェノフィブラート)は、高トリグリセリド血症と高尿酸血症の合併例に有効とされる。

 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)に加えて、脂質異常(トリグリセリド[TG]150mg/dL以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dL未満)、高血圧(収縮期130mmHg以上かつ/または拡張期85mmHg以上)、高血糖(空腹時血糖110mg/dL以上)のいずれか2つ以上を併せ持つ状態を指す。メタボリックシンドロームの患者では、動脈硬化が進みやすく、脳・心血管系疾患の発症リスクが高くなる。

 血清尿酸値は、メタボリックシンドロームの診断基準に含まれていないが、尿酸値が高いほどメタボリックシンドロームの頻度は上昇し1)、わが国では痛風患者の37%にメタボリックシンドロームが認められたとの報告もある2)。逆に、メタボリックシンドロームの診断基準に該当する項目が多いほど、尿酸値が高くなることも示されている。ただし尿酸高値が心血管系疾患の独立した予測因子になるか否かについて、明確な結論は得られていない。

 メタボリックシンドロームの治療の基本は、食事や運動、喫煙などの生活習慣を見直し、内臓脂肪を減らすことにあるが、効果が見られない場合は薬物療法を併せて行う。その際は、前述の理由から、血清尿酸値の低下も念頭に置く必要がある。

 今回、Sさんに処方されたフェノフィブラート(商品名リピディル他)は、肝細胞の核内受容体であるペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)αを活性化して蛋白質の発現を調節することにより、LDLコレステロールおよびTGを低下させるとともに、HDLコレステロールを上昇させる作用がある。

 さらに同薬は、血清尿酸値低下作用を有することも知られている。実際、脂質異常症と高血圧を合併する高尿酸血症・痛風患者を対象に行われた研究で、患者が服用していた尿酸生成抑制薬のアロプリノールまたは尿酸排泄促進薬のベンズブロマロンをフェノフィブラートへ変更しても、血清尿酸値に有意な変化は見られず、良好なコントロールを維持できたことが報告されている3)。また、フェノフィブラートはベンズブロマロンと同様、近位尿細管において尿酸の再吸収を担う尿酸トランスポーター(URAT1)の作用を抑制することで、尿酸値を低下させることも示唆されている4)

 日本痛風・核酸代謝学会が2010年にまとめた『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』において、フェノフィブラートは、高TG血症と高尿酸血症の合併(特に尿酸排泄低下型高尿酸血症の合併)に対して有効であるとされている(推奨度A:行うよう強く勧められる)。

 これらの知見に加えて、投与する薬剤の種類は少ない方が副作用のリスクや患者の自己負担額の軽減を期待できることから、Sさんの主治医はフェノフィブラートを選択したと考えられる。

1)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』(2010)
2)痛風と核酸代謝. 2008;32:25-31.
3)Progress in Medicine. 2005;25:2185-8.
4)Intern Med. 2010;49:89-94.

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 先生からお聞きになった通り、Sさんのように高血圧と脂質異常症を合併していると、心臓の病気が起こりやすくなるといわれています。今回追加されたリピディルというお薬には、LDLコレステロールやトリグリセリドを下げる効果があります。成分は1種類しか入っていませんが、最近の研究で、尿酸値を下げる効果もあることが分かっているので、先生はそれらの2つの効果を狙って処方されたのでしょう。服用する薬の種類はできるだけ少ない方が、副作用のリスクが減りますし、薬代が安く済むというメリットもあります。

 ただし、治療の基本は、バランスの良い食事と適度な運動です。「お薬を飲んでいるから安心」と油断せず、これまで通りしっかり続けてくださいね。

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