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OTCセレクトガイド
第12回 不眠
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

講師 三上 彰貴子
Mikami Akiko
株式会社A.M.C 代表取締役社長
製薬会社勤務後、経営学修士(MBA)を取得。コンサルティング会社勤務を経て2005年より現職。医療分野のコンサルティングなどを行う傍ら、OTC薬に関する寄稿や講師としての活動も行う。薬剤師。

 夏から秋にかけては、「よく眠れない」と訴える人が少なくない。

 話を聞いてみると、熱帯夜が続いて寝苦しかったり、エアコンで身体が冷えて寝付けないという訴えのほか、寝ても疲れが取れないという人も多い。寒暖の差で自律神経のバランスが崩れてしまったためと思われる。

 こうした睡眠障害のタイプは、(1)なかなか寝付けず、入眠までに1時間程度かかる入眠障害、(2)夜中に目が覚めて眠れなかったり、何度も起きてしまったりする途中覚醒、(3)明け方に目が覚めるとそれから眠れなくなる早朝覚醒、(4)熟睡できない熟眠障害─の4つに大別される。

 睡眠障害の原因には、昼夜が逆転するなど生活リズムの乱れのほか、寝室が暑い、明るい、うるさいといった睡眠環境に起因するものや、カフェインやアルコールの摂取、喫煙、ストレスや不安など、様々なものがある。

 また、疾患に起因する睡眠障害もある。アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患による痒みや咳、前立腺肥大による夜間の尿意、骨折や癌などによる痛み、糖尿病やうつ病などがある。このほか、服用中の薬剤の副作用による不眠も知られている。

この成分に注目

 OTCの睡眠改善薬として、ベンゾジアゼピン系など医療用医薬品で用いられている成分は承認されておらず、抗ヒスタミン 成分と催眠・鎮静成分、生薬、漢方薬が中心である。

抗ヒスタミン成分

 OTC薬として販売されている睡眠改善薬の多くに配合されているのが、ジフェンヒドラミン塩酸塩である。視床下部後葉の興奮性ニューロンから放出されたヒスタミンは、大脳皮質や神経細胞を興奮させて覚醒の維持・調節を行うが、ジフェンヒドラミンはそれを抑制して、催眠鎮静作用をもたらす。

 多くは就寝前の1回服用でジフェンヒドラミン塩酸塩を50mg含む。

 最高血中濃度到達時間(tmax)は、1.5~2.5時間、血中濃度半減期(t1/2)は9.2±2.5時間で、約9時間の効果持続が認められる。

 ジフェンヒドラミンには抗コリン作用があるため、同成分を含む製剤は前立腺肥大、一部の緑内障の患者には禁忌である。

 新生児における口唇裂、口蓋裂の頻度が増加するとの疫学調査報告があり、妊娠中は服用を避ける。また、乳汁中に移行するので、授乳中に服用しない、または服用中は授乳を避けるよう指導する。

催眠・鎮静成分

 ブロムワレリル尿素は、体内で遊離した臭素(Br-)が大脳皮質を抑制するとともに、脳幹網様体上行性賦活系も抑制して、穏やかな催眠作用をもたらす。20~30分と比較的短い時間で作用し、効果は3~4時間程度持続する。

 アリルイソプロピルアセチル尿素は、緊張や興奮、イライラ感を抑える鎮静成分。痛みの感覚を抑えたり、痛みに伴う不安や不快感などを和らげる。睡眠改善薬だけではなく、解熱鎮痛薬にも配合されている。

生薬

 代表的なものとして、サンソウニン、カノコソウ、パッシフローラ、ホップ、ニンジン、チモ、ブクリョウがある。

 サンソウニンは鎮静作用を持ち、心身が疲れて寝付けない、不安で眠れないといった入眠障害に適している。チモと併用すると、脳の興奮を抑える作用がある。

 カノコソウは睡眠促進、鎮静のほか、抗炎症作用や自律神経の働きを整えたり、身体をリラックスさせる効果がある。欧州ではバレリアンと呼ばれている。

 パッシフローラはチャボトケイソウという植物の茎や葉から抽出された成分で、鎮静するまでの時間を短縮する効果を持つ。

 ホップには、鎮静作用のほか、利尿作用、健胃作用がある。

 ニンジンは、ストレスに対する副腎皮質の強化作用、中枢神経興奮作用による強心・強壮作用に加えて、興奮を鎮めたり、精神を安定させる作用がある。

 ブクリョウは、緊張を緩和し、心悸亢進などに効果がある。

漢方薬

 漢方薬は生体のリズムを回復させて、体質を改善することに主眼を置いている。特に入眠障害、早朝覚醒、熟眠障害に適した製剤が複数あるので、症状をよく聞き、患者に合わせて選ぶことが重要である。

