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特集:薬剤師を変えるバイタルサイン
鍵を握るのは「手技の習得」と「周囲の理解」
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

 薬剤師がフィジカルアセスメントに取り組む際には、正しい理論・手技の習得はもちろん、医師や他職種への周知、患者の理解が欠かせない。薬剤師が押さえておくべき4つのポイントをまとめた。

 バイタルサイン採取やフィジカルアセスメントにこれから取り組もうと考えたら、まずは学会や研究会、都道府県薬剤師会などが主催する研修会に参加してみよう。

 しかし、「講習会だけで身に付くものではなく、とにかく予習・復習が大事だ」と、長崎薬剤師フィジカルアセスメント研究会を設立し、講習会を実施している長崎大学病院薬剤部准教授・副薬剤部長の北原隆志氏は強調する。 

 6月17日にフィジカルアセスメント研修を主催した、千葉県薬剤師会の薬事情報センター長の飯嶋久志氏も、「参加者から、『実際にやってみて、難しいことが分かった』という意見が寄せられた」と話す。千葉県薬の研修は全6回で構成されているが、研修だけで習得するのは難しいことから、自己研修を呼び掛け、フィジカルアセスメントを学ぶためのシミュレーターや血圧計、パルスオキシメーターなどを研修以外の日でも利用できるようにした。

 理論や手技とともに、薬物動態学や製剤学などの知識があって,初めて薬剤師としてのフィジカルアセスメントができる。一朝一夕で習得できるものではないといえそうだ。

日薬もバイタル関連の事業を検討

 研修会が各地で開催されるようになったとはいえ、受講できる人には限りがあるのが現状だ。

 「より多くの薬剤師が日常業務の中でバイタルサインを採るような環境を実現するためには、研修内容を一般化し、実践する際のルールを明確化していく必要があるだろう」と、日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏は指摘する。

「薬剤師のスキルとして、バイタルサイン採取を一般化させていきたい」と語る日本薬剤師会の安部好弘氏。

 日薬は、従来の委員会を改編し、今年9月に「地域・在宅医療委員会」を新設する。この委員会でバイタルサインに関する事業を検討し、都道府県薬剤師会および支部を通じて、地域の実情に合わせて推進していく方針だ。

医師や患者の理解を得るために

 もう一つ、重要なポイントは、きちんと段階を踏んで、医師や看護師などの他職種、さらには患者や家族の理解を得ることだ。

 長崎大学病院では、「診療科長の会議や師長会に足を運び、薬剤師がバイタルサインを採ることの意義や、他のスタッフへのメリットなどを説明し、理解が得られるよう努めた」(北原氏)。11年4月には、病院広報誌で薬剤師のフィジカルアセスメントへの取り組みを特集、院内のスタッフのほか、入院患者や外来受診患者にも周知を図った。このほか、地域の開業医の理解を得るため、長崎県医師会報を通じて情報を発信したという。「最初に病院長の理解が得られたからこそ、これらができた」と北原氏は話す。

 安部氏も、広く社会の理解を得て実施することが必須と語り、「例えば、地域の医師や看護師に、バイタルサイン研修の講師を務めてもらえば、地域の理解を得やすい上、現場に出るきっかけづくりにもなるのではないか」と提案する。

 「薬剤師がバイタルサインを採ることについて、現段階では、国民から100%理解されているとは言い難い。薬剤師自身も理解していないのではないか。まずは、目的を理解するところから研修を始める必要がある」と安部氏は力を込める。

地域に開かれた研究会を設置
副作用発見を目的にカリキュラム考案

「講習会で学んだ薬剤師が、現場で活躍できる環境をつくりたい」と語る長崎大学病院の北原隆志氏。

 長崎大学病院では、薬剤師のキャリアアップと専門性を生かしたチーム医療を目指し、2009年秋に長崎薬剤師フィジカルアセスメント研究会を発足させ、10年2月から独自のカリキュラムで講習会を実施している。

 カリキュラムは、副作用を早期発見することを目標に、同病院薬剤部副薬剤部長の北原隆志氏と、内科医で同病院医療教育開発センター長の濱田久之氏が中心になって考案した。1クール(1年間)当たり10回の講義(表4)を含めた全12回、各120分で構成されている。

 同研究会は、長崎県病院薬剤師会の支援、10社程度の企業の後援を得ており、大学病院の薬剤師だけでなく、長崎県内の病院薬剤師、保険薬局の薬剤師も講習に参加することができる。受講者は年間6000円+テキスト代を負担する。

表4 長崎薬剤師フィジカルアセスメント研究会の講習会の内容

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写真:増田泰久

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