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DIクイズ4(A)
DIクイズ4(A) 抗HBV薬を処方された関節リウマチ患者
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

出題と解答 : 安 武夫
(湘南鎌倉総合病院[神奈川県鎌倉市])

A1

B型肝炎の発症予防には、ラミブジン(商品名ゼフィックス)ではなく、耐性ウイルスがより出現しにくいエンテカビル水和物(バラクルード)の使用がガイドラインで推奨されている。あえてラミブジンを処方した理由を医師に確認する必要がある。

 Aさんのように、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)に感染しているが肝炎を発症していないケースを無症候性キャリアという。この無症候性キャリアが免疫抑制剤や抗癌剤、ステロイドなど、免疫抑制作用を持つ薬剤を使用すると、HBVが急激に増殖(再活性化)して致死的な重症肝炎を発症することがある。このためHBVキャリアの関節リウマチ患者に対しては、免疫抑制作用が強いメトトレキサート(商品名リウマトレックス他)の投与を極力避けるよう、日本リウマチ学会のガイドラインに記載されている(参考文献1)。

 このような背景から、これまでAさんには、関節リウマチに高い有効性を持つメトトレキサートを使わずに、ブシラミン(リマチル他)やサラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN他)といった疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)でのコントロールが試みられた。しかし、これらは副作用で中止となり、今回からメトトレキサートが開始されたと推測される。

 HBVキャリアに免疫抑制作用の強い薬剤を使用する場合は、HBVの再活性化を避けるため、核酸アナログ製剤を予防投与するよう推奨されている(参考文献2)。核酸アナログ製剤には、ラミブジン(ゼフィックス他)、アデホビルピボキシル(ヘプセラ)とエンテカビル水和物(バラクルード)の3剤がある。これら3剤の中で、最も早い2000年から使われてきたラミブジンは、服用を続けると耐性ウイルスが出現しやすい。6カ月以上の長期投与で耐性ウイルスが出現し、耐性ウイルスの出現率は1年で20%、3年で50%以上にも上る(参考文献3)。一方、エンテカビルは耐性ウイルスが出現しにくいのが特徴である。核酸アナログ製剤の未使用患者に対する3年間の投与で耐性ウイルスの出現率は2~3%とされる。ちなみにアデホビルは、高用量での腎障害の副作用のため、常用量が低く設定され抗ウイルス力が弱い。耐性ウイルスが発現した場合に、ラミブジンなどと併用して使用する薬剤と位置付けられている。

 今後、Aさんは、メトトレキサートや生物学的製剤といった免疫抑制作用の強い薬を長く使用し続ける可能性が高い。そうなると、核酸アナログ製剤も長期間使用せざるを得ず、耐性ウイルスの出現頻度が低いエンテカビルの使用が良いと考えられる。厚生労働省研究班の『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(改訂版)』でも、予防投与に使う核酸アナログ製剤としてエンテカビルを推奨している。

 従って薬剤師としては、Aさんにはなぜエンテカビルではなくラミブジンが処方されたのか、処方医に意図を確認してから調剤に当たるべきである。ただし、医師が免疫抑制作用の強い薬の投与期間を短く想定し、エンテカビルより安価なラミブジンをあえて投与した可能性も考えられる。医師には、こうした点も考慮して確認を行うとよいだろう。

参考文献
1)日本リウマチ学会『関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版』
2)厚生労働省 肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究斑『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン(改訂版)』
3)日本肝臓学会『慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2011』

こんな疑義照会を

イラスト:加賀 たえこ

 Aさんに今回から処方されたゼフィックスについてお教えください。リウマトレックスの使用開始により、B型肝炎ウイルスの再活性化を防ぐ目的で処方されたと思いますが、ガイドラインではゼフィックスではなくバラクルードを推奨しています。

 先生がゼフィックスをあえてお選びになったのは、Aさんの金銭的な負担などをご考慮になってのことでしょうか。しかしゼフィックスは、使用が長期になりますと、耐性ウイルスが高率に発現します。Aさんが今後、メトトレキサートや生物学的製剤などの免疫抑制剤を長く使っていくのであれば、耐性ウイルスの発現しにくいバラクルードを最初から使う方がよいと思いますが、いかがでしょうか。

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