DI Onlineのロゴ画像

OTCセレクトガイド
頻尿・残尿感 第14回
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 冬に向かい、気温が下がってくると、頻尿、残尿感、尿の切れが悪い、排尿時痛、尿漏れなど、男女にかかわらず泌尿器系の症状を訴える患者が増えてくる。

 こうした症状は、「年のせいだから仕方ない」と放置している患者も多いが、OTC薬を求めて薬局を訪れる患者は少なくない。

 健康な成人の排尿回数は、1日(日中)で7回程度とされる。摂取した水分量や個人によっても差があるが、一般的に頻尿とは、日中に8回以上、夜間1~2回以上の状態をいう。

 頻尿や残尿感の原因は、加齢による膀胱機能の衰え、ストレスによって突然強い尿意を感じる過活動膀胱、排尿時や排尿後に痛みを伴う細菌性膀胱炎、前立腺肥大、心不全など様々であるが、OTC薬の適応となるのは、ストレス性の尿意切迫感や加齢による膀胱機能の低下の軽度な状態である。

この成分に注目

 頻尿や残尿感に対するOTC薬には、フラボキサート塩酸塩と漢方製剤、生薬がある。

 フラボキサート塩酸塩は、医療用医薬品(商品名ブラダロン他)の成分で、2008年にスイッチOTC化された。12年8月には、第1類医薬品から指定2類医薬品となった。

抗コリン成分

 フラボキサート塩酸塩は、膀胱で尿が充満したときの平滑筋の律動収縮を抑制し、膀胱支配神経の興奮による膀胱収縮を緩解する。

 また、膀胱平滑筋に対してはカルシウムイオンの流入抑制、ホスホジエステラーゼ阻害により、弛緩作用を示す。抗コリン成分のパパベリンとは異なり、平滑筋に対してはその緊張性を保ち、排尿力を低下させないという特徴がある。

 なお、医療用の過活動膀胱治療薬であるコハク酸ソリフェナシン(ベシケア)、酒石酸トルテロジン(デトルシトール)などの抗コリン薬よりも効き目はマイルドである。

 フラボキサート塩酸塩の医療用医薬品であるブラダロンには、男性の適応もある。だが、前立腺肥大などの排尿障害に対して投与すると、排尿筋を弛緩させる作用で薬剤性の慢性尿閉を起こす恐れがあるため、OTC薬では、女性のみの適応となっている。

漢方製剤

 八味地黄丸、牛車腎気丸、清心蓮子飲、猪苓湯、五淋散、六味丸、桂枝茯苓丸など。

生薬

 ジオウは、漢方製剤の八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸に含まれ、腎陰の滋養強壮作用、解熱作用を持つ。

 サンシュユは、降圧、利尿作用が特徴で、サンヤクは滋養強壮作用がある。

 ブクリョウは、副交感神経を抑制し、利尿作用を持つことで知られ、清心蓮子飲や猪苓湯にも含まれる。

 そのほか、膀胱炎の症状には、抗炎症作用のあるカッセキやオウゴンなどがよいとされる。

 シャクヤクには、鎮痛・鎮痙作用、平滑筋弛緩作用がある。

製品セレクト

 女性の患者で心因性の頻尿であれば、フラボキサート塩酸塩の単味製剤であるレディガードコーワ(興和)を薦める。

画像のタップで拡大表示

 用法・用量としては、1回1錠を1日3回で、服用間隔は4時間以上空けることとされている。

 ただし、15歳未満の小児や、日中には症状がなく就寝中のみ頻尿がある人、発症が急性(発症後1カ月以内)の場合には使用できない。また、胃痛鎮痛鎮痙薬、ロートエキス、乗り物酔いの薬、鼻炎用内服薬やかぜ薬を飲んでいるときは、服用を避ける。

 また、1週間服用しても改善が見られなければ受診するよう指導する。効果があっても1カ月以上の長期連用はしないように伝える。

 PTPシートの20錠入りで、観劇や旅行など外出時に携帯するのに便利である。

 なお、医療用医薬品のフラボキサート塩酸塩の添付文書によると、最高血中濃度到達時間(Tmax)は1.4±0.3時間で、血中濃度半減期(T1/2)は2.2±2.7時間である。患者によって効果の感じ方が異なり、すぐに効果が見られないこともあるので、最初は失禁用パッドとの併用を勧めるとよいだろう。

