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OTCセレクトガイド
しみ 第13回
日経DI2012年10月号

2012/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年10月号 No.180

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 秋が来て、ふと鏡を見て顔面のしみやそばかすが目に留まることはないだろうか。特に今年の夏は晴れの日が多かったため、例年に比べて日焼けしたという人は、しみができやすいと考えられる。

 しみは、一般に、紫外線を浴びて皮膚のメラニン細胞(メラノサイト)が活性化し、メラニンが産生されることで発生する。表皮のメラニンは新陳代謝によって剥がれ落ちるが、真皮にメラニンが沈着すると、しみとなる。

 しみの種類には、炎症性色素沈着、日光性(老人性)色素斑、肝斑(かんぱん)、雀卵斑(そばかす)などがある。

 炎症性色素沈着は、皮膚に強い摩擦が加わったり、かぶれ、にきび、やけどなどの皮膚の炎症によって、年齢に関係なくできるしみで、紫外線で悪化する。

 日光性(老人性)色素斑は、紫外線を長年浴びることによって、皮膚の老化が進んで生じるしみである。30歳代後半~40歳代前半ぐらいから目立ち始め、左右非対称で輪郭がはっきりしているのが特徴である。

 一方、頬骨の辺りや目尻の下に、左右対称にできる、比較的大きなしみを肝斑という。

 肝斑は、特に30~40歳代の女性に多く、しみに悩む女性の3割強が肝斑の疑いがあるといわれている。月経の前後やピルの服用前後でしみの濃度が変わるなど、女性ホルモンのバランスの乱れ、疲労などの影響を受けるのも特徴といえる。

 そばかすは、先天性の、ほほや鼻の周りなどに出る、数mm以下の比較的浅い小さなしみである。3歳ぐらいから出現し、思春期に特に濃くなり、30歳代ごろから目立たなくなるが、紫外線によって濃くなる。

この成分に注目

肝斑改善成分

 トラネキサム酸は、出血性疾患、炎症性疾患の治療に用いられる医療用医薬品の成分である。新たな臨床試験によって、肝斑を改善する効果が確かめられ、肝斑改善成分として用いられるようになった。ただし、医療用には肝斑の適応はなく、OTC薬のみに適応がある。抗プラスミン作用によって、メラノサイト活性化因子の産生を抑制し、色素沈着を抑えると考えられている。

ビタミン類

 ビタミンB2、B6、C、E、パントテン酸カルシウムなど。

 ビタミンB2は皮膚や粘膜形成に関わるビタミンで、細胞内の酸化還元系、ミトコンドリアの電子伝達系に働く。活性型ビタミンB2は体内への吸収が良いという特徴がある。

 ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)は、生体内で補酵素であるリン酸ピリドキサールとなって作用し、アミノ酸、蛋白質の分解を促す。

 ビタミンCは、皮膚に張りを持たせ、血管壁を丈夫にするコラーゲンの産生を高めるほか、抗ストレス作用のある副腎皮質ホルモンの合成を促す。また、周囲の細胞にメラニン色素を作らせる働きがあるチロシンキナーゼの活性を阻害する作用や、メラニンの直接還元作用が、しみの発生を防ぐ。鉄の吸収を助け、貧血も防止する。

 ビタミンEは、末梢血管を拡張し、血液循環を良くする。脳下垂体と副腎の働きを正常に保つことで、ホルモンの合成を促進する。

 パントテン酸カルシウムは、ビタミンB5とも呼ばれる水溶性ビタミンであり、粘膜・皮膚の健康維持・回復を促す。

アミノ酸

 アミノ酸のL-システインは、ビタミンCと同時に摂取することで、メラニンの生成を抑制する。このほか、新陳代謝も促進する。周囲の細胞にメラニン色素を作らせる働きがあるチロシンキナーゼの活性を阻害する作用や、チロシンキナーゼ自体の生成を阻害する作用も持つ。

漢方薬

 桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、四物湯など。

 桂枝茯苓丸には、ケイヒ、ブクリョウ、ボタンピ、トウニン、シャクヤクが配合されている。比較的体力があり、肩こり、のぼせて足が冷えるといった症状を伴う患者に薦める。月経痛や月経不順、打ち身も伴う場合によい。