 寝付きが悪い入眠障害の患者に向いているのは、酸棗仁湯、黄連解毒湯、三黄瀉心湯、抑肝散加芍薬黄連である。特に、黄連解毒湯は、比較的体力があり、のぼせぎみで顔色が赤く、イライラして眠れない不眠症、心身症などに向いている。

 早朝覚醒や途中覚醒のある患者には、加味逍遙散、釣藤散を薦めたい。加味逍遙散は、体力がない、または中程度で、月経不順や女性の冷えや動悸の症状によく使われる漢方として知られるが、不眠症にも用いられる。

 熟睡障害の患者で、心身が疲れ、血色の悪い場合には、加味帰脾湯を薦めるとよい。

 一方、体力があり、更年期に伴う神経症やイライラなどがみられる患者であれば、柴胡加竜骨牡蛎湯を選ぶようにする。

 そのほか、苓桂甘棗湯は、動悸があり、神経が高ぶるという患者に用いられる。

製品セレクト

 抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミン塩酸塩の単味製剤の中で、特に薦めたいのは、ドリエルEX(エスエス製薬)である。

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 ソフトカプセル剤なので、素早く溶けて効果を発揮する。カプセルには、リラックスの作用があるといわれるラベンダーの香料が含まれているため、PTPシートから取り出すと、ラベンダーの香りがふわっと広がる。

 用法・用量は、15歳以上の成人では1回1カプセルを就寝前に服用する。小児の服用は不可となっている。

 また、服用は寝付きが悪いときや眠りが浅いときのみにとどめ、連用しないようにする。翌日まで眠気が続いたり、だるさを感じる場合があることを販売時に伝えるようにする。

 マイレストS(佐藤製薬)も、ドリエルEXと同様の成分および配合量のソフトカプセル剤であるが、製剤の色は透明な青色である。メーカーによると、視覚からの鎮静催眠効果を期待しているという。

 生薬を好む患者には、ホスロールS(救心製薬)がよい。鎮静、精神安定、催眠作用のあるサンソウニンを配合しており、チモはサンソウニンとの併用で鎮痛、鎮静作用を示す。また、緊張を緩和するブクリョウ、鎮痛、鎮痙と胃腸運動促進作用のあるセンキュウを含んだ酸棗仁湯の満量処方となっているのが特徴である。

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 注意したいのが用法・用量で、就寝前の服用ではなく、1回1包を1日3回、食前または食間に服用することとされている。15歳以上から服用できる。

 小児でも服用可能な生薬製剤には、レスフィーナ細粒「分包」(塩野義製薬)がある。

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 同薬は、9種類の生薬が配合された抑肝散加芍薬黄連の水製乾燥エキスである。効能・効果は、神経が高ぶり、気分がふさいで、不眠傾向にある患者となっており、1歳以上から服用可能なので、小児の夜泣きなどにも向いている。また、小児に服用させる際は、服薬ゼリーも併せて薦めるとよい。

こんな製品も

 ジフェンヒドラミン塩酸塩を配合した製品のうち、錠剤を好む患者には、(a)グ・スリーP(第一三共ヘルスケア)がお薦めである。1錠当たり50mgのジフェンヒドラミン塩酸塩を配合した小粒の錠剤で、就寝前に1錠を服用する。

 同じくジフェンヒドラミン塩酸塩50mgの単味製剤には、服用しやすい液剤の(b)アンミナイト(ゼリア新薬工業)もある。アセロラ風味で、甘味剤にdーソルビトールを使っており、虫歯になりにくく、カロリーは2kcalと、就寝前にも服用しやすい。

 (c)ウット(伊丹製薬)は、ジフェンヒドラミン塩酸塩を3錠中に25mg配合し、ブロムワレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素も配合している。

 効能・効果としては、頭痛、精神興奮、神経衰弱、そのほか鎮静を必要とする諸症であり、不眠とは書かれていないが、イライラしたり、興奮して眠れないという患者に向いている。