 頻尿・残尿感の改善効果を狙ったOTC薬の多くは、生薬や漢方製剤の製品が占める。

 男女ともに服用できる製品でお薦めしたいのが、指定第2類医薬品のハルンケアゼリー(大鵬薬品)である。漢方製剤の八味地黄丸に含まれている8つの生薬(ジオウ、ボタンピ、サンシュユ、ケイヒ、タクシャ、ブクリョウ、サンヤク、炮附子)を抽出・濃縮し、エタノールを加え、デンプンなどを分離除去した後、エタノールを除去したエキスを配合したゼリータイプの製剤である。

画像のタップで拡大表示

 適応となるのは、女性の場合は切迫性尿失禁などの軽度な尿漏れや頻尿、男性では尿の切れが悪い、少し力まないと尿が出にくいといった軽い症状が対象となる。体力の低下、下半身の衰え、手足の冷えを伴う症状に効く。

 顆粒の漢方製剤が飲みにくかったり、入れ歯に顆粒が付着するのを嫌う患者、同じハルンケアのドリンクタイプを飲むとむせるという方に薦めたい。

 1包は14g入りでスティック状の包装となっており、携帯しやすく、水なしでも服用可能である。

 用法・用量は、15歳以上の成人で1回1包を1日2回、朝夕食前または食間に服用する。15歳未満の小児は服用できない。

 一方、頻尿や残尿感を訴える患者の中には、膀胱炎やむくみを伴う患者もいる。腎仙散(摩耶堂製薬)は、こうした患者にお薦めの製品で、利尿作用や抗炎症作用を持つシャゼンシやシャクヤク、ウワウルシなど15種類の生薬を配合した散剤である。

 用法・用量は、成人の場合、1回1包を1日3回、食間に服用する。4歳以上の小児も服用可能で、年齢に応じて1包を分けて飲ませる。

画像のタップで拡大表示

こんな製品も

 頻尿・残尿感を訴える患者向けの漢方製剤である八味地黄丸を配合している商品には、(a)ジェントスルーコーワ細粒(興和)と(b)ベルアベトン(クラシエ薬品)がある。

 効能・効果として、やや虚弱で疲れやすく、口渇がある人の頻尿、残尿感、排尿困難、軽い尿漏れなどに用いることができる。

 前者は非常に細かい細粒で、後者は裸錠タイプである。粉が飲めない、または口渇を感じて飲みにくい場合は、ベルアベトンがよい。

 (c)ユリナールJ(小林製薬)は、清心蓮子飲エキスを配合している。体力がやや虚弱で、不安やいらいらなどの神経過敏、疲れやすい、口渇を感じるという患者に向いている。

 パッケージで、「夜2回以上トイレに行く」(夜間頻尿)をアピールしているが、腹部に力を入れると尿が漏れるといった腹圧性の尿失禁、残尿感、尿の切れが悪い患者にもよい。

 同ブランドの顆粒はシナモンバニラ味なので、漢方の風味が苦手な患者にも飲みやすい。

 排尿時の痛みがあるという患者に薦めたいのは、(d)ツムラ猪苓湯エキス顆粒(ツムラ)および、五淋散を配合している(e)ボーコレン(小林製薬)である。

 猪苓湯は、体力中程度で喉の渇きがあり、下半身のむくみ、尿量が少ない残尿感や排尿困難、排尿痛、頻尿の患者に向いている。

 ボーコレンは、体力が中程度で、残尿感や排尿痛、頻尿、尿の濁りがある症状に。5歳以上から使用可能である。

 下半身のむくみも気になる患者には、(f)おうちでメディキュットロング(レキットベンキーザー・ジャパン)のような弾性ストッキングの使用も併せて勧めるとよい。同製品は一般医療機器である。

 日中の立ち仕事などで下肢がむくみやすい人は、横になった夜間に体内中の水分が排泄されるので、夜間に頻尿になることがある。弾性ストッキングなどむくみを軽減するグッズを帰宅後に使用し、ふくらはぎの筋肉を使うなどすると、排尿が促され、夜間頻尿が軽減することがある。

 頻尿や残尿感を訴える患者は、軽い尿漏れにも悩んでいることが多い。こうした訴えを聞いたら、(g)ライフリー さわやかパッドスリム(ユニ・チャーム)などの失禁用パッドをさりげなく薦めてもよいだろう。

 こうしたパッドは、尿量に対応して複数のタイプが発売されているが、同製品は厚さが4mmと薄いため使用していることも分かりにくく、尿の吸収量が比較的多いという特徴がある。サイズは生理用のナプキンと比べると若干大きいが、生理用に見えるので、女性は携帯しやすいだろう。

