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過誤防止ノート●ヒヤリハット事例に学ぶ
日経DI2012年9月号

2012/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2012年9月号 No.179

 薬は定められた用法・用量通りに服用して、初めてその効果や安全性が保障される。しかし、薬の飲み方に無頓着であったり、飲み方を理解していない患者は少なくない。特に、薬の過剰服用は、重大な事故につながる恐れがあるため、何としてでも防ぎたい。

 薬の過剰服用にまつわる事例は、次の6つに分けることができる。

(1)医師や薬剤師からの服薬方法の指示が不明確だった。

(2)通常、処方箋やその内容が貼付されたお薬手帳、調剤明細書には、1日量が記載されているが、患者は1日量を1回量と思い込んだ(ケース1参照)。

(3)同時に処方された薬の中に、1日の服薬回数が異なる薬が複数あったため、混乱した(ケース2参照)。

(4)薬は1日3回服用するものと思い込んでいた、または1日3回服用することに慣れていた(ケース3参照)。

(5)薬袋や薬剤情報提供書に記載された服用回数を服薬錠数と見間違えた。

(6)飲み忘れた分をまとめて服薬して、帳尻を合わせた。

 トラブルの多くは、患者の思い込みや、薬剤師、医師の服薬指導の不足によるところが大きい。薬局では、患者が薬の飲み方を正しく理解しているかを確認し、前述の6つの陥りやすいパターンに気を付けながら、十分に説明することが重要である。

 今回は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システム「アイフィス」や、全国の薬剤師から寄せられた事例の中から、3倍過量服用になりそうになった例、実際に3倍過量服用してしまった例などを紹介し、その原因を考察する。

 なお、筆者らが収集した服薬指導におけるヒヤリハット・ミス事例などは、無料で閲覧が可能である。入会申し込みは、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターのウェブサイト「アイフィス(薬剤師)」コーナーから)。

お薬手帳の1日量を1回量と誤解

 本ケースは、当該のお薬手帳には用量が1日量で記載されていることを、患者が知らなかったために生じたトラブルである。通常、薬袋や薬剤情報提供書には1回の服用量が記載されているのに対し、処方箋やお薬手帳には1日量が記載されており、患者が混乱しやすいことを認識しておく。必要に応じて、1回服用量(1回に○錠)と、1日服用量(1日に○錠)を追記するなど、患者が見て理解しやすいようにする。

 このようなトラブルを防ぐために、薬剤師はこのように説明すればよかった。「お薬手帳のここに書いてある錠数やカプセル数は1回に服用する量ではなく、1日で服用する合計の量です。薬袋には1回で服用する量が書いてありますので、それに従ってお薬を飲んでくださいね」。

他の薬につられて1日3回服用

 処方箋には、1日3回服用の薬剤と1日1回服用の薬剤が混在していたため、患者は服薬回数の多い薬剤につられて、1日1回服用のオメプラゾールを1日3回服用したと考えられる。

 薬剤師は、より丁寧な服薬指導を実施するとともに、飲み間違えないようにするための工夫を提案すべきである。例えば、内部が小分けされている入れ物を使って、朝昼夕の食前・食後に薬を分けて置いておく方法がある。また、調剤の際に、オメプラゾールを分包して「朝のみ服用」と記載してもよい。

 今回のケースでは、薬剤師は次のように説明すればよかった。「こちらの袋のお薬は1日3回、朝昼夕の食後に服用してください。そして、こちらの袋のお薬は朝昼夕の食前に服用してください。今回処方されたお薬は1日3回服用するものが多いですが、この袋に入っているオメプラールだけは1日1回、朝食後に服用してください。ご希望があれば、オメプラールを分包して袋に『朝のみ服用』と記入させていただきます」。

薬は1日3回飲むものと信じ込んでいた

 医師、薬剤師ともに、OTC薬やサプリメントも含む患者の服薬状況を把握していなかったことが、本トラブルの原因である。慢性疾患の治療において、1日1~2回の服用で済む薬剤は便利だが、患者の生活習慣に合わせて服用回数を増やす方がコンプライアンスが維持できる場合もある。

 初回時の服薬指導の際に、薬剤師はOTC薬やサプリメントの服用状況を確認し、次のように説明すればよかった。「ハイチオールCを1日3回毎食後に飲んでいらっしゃるのですね。今回、新しく出された高血圧のお薬は、1日1回飲むものと、1日2回飲むものですので、ハイチオールCと同じように1日3回飲まないように気を付けてください。間違いそうでご心配でしたら、高血圧のお薬も1日3回食後に飲むタイプのものに変更してもらうよう先生に相談いたしますが、いかがいたしましょうか」。

(東京大学大学院教授 薬学系研究科医薬品情報学講座・澤田康文)

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