 当帰芍薬散は、トウキ、センキュウ、シャクヤク、ソウジュツまたはビャクジュツ、タクシャ、ブクリョウを含む。体力虚弱で、冷え症や貧血の傾向があり、疲労しやすい患者に向いている。下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを伴う患者にも薦めるとよい。

 四物湯は、トウキ、センキュウ、シャクヤク、ジオウの4つの生薬が配合されている。体力虚弱で、皮膚が乾燥していたり、肌の色つやが悪い患者に向いている。

製品セレクト

 しみに悩む患者のうち、その特徴から肝斑を疑う患者には、トランシーノ(第一三共ヘルスケア)を薦める。

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 トラネキサム酸の他に、ビタミンC、L-システイン、ビタミンB6などを配合した錠剤である。

 2007年に発売され、既に第1類医薬品の審査期間は過ぎたが、血栓症の副作用が報告されたため、引き続き、第1類に分類されている。

 トラネキサム酸はもともと、出血性疾患や炎症性疾患の治療薬として使われているので、例えば喉の炎症に対するOTC薬である「ペラックT錠」など、他のトラネキサム酸含有製剤との重複投与に注意する。

 また、薬剤の効果を感じるまでには、1カ月以上の服用が必要であるとされる一方で、2カ月を超えると血栓症のリスクが高まることから、服用期間に注意する必要がある。患者には、2カ月服用したら、2カ月の休薬期間を設け、服用を再開するよう指導する。

 15歳以上で1回2錠、1日3回服用する。1日分の服用量である6錠がPTPシート1枚に収められているので、飲み忘れしにくく、携帯しやすい。180錠入り(1カ月用)と360錠入り(2カ月用)がある。

 糖衣錠ではなくフィルムコーティングのため、カロリーが抑えられているのも特徴である。

 一般的なしみで、肩こりやめまい、頭の重さ、のぼせるのに足が冷える、などの症状を訴える患者には、漢方製剤の「クラシエ」漢方桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁エキス錠(クラシエ薬品)を薦める。

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 血流を改善して体の熱やホルモンのバランスを整える作用を持ち、月経不順や更年期に用いられる桂枝茯苓丸と、皮膚のあれなどによく使われるヨク苡仁(ハトムギ)が含まれている。

 しみ以外にも、にきびや手あれ、月経不順にも効能がある。

 用法・用量は、1日2回食前または食間に服用することとされている。5歳以上から服用できる。

 フィルムコーティングされている錠剤なので、臭いはほとんどなく、粉薬を苦手とする女性でも飲みやすいという特徴がある。

 食後に服用する薬剤を好む患者には、シナールLホワイト錠(塩野義製薬)が向いている。

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 メラニンの生成を抑えるビタミンCを1000mg(成人の1日量)、皮膚の細胞の新陳代謝に関わるL-システイン、パントテン酸カルシウムを配合している。医療用のシナール配合錠にはL-システインは含まれていないが、同薬剤とほぼ同じ成分である。

 効能効果として、しみ、そばかす、日焼け、かぶれによる色素沈着のほか、歯茎からの出血や鼻出血もある。

 糖分を含まず、1錠当たり約1kcalなのも特徴である。

こんな製品も

 しみに対するOTC薬は、ビタミン類とアミノ酸が配合されている製品が多数あるので、成分や配合量を把握して、患者に薦めるとよい。

 ビタミンC、B2、B6、B3、EとL-システインをバランスよく配合しているのが、(a)チョコラBBルーセントC(エーザイ)である。ビタミンCとL-システインが表皮の下からメラニンを無色化し、ビタミンB2とB6が皮膚の代謝を正常化するという。

 (b)ビタミンC「タケダ」(武田薬品工業)は、成人(15歳以上)の1日量(6錠)中のビタミンC含有量が2000mgで、他のOTC薬よりも多い。ビタミンB2酪酸エステルを6mg配合しているが、L-システインは配合していない。

 (c)システィナC(第一三共ヘルスケア)と(d)ハイチオールCプルミエール(エスエス製薬)はともに、L-システインを240mg、パントテン酸カルシウムを24mg、ビタミンC300mgを配合している。加えてシスティナには、ビタミンB6が配合されている。ハイチオールCプルミエールは、持ち運びのしやすい小型のプラスチックケース入りである。いずれも7歳から服用できる。

