肺炎は、日本人の死因の第3位で、年間12万人以上の方が亡くなっています。肺炎による死亡者の96%以上を、65歳以上の高齢者が占めています。 背景には、加齢に伴って免疫機能が低下し、気道(気管支)の構造も変化するため、細菌性の肺炎にかかりやすくなることが挙げられます。 高齢者の肺炎は、高熱や咳、膿性の痰、呼吸困難といった典型的な症状が乏しいことが多いため、早期発見しにくく重症化しやすいのが特徴です。年齢のほか、心不全や糖尿病、誤嚥や喫煙など、表1に挙げたようなリスク因子を持つ人には、予防接種が推奨されています。 現在、わが国で成人に接種できる23価肺炎球菌多糖体ワクチン(商品名ニューモバックスNP)は、肺炎球菌感染症の約80%を予防できるとされています。肺炎球菌ワクチンを接種してから抗体ができるまでは、平均で3週間ほどかかり、1回の接種で5年以上免疫が持続します。 今回のケースのように「肺炎球菌による感染症の予防」のために、高齢者や慢性呼吸器疾患の患者に対して肺炎球菌ワクチンを接種する場合は、保険が適用されず、全額自費になります。 ただ、高齢者の肺炎の予防は、個人の健康を守るだけでなく、高騰する医療費の削減策としても大切であり、有用であることも分かってきています。そのため最近では、肺炎球菌ワクチンの接種を促進するために、接種にかかる費用の一部を助成する自治体が増えてきました。自治体ごとに対象年齢や公費負担額が異なりますので、患者さんに尋ねられたときのために、薬剤師の方々も近隣地域の助成について、把握しておくとよいでしょう。 なお、肺炎の予防や重症化を防ぐためには、日ごろの健康管理として、(1)手洗いやうがい、(2)規則正しい生活、(3)禁煙、(4)誤嚥予防、(5)口の中を清潔に保つ、(6)基礎疾患の治療─なども重要ですので、服薬指導の際には患者さんにぜひ伝えてください。
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