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医師が語る 処方箋の裏側
インフルエンザへの過剰な免疫反応をクラリスで抑制
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

 慢性心不全の治療で当院に通院中の鈴木和夫さん(65歳、仮名)。昨晩から発熱と頭痛、関節痛があるとのことで当科を受診、インフルエンザの簡易検査で陽性と判明した。

 インフルエンザの症状は、(1)ウイルスによるもの、(2)二次感染によるもの、(3)ウイルスに誘発された免疫反応によるもの─などに分けられる。中でも、2009年の新型インフルエンザ(H1N1pdm09)の流行をきっかけに重要性が認識されるようになったのが、(3)に対する治療だ。

 新型インフルエンザの重症例を調べたところ、脳症や肺障害を起こした患者の脳や肺からウイルスが分離されなかったことや、治療でウイルス抗原が陰性化した後に臓器障害が増悪した例があったことから、重症化や組織障害には、ウイルス感染をきっかけに起こる宿主の過剰な免疫反応(炎症)が関与しているのではないかと考えられるようになった。

 鈴木さんは、心不全による肺うっ血症状があるため、二次感染を起こしやすく、肺炎になれば急速に重症化する恐れがあった。そこで、オセルタミビルリン酸塩(商品名タミフル)、アセトアミノフェン(カロナール)に加えて、重症化の予防を期待して、サイトカインの分泌や活性酸素の生成を抑制することにより抗炎症作用を持つマクロライド系抗菌薬のクラリスロマイシン(クラリス)を服用してもらうことにした。

 同薬を予防的に使用する場合は、通常の用量の半分(200mg錠、分1)を処方する。これは適応外使用だ。通常は抗ウイルス薬と同じ期間投与するが、症状の改善具合によっては2週間ほど投与することもある。

 鈴木さんは、翌日には症状が治まり、「以前かかったときよりも体が楽で早くよくなった」と喜んでもらうことができた。(談)

佐藤 圭創氏
Sato Keizo
1987年熊本大学医学部卒業。同大第一内科助手、米国立衛生研究所(NIH)、同大大学院医学薬学研究部薬物治療学准教授、九州保健福祉大学薬学部感染症治療学教授を経て、2010年より同大薬学部生化学第一講座教授(12年より臨床生化学講座に講座名変更)。呼吸器感染症におけるフリーラジカルの研究を行っている。

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