 漢方薬の独特の香りを好む患者には、桂枝茯苓丸を配合した裸錠タイプの(e)ペア漢方エキス錠(ライオン)を薦める。ホルモンバランスの乱れを整え、月経前後にできるにきびやしみを抑える。また、血のめぐりを改善するので、肩こり、月経痛や月経不順にもよい。

 比較的体力がなく、冷え症や貧血、疲れやすいタイプであれば、(f)クラシエ当帰芍薬散錠(クラシエ薬品)を薦める。月経不順や更年期障害などによく用いられるが、ホルモンバランスの変化から来るしみにも効果が期待できる。

 一方、冷え症で貧血気味、顔色が悪く、皮膚や唇がかさつくといった虚血タイプの患者には、(g)四物湯エキス顆粒クラシエ(クラシエ薬品)を薦めるとよいだろう。しみのほか、進行性指掌角化症(主婦湿疹)にも用いられる。

 ここまで紹介してきたのは経口薬だが、外用薬として医薬部外品も合わせて紹介するとよいだろう。

 (h)HAKU メラノフォーカスW(資生堂)は、メラニンの生成を抑えるトラネキサム酸と4-メトキシサリチル酸カリウム塩を配合した美容液である。朝と夜の1日2回、化粧水の後に2回押し分を、しみの気になる部分を中心に顔面になじませる。効果を実感する約2カ月半を目安に続けるよう伝える。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 しみの改善には個人差があり、OTC薬の服用を続けても完全に消えるわけではないことを患者に伝える。

 製品によって、効果が現れるまでの期間が異なるので、添付文書を参照しながら、服用期間の目安を伝え、それ以上服用しても改善しない場合には、皮膚科を受診するように伝える。

 最近では、しみに対する治療として、レーザー治療を導入する皮膚科が増えている。こうした治療は自費診療で行われていることが多いが、患者のニーズに合わせて勧めてもよいだろう。

 特にそばかすは、レーザーやケミカルピーリングによる改善効果が高いとされている。

 トランシーノの購入を希望する患者で、肝斑かどうかの判別が難しい場合や、しみの部分が黒ずんで色調が不均一だったり、表面が隆起している場合には、皮膚科を受診して、医師に相談するように勧める。

副作用

 トランシーノに配合されているトラネキサム酸には、血栓を溶けにくくする作用があるため、血栓症の初期症状(激しい頭痛、舌のもつれ、10分以上続く締め付けられるような胸の痛み、片足のふくらはぎの痛みやむくみなど)に注意するよう伝え、異常がみられたら、すぐに受診するよう指導する。

 このほか、発赤や発疹、動悸、頭痛、めまいを起こすことが報告されているので、注意するよう促す。

 販売時には、血栓症の既往はないか、経口避妊薬や女性ホルモン剤などの血栓を誘発する薬剤を使用していないか、確認する必要がある。

 チョコラBBルーセントCには、ビタミンEが配合されているため、月経が予定より早く来たり、経血量がやや多くなることがある。女性の患者には販売時にその旨を伝え、出血が長く続くようであれば婦人科を受診するよう指導するとよい。

 ビタミンCを配合している製品では、尿、便検査に影響を来す恐れがあるので、こうした検査を受ける際には、あらかじめ服用していることを医師に伝えるようアドバイスする。

 また、ビタミンCの過剰摂取は悪心、嘔吐、下痢と行った胃腸障害を呈すことがあるので、注意を促す。

 ビタミンB2を含む製品を服用すると、尿が黄色くなるが、これはビタミンB2の一部が尿中に排泄されているためであるので、その旨を患者に伝えておく。

その他

 外回りの営業職など、季節を問わず紫外線を浴びる機会が多いという人は、そもそもしみができやすいので、OTC薬をきちんと服用しても、効果が出にくいと考えられる。

 そのため、しみを効果的に改善するためには、夏以外の季節にも日焼け止めをしっかり塗ったり、帽子や目の周りのしみを予防する大きなサングラス、日傘を使ったりして、皮膚に当たる紫外線量を減らす工夫が重要であることを販売時には伝えておきたい。

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