画像のタップで拡大表示

患者へのアドバイス

受診勧奨

 日中の頻尿は、加齢による膀胱の機能低下や、ストレスなどによる過活動膀胱であることが多い。こうした症状が長く続くようなら、受診を促す。

 また、「就寝中に何度もトイレに行く」という夜間の頻尿では、心不全、慢性腎不全、前立腺肥大などの初期症状の恐れもあり、同様に受診を勧める。

 頻尿や残尿感だけでなく、排尿時や排尿後の痛みは、細菌性膀胱炎の恐れがあるので、受診するよう伝える。

 頻尿を訴える患者では、尿漏れ(失禁)も見られることが多い。失禁には主に切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁に分けられる。

 膀胱の容量は約350~450mLで、その半分程度で尿意を感じ、約250mLを超えるとトイレに行きたいと感じるようになるといわれる。

 切迫性尿失禁は、それよりも少ない量しか膀胱にたまっていないのに、尿意を感じ、トイレに行くのが間に合わないという状態だ。軽い症状であればOTC薬の適応であるが、1週間(漢方製剤の場合は1カ月間)服用しても改善しない場合は、泌尿器科への受診を勧める。 

 健常人の1日の尿量は約1.2~1.5Lであるが、1日当たりの尿量が以前より極端に少ない乏尿の場合は、前立腺肥大や腎不全などが考えられる。逆に3L程度と極端に多い場合は、糖尿病や高カルシウム血症、低カリウム血症、慢性腎盂腎炎による尿崩症の可能性もあるので受診を促す。

 尿に濁りがある場合は、膀胱炎や尿道炎などの細菌性疾患の可能性がある。血尿に加えて脇腹や下腹部の痛みを伴う場合は尿路結石が疑われる。茶褐色の尿は、横紋筋融解症の疑いもあるので、服用中の薬剤を確認する。

 尿の泡立ちが消えない場合は、糖尿や蛋白尿を疑い、さらに血尿が見られるのであれば、腎炎の可能性がある。臭いも重要で、アンモニア臭ではなく甘く感じるようであれば糖尿病を疑う。

 また、腹圧性尿失禁は、くしゃみをしたり、重いものを持つと尿漏れしてしまう状態で、女性に多く見られる。原因として、女性は尿道が男性と比べて短いだけでなく、加齢や出産などで尿道括約筋や骨盤底筋群が弱くなることがある。そのほか、便秘や冷えなどにも起因する。

 腹圧性尿失禁が軽度な場合は、膣や肛門を意識して締めたり緩めたりするなどの骨盤底筋の運動を、数カ月行うことで改善が見られることがある。重度な場合は、薬物療法や外科治療が必要となるので、受診を勧めたい。

 溢流性尿失禁は、前立腺肥大や前立腺癌、尿道狭窄などにより排尿障害が起こり、尿が膀胱から漏れ出す状態である。失禁に至らない軽度の段階では、最後まで排尿できない残尿感から排尿回数が増えて頻尿の状態となる。特徴としては、排尿にかかる時間が長かったり、1回の尿量が少なかったり、排尿後にも漏れ出しているような状態からも分かる。

 そのほか、薬剤性の頻尿や排尿困難の可能性も加味する。頻尿では、抗癌剤や降圧薬、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)薬、抗アレルギー薬などが原因となり得る。排尿困難は抗コリン作用を有する薬剤、さらに尿失禁は、てんかんや狭心症、性ホルモン系の薬剤でも起こることがある。

副作用

 抗コリン成分のフラボキサート塩酸塩は、服用後に散瞳を生じることがあるので、乗り物や機械類の操作はしないように指導する。

 また、アルコールは薬剤の吸収や代謝に影響して、肝障害の副作用を増強させることがあるので、注意したい。

 八味地黄丸はジオウを含むため、胃腸障害を起こしやすい人への使用は避ける。特に、制酸作用のある胃薬と服用するとアルカロイドの吸収率が高まって、ブシの中毒症状(動悸、のぼせ、舌のしびれ)などが出現する恐れがあるので、服用中の薬剤は販売時に必ず確認する。

 漢方製剤の多くに含まれているカンゾウおよび胃腸薬などに含まれるグリチルリチン酸は、清心蓮子飲と併用すると偽アルドステロン症や低カリウム血症を起こす可能性があるので、併用薬には注意する。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