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医師が語る 処方箋の裏側
抗凝固薬の切り替え時に「併用」が必要なケースとは
日経DI2012年10月号

2012/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年10月号 No.180

   右は抗凝固薬の切り替え時の処方箋だが、(1)ワルファリンカリウム(商品名ワーファリン他)からリバーロキサバン(イグザレルト)への切り替え、(2)リバーロキサバンからワルファリンへの切り替え─どちらの処方箋か分かるだろうか。

 正解は(2)だ。(1)では、ワルファリンは服薬中止後も抗凝固効果がしばらく続くので、ワルファリンを中止後、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が2.0未満になった時点でリバーロキサバンを開始する。つまり(1)では「併用」をしない。

 一方、(2)では必ず2剤を併用する。ワルファリンの開始から効果の安定までには時間が掛かるからだ。もともと服用していた抗凝固薬は、INRが目標値に達するまで中止してはならない。

 この併用の重要性は、リバーロキサバンとワルファリンの大規模臨床比較試験であるROCKET AFでも示された(N Engl J Med. 2011;365:883-91. Supplementary Appendix)。試験終了時にリバーロキサバン群は試験薬の服用を中止してワルファリンを開始し、ワルファリン群はそのままワルファリンを続けたのだが、試験終了後30日間で脳梗塞などのイベントを起こした人はリバーロキサバン群が22例、ワルファリン群が6例と、リバーロキサバン群で圧倒的に多かった。リバーロキサバン群では、試験終了後にINRが目標値に達するまで約2週間も掛かっていた。切り替え時の2剤併用の重要性を、改めて認識させるデータだ。

 右の処方箋の持ち主である中澤誠一さん(65歳、仮名)には、今後、ワルファリンを漸次増量し、INRが2.0になればリバーロキサバンを中止する予定だ。なお、リバーロキサバンの処方日数が3日分なのは、同薬がINRに影響を及ぼすため。4日後の診察日は、ワルファリンと降圧薬を服用して来院するよう説明した。(談)

是恒 之宏氏
Koretsune Yukihiro
1979年大阪大学医学部卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学留学、大阪大学医学部第一内科などを経て、2002年に大阪大学医学部臨床教授、08年から国立病院機構大阪医療センターで臨床研究センター長を務める。循環器内科学、心房細動、心不全が専門。日本冠疾患学会理事、日本心臓病学会評議員など、多数の関係学会でも活動する。

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