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調剤機械化で薬剤師はどうなる
日経DI2012年11月号

2012/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年11月号 No.181

 静岡県浜松市で開催された第45回日本薬剤師会学術大会から、早いもので1カ月がたつ。「その職能は新たなステージへ」というサブテーマが示す通り、薬剤師の業務は次の世代へ向けて大きく動き始めている。特別講演だけでなく多くの一般口演やポスター発表でも、その兆候を感じ取ることができた。

 機器展示の各社ブースをのぞけば、機械化、自動化も例外ではないことが分かる。薬剤服用歴のシステムは電子化が当たり前になり、最近はやりのタブレット端末を多様なシステムにどのように導入するかについても、熱心な説明が行われていた。さらに薬剤鑑査のための装置も普及の段階に入り、複数のメーカーが一包化時の鑑査支援システムの新製品を発表していた。

 これまで薬剤師が行ってきた業務の相当の部分が、近い将来、機械に取って代わられることになるのだろう。既に調剤室には多くのパソコンや機械があるが、さらに四方八方を囲まれるといった日も、遠くはなさそうだ。

 「調剤業務とは一体何を指し示すのか」「薬剤師以外に調剤行為が認められていない現状で、それを機械が行うことに問題はないのか」といった議論は脇に置いておくとして、筆者はこうした機械化、自動化には大賛成である。

 技術の進歩によって、薬剤師が行ってきたルーチンワークの一定部分を機械に任せられれば、それだけ患者と向き合う時間を増やすことができるためだ。これは、われわれが切実に願っていることである。

 ただし、一つだけ心配なことがある。今の薬剤師から、ピッキングに代表される計数調剤や分包といった機械で代替が可能な、いわゆる「作業」の部分を取り除き、服薬指導などの「対患者業務」に集中させたとき、それに応えられる薬剤師はどれだけいるのだろうか。別の表現をすれば、「あの薬剤師さんからお薬を受け取りたい!」と患者に言われる薬剤師が、どのくらいいるかということだ。「やってみたら、服薬指導も機械で代替可能だった」─なんていうことになったら、笑い話では済まされない。

 もちろん、薬剤師の知識や技術レベルの標準化を推し進め、日本全国どこの薬局に行っても一定水準の服薬指導を受けられるようにすることは、考えていかなければならない。しかし現状は、薬剤師のレベルの標準化ではなく、「投薬ロボット化」が起こっているとは言えないか。

 患者の理解度を全く確認せず、薬剤情報提供書をそのまま棒読みするような説明。患者背景を全く考慮しないトンチンカンな注意。目を合わせるどころか、患者の顔すらまともに見ず、患者からの質問には「それは医師に相談してくださいね」と紋切り型の返事─。これでは、ロボット以下ではないか。

 センサーによって購入者の年齢層と性別を判断し、それに気温や時間帯なども加味して、お薦め商品を表示してくれる自動販売機が既に実用化されている。そうした技術を応用すれば機械であっても、今の多くの薬剤師よりも的確な服薬指導を行えるのではないか、とすら感じてしまう。

 折しも、学術大会の特別記念講演では、作家の瀬名秀明氏が「ロボットと人間の境界」について問うていた。かなり哲学的な問いでもあるが、調剤においても同様だろう。ロボットではなく、薬剤師が行う調剤の意味と意義について考え、広く世の中に示していくことが必要である。

 「かかりつけ薬局」から一歩進めた「かかりつけ薬剤師」というスローガンも登場した昨今、その名に恥じない薬剤師になるにはどうしたらいいのか、この秋の夜長にじっくり考えてみてはいかがだろうか。 (十日十月)

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