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DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)海外旅行に行く膵癌患者
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

出題と解答 :安 武夫
(湘南鎌倉総合病院[神奈川県鎌倉市]薬剤部)

A1

医療用麻薬を携帯して海外へ渡航するための手続きを済ませているか、確認する必要がある。申請書は出国の2週間前までに地方厚生(支)局へ提出しなければならない。

 膵臓は、胃の後ろにある約100gの小さな臓器である。この膵臓に発生する膵癌は、予後が非常に悪い癌として一般に知られている。その原因は、(1)胃や十二指腸、小腸、大腸、肝臓など様々な臓器に膵臓が囲まれているため発見しにくい、(2)腫瘍が小さくてもリンパ節や肝臓に転移したり腹膜播種を起こしやすい、(3)早期には特徴的な症状が出にくい─などが挙げられる。このため多くの場合、膵癌が見つかった時点では、既に病期が進行してしまっている。

 膵癌の治療法には外科療法、放射線療法、化学療法などがある。腫瘍が小さく、血管や後腹膜への浸潤が少ない場合は手術での切除が望めるが、そのような患者は少数にすぎない。

 化学療法は、手術が適応とならない膵癌患者や、術後患者などに行われる。ゲムシタビン塩酸塩(商品名ジェムザール他)の場合、週1回、3週にわたって投与し、4週目は休薬するというサイクルを繰り返す。投与は、病態が明らかに進行するまで継続される。ただし、化学療法の効果は症状緩和や生存期間の延長など、限定的なのが現状である。

 膵癌の激しい背部痛などには、医療用麻薬が使われる。Aさんにも定期使用のためのオキシコドン塩酸塩水和物の徐放錠(オキシコンチン)と、突出痛に対応するためのオキシコドン塩酸塩水和物の速放性製剤(オキノーム)が投与されている。Aさんは翌月に海外旅行を予定しているが、これらの医療用麻薬は海外旅行中も必須の薬剤といえる。

 ただし、治療目的とはいえ医療用麻薬を海外に持ち出す際は、地方厚生局に申請書類を提出し、事前に許可を得ておかなくてはならない。服薬指導時は、Aさんが所定の手続きを行ったかどうか確認しておくべきだろう。

 具体的には、地方厚生局麻薬取締部のウェブサイトで「麻薬携帯輸入(輸出)許可申請書」をダウンロードして印刷し、医療用麻薬の薬剤名や数量、使用目的、出国する理由などを記入する。これに医師の診断書を添えて、渡航の2週間前までに地方厚生局に提出する。申請が許可されれば、麻薬携帯輸入(輸出)許可書が日本語、英語で各1通ずつ患者に交付される。出入国時は、税関でこれらの許可書を提示する必要がある。

 一方、Aさんにはエチゾラム(デパス他)も処方されている。医療用向精神薬を海外に持ち出す際は、地方厚生局長の許可は必要ないものの、総量が一定量を超える場合は、処方箋の写しや、向精神薬の薬剤名と数量などを記した医師の証明書を所持する必要がある。エチゾラムは「麻薬及び向精神薬取締法」で指定された向精神薬には当たらない。従って日本からの持ち出しに特に規制はないが、渡航先によっては精神安定薬や特定の薬の持ち込みを規制している場合がある。渡航先でトラブルに巻き込まれないためにも、今回の処方薬を持ち込むことが可能か、事前に渡航先の在日大使館に問い合わせて確認するよう、Aさんに伝えておくとよいだろう。

1)厚生労働省「医療用麻薬適正使用ガイダンス」
2)日本膵臓学会「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2009年」

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 海外旅行に行けることになって本当に良かったですね。ただ一応、現在ご使用中のオキシコンチンとオキノームについて確認させてください。これらは医療用麻薬ですので、海外に持って行くには手続きが必要となるのですが、もうお済みでしょうか。

 出国の2週間前までに、申請書と医師の診断書を地方厚生局に提出し、許可書をもらわなくてはなりません。出入国時は、税関で許可書を提出します。具体的な手続きは、地方厚生局のウェブサイトで確認できますが、必要でしたら薬局で調べて申請書をお渡しすることもできます。

 今回処方されたお薬の中で、オキシコンチンとオキノーム以外のお薬は、事前の許可は必要ありませんが、渡航先の国で持ち込みを規制している薬があるかもしれません。処方薬の持ち込みが可能か、渡航先の在日大使館で確認した方がよいと思います。

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