 1回1錠で食後に1日3回まで服用でき、1箱12錠入り(4日分)である。ブロムワレリル尿素は、依存性や耐性、呼吸抑制の恐れがあるので、2週間を超えた継続服用や過量服用はしないように販売時に伝える。

 生薬や漢方薬には、錠剤もある。散剤が苦手な患者にはこちらを薦めるとよいだろう。

 (d)アロパノール(全薬工業)は、7種類の生薬を配合している錠剤である。チョウトウコウは、鎮静、鎮痙、鎮痛作用があり、消化管運動促進作用、血管拡張作用もある。サイコも鎮静、鎮痙、鎮痛以外に肝機能の調節作用を持つ。カンゾウも鎮静、鎮痙作用を持ち、生薬全体の調和を保ってくれる。トウキ、センキュウ、ブクリョウ、ビャクジュツもそれぞれ鎮静作用があり、併せて強壮作用や、胃腸運動亢進、心悸亢進、胃腸虚弱改善作用がある。5歳以上から服用可能である。

 熟睡できないと訴える患者には、(e)ロート加味帰脾湯錠(ロート製薬)や同じブランドの柴胡加竜骨牡蛎湯錠を薦めるとよいだろう。

 睡眠障害の患者には、医薬品ではないが、リラックス効果のある入浴剤も併せて薦めたい。特に夏はシャワー浴で済ませるという患者が多いが、眠気を誘発させるには深部体温を急激に低下させるとよいので、38℃程度のぬるめのお湯に15分ほど浸かり、深部の体温を上げておくことが、快適な睡眠につながる。

 (f)クナイプ グーテナハト バスソルト ホップ&バレリアンの香り(クナイプジャパン)は、不眠症に効果があるといわれるホップとバレリアンの精油(エッセンシャルオイル)を含んだバスソルトである。

 ホップは、手摘みでホップを収穫していた時代に、眠気を訴える人がいたことから、アロマオイルとして使われるようになったという。また、バレリアンは、カノコソウとも呼ばれ、古代から鎮静作用が知られている。

 お湯に溶かすと青色になるので、視覚的な鎮静効果のほか、ミネラルには保温効果がある。

 また、(g)きき湯 食塩炭酸湯(バスクリン)は医薬部外品で、ミネラルと炭酸ガスの効果で血行を促し、冷えや凝りの症状を和らげる効果がある。足を中心にマッサージしてリラックス効果を高めることも習慣にするように勧めたい。

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患者へのアドバイス

受診勧奨

 抗ヒスタミン薬の副作用である眠気が主作用となっているため、寝付きが悪い、寝付けないといった眠気を促すことを目的とした入眠障害が対象となる。したがって、睡眠障害のタイプとその原因を確認し、OTC薬で対応できる不眠かどうかを見極め、必要に応じて受診するよう伝える。

 なお、OTCの睡眠改善薬は、一過性の症状を想定しているので、長期間連用しないように伝える。1週間程度服用しても改善しないようであれば、うつ病やむずむず脚症候群、肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群をはじめとする基礎疾患の可能性を考慮し、専門医への受診を勧める。

 特に高血圧の患者では、不眠により交感神経優位の状況が続き、高血圧が悪化することがあるので、基礎疾患の問診は重要である。

 また、不眠と同時にだるさや疲れを訴える場合は、甲状腺機能の異常が原因となっていることもある。

副作用

 OTCの生薬製剤を1カ月以上連用している患者には、全身倦怠感や発疹、むくみ、胃腸症状などの有無を聞き、肝臓や腎臓、胃への影響がないかどうか確認する。

 抗ヒスタミン成分は、総合感冒薬や酔い止めにも含まれていることがある。ジフェンヒドラミン塩酸塩を服用している患者では過量投与になり、逆に神経が高ぶって眠れなくなることがあるので、販売時には注意を促したい。

 ブロムワレリル尿素は、連用で薬物依存を来したり、大量・連用中の急な減量・中止で禁断症状を起こすことがある。また、腎排泄が遅いので、中毒症状によるブロム疹にも注意する。

 サンソウニンは、腹痛や下痢、食欲不振、胃部の不快感を来すことがあるので、症状があれば受診を促す。

その他

 睡眠障害を改善するには、薬物療法だけに頼るのではなく、寝具や寝室の照明、温度や湿度など睡眠環境を整えることが重要である。

 また睡眠前には、カフェイン摂取や過度な飲酒、喫煙を控える、パソコンやテレビは極力見ないといった、生活習慣の改善も指導したい。

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